放射線被曝
読み:ほうしゃせん-ひばく
放射線
に曝露されること。体に放射線を浴びること。
目次
概要
実態
先に結論
自然放射線
日本の日常
日本の非日常
〓
人体への影響
タバコに換算
結局どうしましょう?
症状・治療
発がん
職業病
被曝後
治療
概要
一般的には、
核兵器
(
原子爆弾
、
水素爆弾
など)や、
原子力発電所
や関連施設(
原子炉
、
核燃料
の製造工場など)によって発生する放射線を浴びることにより、
生物
の
遺伝子
(
DNA
)が破壊され、
細胞
がそれ以上の細胞分裂を行なえなくなり致死的な障害となることをいうことが多いようである。
骨髄
が被曝しダメージを受けると、
白血病
などを罹患し、造血や
免疫
に障害が出る。これも致死的であり、
輸血
や
造血幹細胞
移植などの治療が必要となる。
このように大規模な被曝は致命的ではあるが、少々の被曝は
新陳代謝
をもたらすためむしろ健康に良いらしいことが分かっており、日本でもラジウム温泉などの
放射能泉
は大人気である。
実態
先に結論
結論から先に述べると、放射線への被曝で「鼻血」が出たりするのは、
致死量
を被曝した場合のみである。
日本では、年間100万人に「数億ベクレル」を「注射」する「核医学」と呼ばれる医療が行なわれているが、当然ながら鼻血が出たり、被曝で死んだりなどはない。報告のある
副作用
としては「気分が悪くなる」程度であり、これも年間100万人の中で数十件程度とされている。
適度な量の放射線被曝は、病気を治したり、健康を回復したりする働きがある。
つまり、僅かでも放射線を浴びたら最後、まるで明日にでも病気で死ぬかのような恐怖心を煽る人々がいるが、これは無知な者を扇動するような何らかの意図がある。何ごとも
「極端な論調」というのは必ず裏があるので、疑ってかかるべき
である。
自然放射線
大自然には放射線があふれている。
太陽
も、
太陽風
として日々膨大な量の放射線を放っており、放射線は常に
地球
に降り注いでいる。また土や岩といったものにも
放射性同位体
は大量に含まれることから、大自然から放射線は常に放射され、生物は常に放射線被曝している。
土壌や標高などに左右されることになるが、
人間
1人あたり世界平均で年間約2.4
ミリシーベルト
の
自然放射線
を浴びるとされる。
内訳は次のとおりである。
宇宙線など
空間
から飛来するもの: 0.39ミリシーベルト
大地から放出されるもの: 0.48ミリシーベルト
日常摂取する食べ物に含まれるもの: 0.29ミリシーベルト
空気中のラドンなどの吸入によるもの: 1.26ミリシーベルト
例えば
原子力発電所
や、原子力潜水艦が停泊する港などには
放射線測定器
(ガイガーカウンター)が設置されるが、測定器ごとに値がまちまちなのは、自然放射線の違いによる影響が大きい。
日本の日常
場所にもよるが、日本の場合、概ね50
nGy/h
程度が全国平均値とされる。
X線
や
γ線
の被曝のみと大雑把に考えてGy=Svとすれば、日常の被曝量は50ナノシーベルト毎時=0.05マイクロシーベルト毎時=0.00005ミリシーベルト毎時=0.00000005
シーベルト
毎時、と換算できる。
健康に害が出始める100ミリシーベルトを1時間で達成するためには、日常の200万倍の放射線が必要ということになる。実際には200ミリシーベルトを超えないと健康被害の臨床報告が出てこないので、ざっと日常の400万倍はないと、健康への直接的影響は(日常的には)無いと言える。
日本の非日常
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震
で、津波に飲まれた原子力発電所が倒壊した。
この時には、マスコミは通常の6000倍!(320
マイクロシーベルト
)などと叫び反
原電
を煽ったが、実際にはこの程度を短期間に被曝しても健康には影響がない。後述するラジウム温泉のように、たまに浴びる放射線は、むしろ
健康に良い可能性すらある
のである。
例えば、日本‐ニューヨークのフライトでも200マイクロシーベルト(0.2
ミリシーベルト
)程度は被曝する。しかし、たまに飛行機に乗る程度では、健康に悪影響は出ない。
気をつけるべきは、現場作業員として恒常的に浴びた場合で、この時は累積が増えるため、これは健康被害が出る恐れがある。
〓
「ラジウム温泉」など
放射能泉
は、放射能があると分かっていながら放射能大嫌いなはずの日本人が駆けつける、日本でも有数の謎スポットとなっている。
島根県の池田ラジウム鉱泉、山梨県の増富ラジウム温泉郷、鳥取県の三朝温泉、兵庫県の有馬温泉などは、特に高濃度のラジウム温泉が噴出することを売りとしている。放射能泉の殆どは冷鉱泉で、温泉法における
温泉
(泉温25℃以上)に該当する中でラドン含有量が最も高いのは三朝温泉ということになる。では、実際にどの程度の線量があるのか。
ATOMICAの「放射能泉と健康」
によると、かつての調査では、増富鉱泉(山梨県)は鉱泉中のラドン含有量として11,732マッヘ(160,728Bq/リットル)を記録したとする。近年の調査でも、三朝温泉(鳥取県)は泉水中のラドン濃度として683.3マッヘ(9361Bq/リットル)が得られているとする。
科学技術庁告示第五号 平成十二年科学技術庁告示第五号(放射線を放出する同位元素の数量等)
では、
222
Rnの実効線量係数(ミリシーベルト/ベクレル)は、次のとおりである。
吸入摂取した場合(ラドンの平衡等価濃度) 6.5×10
−6
実際の浴槽内の温泉はおそらく水などで希釈されているだろうが、9361Bq/リットルあるとするなら、温泉のお湯1リットルを吸引した時の実効線量は約60.8
マイクロシーベルト
ということになる。入浴時間等にもよるので実際にどの程度のお湯を吸入することになるのかは不明だが、増富鉱泉では30分入浴で約10ccの源泉が皮膚より吸収されると説明されていた。
しかし、こういった温泉に入って被曝して死んだ、などという話は全く無い(心臓麻痺などで死んだ人はいるかもしれないが)。それどころか、鳥取県の三朝温泉地の住民のがん死亡率を見ると、全国平均の半分しかないとの調査結果が存在するようである。このため、
がん
が治ると信じられて、次々と湯治客が押し寄せて入浴や飲泉がされているのである(罹ってから来ても遅いのではないかという気もするが)。
上述のとおり、むやみやたらと恐怖心を煽るのは、何か別の意図があると考えるべきであろう。
人体への影響
僅かな放射線を浴びても人体への影響はなく、若干多いのはむしろ新陳代謝をもたらし健康に良いとする説もある(例えばラジウム温泉)が、大量の放射線は人体に有害である。
一説によれば、一回での線量ごとの影響は次のとおりとされる。
0.1シーベルト(100ミリシーベルト):
がん
になる人が増えはじめる
0.25シーベルト(250ミリシーベルト):
白血球
が一時的に減少する
0.5シーベルト(500ミリシーベルト): 末梢血中の
リンパ球
が減少する
1シーベルト(1000ミリシーベルト): 10%の人が嘔吐を催す
4シーベルト(4000ミリシーベルト):
半数致死量(LD
50
)
6〜7シーベルト(6〜7000ミリシーベルト):
99%致死量(LD
99
)
200ミリシーベルト以上の線量では、線量の増加とがん発生率の増加が比例的な関係となる。線量が1シーベルト(1000ミリシーベルト)に達すると、がんの増加発生率は自然発生率の60パーセント(つまり合計して1.6倍)にもなる。
1シーベルト=1000ミリシーベルトの被曝は、比較的大きな被曝である。
白血病
やがんなどが、1000人あたり数人程度増加すると推計されている。しかし、この程度の量であっても即、致死的というわけでもない。
もちろん健康に良くない量ではあり、車の運転中に携帯電話機を使う危険と同程度のリスクが存在するため、避けるにこしたことはない。
タバコに換算
マイクロシーベルト
の放射線に騒いでる人は、この際タバコを止めてみる、というのも一つの手である。
厚生労働科学研究班の放射線リスクの説明
によれば、毎日1〜9本のタバコによる肺がん発がんリスクは、吸わない人と比して4.6倍とされる。
これを放射線被曝に当てはめると、3.4シーベルト(=3,400,000マイクロシーベルト)の被曝と同程度になるとのことである。なお、一度に3.4シーベルト浴びることは
半数致死量(LD
50
)
に近い。
この結果は、タバコがそれだけ危険なものということもできるが同時に、放射線被曝は過剰に恐れるほど致死的なものではないということでもある。
結局どうしましょう?
この期に及んでしまっては、関東・東北の者は、可能な範囲で普通に暮らすしかない。
大惨事となったチェルノブイリ原電事故を参考にすると、30km圏内でも原子炉周辺を除いては急性中毒で死んだ者はおらず、30km以上離れていた者は殆ど助かっている。さらに現在でも、チェルノブイリから待避せず酪農で生活する者まで存在する。
原電
から一定の距離を保てば、生活には支障がないと見込まれる。
福島第一原電も、今後更なる爆発や火災さえなければ高濃度の
放射性物質
が拡散することはないことから、過去の例を見れば30km以上離れた関東・東北から離れても、あまり意味はない。
放射性物質の飛散は実際避けられず、東京、あるいは大阪へも、飛ぶことはあるだろう。可能性にゼロは存在しない。この結果がんなどの障害は増える可能性はあるが、微弱すぎる放射線から受ける被害は、近距離の受動喫煙でがんに罹るリスクと比べたら数桁低く、そのような心配をするくらいなら交通事故にあう確率を心配した方が良い。
症状・治療
発がん
放射線は、遺伝子を符号化するDNAに変化をもたらし、結果としてがんを発病させる。
DNAは
物質
なので、
原子
で出来ている。放射線がDNAに当たると、DNAを構成する原子と原子の間の結合を外す作用が働く。これが遺伝子の損傷である。
何もしていなくても
自然放射線
は存在しDNAを損傷させるほか、そもそもDNA分子は、一説では一日で1細胞あたり50万回損傷することもあるとされている。このために生物はこの遺伝子の損傷を修復する能力を持っている。しかし、修復には時間がかかるために、遺伝子の損傷が同時に多数発生すると、全ての損傷を正しく修復できないこともある。また、誤って修復されるものが出てくる可能性がある。
DNAは
塩基対
と呼ばれる構造を持ち、2本の鎖状の構造を持つ。2本鎖なので、一ヶ所だけなら、一方が切れてももう一方があれば正しく元通りに出来る。しかし複数箇所で同時に発生してしまうと、鎖が切れてしまったり、それが別の所に繋がってしまったりといった重大な問題が生じる恐れがある。この場合、
細胞
が死滅したり、機能に異常が生じたりする。遺伝病と同様の症状を示したり、ときには
がん遺伝子
が生じたりがん抑制遺伝子が損傷したりすることもあり、これによって細胞はがん化するのである。
職業病
原子炉を運用している時は、内部で核分裂が起きており、この際には常に放射線が出ている。
原子力発電所
の保守、あるいは
病院
のレントゲン撮影などの技師、作業員は、被曝量が厳重に管理されてはいる(はずだ)が、それでも白血病やがんなどの罹患は避けにくい。
例えば放射線技師の安全基準は、年間50ミリシーベルト(50,000マイクロシーベルト)である。
被曝後
大量に被曝して正常なDNAを失い細胞分裂が出来無くなると、新陳代謝ができなくなる。
例えば、
皮膚
は内部で細胞分裂しながら表面は徐々に剥がれ、細胞が常に新しいものに入れ替わっている。しかし新たに細胞が出来無ければ皮膚の表皮は失わる一方となり、やがて真皮が露出し、
体液
が流出するようになる。また、胃や腸の粘膜なども同様に新しい細胞に生まれ変わる事ができず、剥がれ落ちたところから
毛細血管
が露出し、出血することになる。
治療
皮膚の治療は不可能ではないが、胃腸は体内なので治療する術がなく、致死的である。
大量被曝治療は、この胃腸の細胞をいかに再生し治癒させるかが課題といえるが、現時点の医学では解決方法を見いだせていない。
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