Μ-Vロケット
読み:ミューファイヴ-ロケット
外語:M-V rocket
宇宙科学研究所(ISAS)
(現在の
JAXA
)により開発された、科学衛星打ち上げ用のロケット。
ミューロケット
の第五世代。
目次
概要
仕様
名称の由来
特徴
固体燃料ロケット
風貌
廃止
実績と計画
実績
計画
概要
仕様
三段式固体燃料ロケットだが、オプションとして四段目にキック・モータを装備することも可能である。
一段目:
M-14
二段目:
M-24
、
M-25
三段目:
M-34a
、
M-34b
キックステージ: KM-V1、KM-V2
第4世代のミューロケット
Μ-3SII
型の後継機として開発された。
衛星打ち上げごとにカスタマイズされており、共通仕様というものが存在しないようだが、直径は2.5mで、低軌道へ1.8トンの
ペイロード
を運ぶことができる。
1997(平成9)年2月12日に1号機(Μ-V-1)の打ち上げに成功し、全7機を打ち上げた。
名称の由来
名前の「Μ」(ミュー)は、ラムダロケットの後継であるところから。
「V」(5)は、
ミューロケット
の第5世代であるところから。
但し関係者は「エムごーロケット」と呼んでいる。Mがミューであることに対する強い思い入れはないらしい。
特徴
固体燃料ロケット
日本では、二種類のロケット開発が並行した。このうちΜ-Vロケットは、固体燃料ロケットである。
液体燃料ロケットに比較して固体燃料ロケットは、構造が簡単なので取り扱いが容易だが、誘導制御が難しく精密な軌道投入などには向いていない、という利点と欠点がある。
軌道がずれると困る実用衛星の打ち上げには不向きだが、さほど軌道が正確でなくとも使える科学衛星では支障がないことが多い。
かくして日本ではISASが固体燃料ロケットの開発を続け、様々な実績を残した。また
H-IIAロケット
用の固体ロケットブースター
SRB-A
シリーズの改良にも、ISASの開発した技術が導入されている。
風貌
全体的に白系で塗られており、下半分は灰色系で塗られる。
下半分には、赤色の縦書きで「Μ-V-8」のようにロケットの名前が書かれているのが特徴だった。
廃止
Μ-Vロケットは優れたロケットで、固体燃料ロケットなので
ミサイル
としての軍事転用も不可能ではないなど魅力あるものだった。
しかし最大の弱点として、「高い」というものがあった。
約75億円で、低軌道(LEO)へ1.8トン程度の
ペイロード
しか運ぶことができない。対するH-IIAロケットの最もコンパクトなモデル
H-IIA202
でさえ、約90億円でLEOへ10トン程度運ぶことができるので、その差は歴然としていた。
かくして、廃止という憂き目に遭った。
実績と計画
実績
全7回中、6回成功している。成功率86%である。
Μ-Vロケット1号機
(Μ-V-1): 1997(平成9)年2月12日13:50(@243)
はるか
(MUSES-B)
Μ-Vロケット3号機
(Μ-V-3): 1998(平成10)年7月4日03:12(
3日
@800)
のぞみ
(PLANET-B)
Μ-Vロケット4号機
(Μ-V-4): 2000(平成12)年2月10日10:30(@104)
ASTRO-E
(失敗)
Μ-Vロケット5号機
(Μ-V-5): 2003(平成15)年5月9日13:29:25(@228)
はやぶさ
(MUSES-C)
Μ-Vロケット6号機
(Μ-V-6): 2005(平成17)年7月10日12:30(@187)
すざく
(ASTRO-EII)
Μ-Vロケット8号機
(Μ-V-8): 2006(平成18)年2月22日06:28(
21日
@936)
あかり
(ASTRO-F)
Μ-Vロケット7号機
(Μ-V-7): 2006(平成18)年9月23日06:36(
22日
@941)
ひので
(SOLAR-B)
計画
当初の計画では、Μ-V-2が月探査機
LUNAR-A
、更に後には金星探査機
あかつき
(PLANET-C)の打ち上げにも使われる予定だった。
このため実際の打ち上げ順序とロケットの号機番号が一致せず、またJAXAとなった後のロケット計画見直しなどもあり、Μ-V-7の打ち上げを最後に開発が中止されることになった。
廃止された計画は次の通り。
Μ-Vロケット2号機 ‐ 月探査機LUNAR-A (衛星の開発遅延により計画中止)
Μ-Vロケット9号機 ‐ 金星探査機PLANET-C (Μ-Vロケット中止によりH-IIAロケットに変更)
後継となる固体燃料ロケットとして、
イプシロンロケット
が開発された。
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