希土類
読み:きどるい
外語:rare earth

 3族の元素のうち、第4周期から第6周期までの総称。全て遷移金属元素である。レアアース。
目次

概要
 似た名称に「レアメタル」(希少金属)があるが、全く異なるものである。
 希土類(レアアース)とは、スカンジウム、イットリウム、およびランタノイド元素の総称である。次の元素が該当する。
 ガドリニウムを基準とし、ガドリニウムより原子量が小さい元素を「軽希土類」、大きい元素を「重希土類」という。またこの中間的な元素を「中希土類」と分類することもある。

特徴

性質
 ルテチウム(Lu)以外のランタノイドイオンは4f殻が不完全で、この非閉殻のエネルギー状態が変化する際に可視光線を発するものが多い。
 また、現在はそれほど「希」ではないことが分かっている。

アクチノイド元素
 同じ3族にアクチノイドがある。
 アクチノイドは5f殻が満たされて行く系列であるが、その挙動は4f殻を持つ希土類とは大きく異なるため、これは希土類と分けて考えられている。

脱レアアース

需要
 希土類(レアアース)は、様々な分野で使われている。
 金属そのものとしては、例えばネオジム磁石がある。これは日本の住友特殊金属の発明で、ハイブリット自動車や電気自動車の駆動モーターに使われている。
 しかしネオジム磁石は、錆び易く、脆く、温度に弱く高温で保磁力が低下するなど、様々な欠点があり実用化が遅れた。乗用車用は、ネオジムの4割を重希土類の「ジスプロシウム」に置き換え、テルビウムなどの希土類を添加することで耐熱性を高めて性能改善を実現、トヨタプリウスの補助モーターに採用され世界的に有名になった。
 またレンズはじめ精密なガラス製品の研磨には、塩化セリウムが使われている。

供給
 希土類は、それほど「希」ではなく、世界中に広く存在している。問題なのはコストのみで、割に合わないことから積極的に掘られていない。
 精練に手間暇が必要で莫大な人件費が掛かる上に、掘った時に同時に出て来る放射性物質の処分費用もかなり大きく、このため採算が合わないため殆どの国で掘られず、後述するように従来は支那に依存することになっていた。
 支那は件費が安い、より具体的には人権意識が低い支那では危険な作業をやらせることが可能で安く採掘できる。また放射性物質もそこら辺にポイ捨てできるので、全体的な費用が安く済むのである。

依存と供給途絶
 希土類自体は世界中にあるがコスト的な面から生産地が限られており、一時期は、世界の需要の90%が支那で産出されていた。
 支那国内での需要の高まりに加え、世界での需要の高まりに興じ、欲の皮の突っ張った支那は高圧・傲慢・威圧的な態度、つまり「仕方がないから売ってやろう」という態度で各国と交渉に応じており、価格が高騰し入手性も悪くなった。
 特に、日本に対する輸出規制が掛かるようになり、液晶パネル、ハードディスクドライブ(HDD)といったガラスを使う製品の製造が危機的状況となったほか、モーター製品などにも影響を与えた。モーターは、車両などだけでなく、エアコンなどにも使われているのである。
 日本の経済・産業界に甚大な衝撃を与え、覚醒させたこの事件を、業界は「レアアース・ショック」と呼んでいるようである。かくして、業界はすぐさま対応に動くこととなった。

輸入先の多様化
 一時期は支那への依存90%とされた希土類も、輸入先の多様化が進んだ。
 商社を中心として日本企業は支那以外での希土類資源の開発および調達を積極化させた結果、2013(平成25)年からは日本企業が権益を持つ海外の希土類鉱山などからの輸入も本格化することとなった。
 現在、権益を持っているのは、オーストラリア、インド、ベトナム、カザフスタンなどであり、2012(平成24)年の1月から6月までの上半期における希土類輸入に占める支那産の割合は49.3%と半分を割り込み、90%前後依存していた2009(平成21)年までとは大きく様変わりしている。
 ただし、代替先が出来たのは採掘しやすい軽希土類が主で、希少価値が高い重希土類についてはなお支那に依存している。

新鉱床の開発等
 新鉱床の開発等も、細々とではあるが進められた。
 2011(平成23)年7月には、太平洋の深海底に高濃度の希土類を含む泥があることが判明、その埋蔵量は陸上の800倍とされた。太平洋海底のボーリング試料の分析では、ネオジムなどを400ppm以上の濃度で含む泥が水深3500m〜6000mの多くの地点に分布していた。
 中でも高濃度なのは、タヒチ付近の南東太平洋と、ハワイ付近の中央太平洋とされ、泥の厚さはそれぞれ8mと23.6mで、両海域の面積は計約1100km2。希土類の総量は、世界の陸上埋蔵量約1億1千万トンの800倍に当たる約8800億トンとされた。
 支那の希土類鉱床の濃度は500ppm〜1000ppm程度だが、タヒチ・ハワイ周辺の泥は最高で2230ppmと高濃度で質がよいとされる。
 このように、効率の良い新鉱床も発見されてはいるが、どの国も大規模な採掘には二の足を踏んでいる。なぜなら代替品の開発も並行して進んでいて、採算が取れないからである。
 特に海底資源については、まだ経済的な採掘技術がないことから、陸上より高濃度だとは言ってもコスト競争力という面が課題となっている。

代替品の開発

状況
 高慢な態度で交渉をしていれば、いずれ生産者側が不利になる。それは、代替品が作られるからである。
 軽希土類は代替供給先が確保できているが、重希土類はなお支那に依存しており供給が政治情勢に左右されるため、重希土類を使用しないで済む技術開発、代替品の研究が進んだ。
 希土類(レアアース)の代替品開発は容易なことではないが、これを契機に脱レアアースの技術開発が加速した。そこは世界でも類い希なる変態、このように追い詰められたときに本気を出す日本も研究をがんばった。

ガラス研磨
 日本はもともと、特定の元素資源が不足するなら他の元素の組み合わせで補おうという「元素戦略プロジェクト」が世界でも先行している。これも、代替品開発において、日本の優位性を際立たせた。
 例えばガラス研磨の代替としては、ジルコニウムを使う研究が進められている。酸化セリウム系研磨材よりも効率よくガラスなどを磨くことが可能で、しかも使用量を40%減らせるとされている。

磁石とモーター
 永久磁石は日本のお家芸で世界最先端を突進している分野だが、乗用車用のネオジム磁石の代替の研究も進んでいる。
 重希土類ジスプロシウムを使用しないネオジム磁石の研究も進んでおり、2014(平成26)年年に大同特殊鋼がジスプロシウムを使わない高性能磁石を開発し、ホンダとの共同開発で2016(平成28)年にハイブリッド車用駆動モーターに使用可能な重希土類不使用のネオジム磁石を世界で初めて実用化、その年の秋発売の新型ミニバン「FREED(フリード)」から採用が開始された。
 また本格的な代替はスイッチドリラクタンス回転機が有力で、東京理科大学の千葉明教授らにより発明された。このモーターは、希土類を使わない。

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