ミトコンドリア
読み:ミトコンドリア
外語:mitochondria
細胞の細胞質内にある、小球状あるいは杆状の細胞内小器官(オルガネラ)。一つの細胞内に100〜2,000個程度含まれている。
概要
ミトコンドリアは、ほぼ全ての真核生物の細胞ある細胞小器官である。
二重膜構造を持ち、内膜は複雑な襞状のクリステを形成し、それによって作られた内区画をマトリックスという。
このミトコンドリアで呼吸のうちTCA回路と電子伝達系の反応が行なわれており、細胞内においてエネルギーの合成を行なっている。細胞内小器官としての最大の役割は、この反応によってATP(アデノシン三燐酸)を作ることにある。簡単には、酸素を用いて炭水化物を分解し、そのエネルギーを細胞内で使えるATPに変える働きをしている。
特徴
共生
ミトコンドリアは自分の遺伝子(DNA)を持っており、自らが使う蛋白質のアミノ酸配列を記録した核酸は、ミトコンドリアの中にある。その核酸を読み取り蛋白質を合成する機構も持っている。
また、宿主細胞の増殖とは無関係に自己増殖する能力も持っている。
このため、ミトコンドリアは元々は単体の生物であり、あとから他の生物の中に入り込んで共に生活するようになった、と考えられている(細胞内共生説)。
つまりかつてはプロテオバクテリア(好気性細菌の一種)という原核生物だったが、約20億年前、ある真核生物がこれを細胞質内へと取り込み共生を開始した。その後宿主は、ミトコンドリアの祖先からDNAの大部分を奪い、自身の核DNAへと移し替えたようである。こうして宿主の細胞の中でプロテオバクテリアはミトコンドリアへと変化した。ミトコンドリアは生物としての機能を失っているため、細胞外で生きてゆくことはできなくなった。またミトコンドリアの分裂も宿主細胞によって制御されており、核内の遺伝子で作られる蛋白質を用いてミトコンドリアを強制的に分裂させている。
DNA構造
ヒトのミトコンドリアDNAは16,569塩基対の環状DNA構造であり、37個の遺伝子を持ち、イントロンは存在しない。
これはミトコンドリア自身が独立で持っており、宿主が持つゲノムとは別になっている。
遺伝
ミトコンドリアは、他の細胞内小器官(オルガネラ)と違い、宿主が作るわけではない。宿主のDNA内にミトコンドリアを作るためのDNAは存在しない。
ミトコンドリアは遺伝子として受け継がれるのではなく、卵子内に含まれるものが、そのまま子に受け継がれる。
人間の身体には約60兆個の細胞があり、通常の細胞にミトコンドリアは100〜2000個程度含まれている。卵子には通常の体細胞の100倍以上となる10万〜20万個程度のミトコンドリアが含まれていて、ミトコンドリアの生成するエネルギーにより卵子成熟〜受精〜胚発育〜着床〜胎児成長までをすることが可能となっている。
精子にも僅かにミトコンドリアが含まれているが、卵子内に入った精子のミトコンドリアは排除されるため、子に受け継がれることがない。
つまりミトコンドリアは常に母親からのみ受け継がれ、女に娘が生まれなければ、そのミトコンドリアの系列はその代で打ち止めになる。
イブ
ミトコンドリアの遺伝子は、受精時に両親の遺伝子が混ざるということもなく、遥か昔から殆ど変わらない姿で母から子へと受け継がれて来た。
すなわち、子のミトコンドリアの遺伝子は母親から受け継いだものであり、またその母親も、その母親から受け継いだものなので、この遺伝子を過去に辿っていくと、現代人は約20万年前にアフリカにいた一人の女性に辿りつくと言われている。
これを「ミトコンドリアイブ仮説」という。
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