ダイオキシン
読み:ダイオキシン
外語:Dioxin
毒性が強いとされる
物質
の中でも、特に有名なもの。
目次
概要
特徴
反応性
発生源
毒性
ダイオキシン問題
食品への混入
毒性と発生源
嫌疑
塩ビ発生源疑惑
焼却炉とダイオキシン
対策のありかた
実際の毒性
慢性毒性
内分泌撹乱作用
排斥運動
結論
概要
ダイオキシンとは、複数の物質の総称である。このため「ダイオキシン類」ともいう。
ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン
(PCDD)や、
ポリ塩化ジベンゾフラン
(PCDF)、コプラナー
PCB
をまとめてダイオキシン類と呼んでいる。
常温では無色無臭の固体である。
特徴
反応性
ダイオキシンは水に溶けない脂溶性の物質で、また
酸
や
アルカリ
にも容易には反応しない。ただし
紫外線
により徐々に分解されることが確認されている。
安定した物質のため、人体に取り込まれると大部分が脂肪内に蓄積され、簡単には分解されない。但し無限に蓄積が続くわけではなく、半減期は約7.5年であり、蓄積量もある程度の水準を超えることは殆どない。
発生源
ダイオキシンは、
炭素
(C)・
酸素
(O)・
水素
(H)・
塩素
(Cl)が加熱されるような環境で生成される。
主要な発生源として廃棄物焼却施設、金属精練施設、潤滑油、
煙草
などだとされている。
毒性
ダイオキシン中、最も毒性の強いのは2,3,7,8-TCDD(四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン)である。
ラットの経口LD
50
(半数致死量)は20μg/kg。ダイオキシンに最も弱いとされるモルモットのLD
50
が0.6〜20μg/kgである。
これが
人間
にも当てはまるとすると、猛毒
サリン
の数倍の急性毒性があることになる。
ダイオキシン問題
ダイオキシン問題という言葉がある。しかし、世間に流布されている事柄は、時に事実から乖離している。
食品への混入
ダイオキシンは主として食物から摂取される。
ダイオキシンは脂肪に溶けやすいため肉や
魚
、卵、乳製品などに含まれやすい。また
水
に溶けないので根から水を吸い上げる
野菜
にダイオキシンが濃縮される可能性は低い。
かつて、テレビで埼玉県所沢市の野菜にダイオキシンが多いなどと事実無根の報道をされ、農家は風評被害で大損害を被るなど大問題となった。
生体内でほとんど
代謝
されないことから、食物連鎖の過程で生態濃縮される。たとえば、飼料にダイオキシン類が多く含まれればそれを食べた畜産物は汚染されるため、飼料中の濃度の管理が重要である。1999(平成11)年にはベルギーで飼料のダイオキシン汚染が発生、ベルギー産の
鶏肉
、
鶏卵
が高濃度でダイオキシン汚染されるという事件が発生した。
このような問題に対応すべく、日本でも厚生労働省や農林水産省が調査している。農林水産省の「
平成19年度農水産物中のダイオキシン類の実態調査の結果について
」によると、厚生労働省の調査で、農畜水産物からのダイオキシン類の一日摂取量は耐容一日摂取量の4分の1程度だった、としている。
毒性と発生源
嫌疑
ダイオキシンは、
発がん性
、胎児畸形、甲状腺機能低下、生殖器官の退化や精子数減少、免疫機能の低下、揚げ句の果てには
新生児
をアトピーにするなど、全く根拠のない嫌疑を次々と掛けられている、恐らく日本で最も有名な毒物である。
そして、これが事実であることが前提となって、現在日本では対策が進んでいる。
塩ビ発生源疑惑
塩化ビニール
(以下塩ビ)を燃やすと発生するとされ、1990年代には学校の焼却炉の閉鎖や、塩ビ排斥運動などが各地で起こり、社会問題にもなった。
しかし、このダイオキシンの毒性も被害も、実際には悲観する程のものではなかった。
焼却炉とダイオキシン
ダイオキシンの発生源とされる焼却炉だが、発生するダイオキシン量は調査により塩ビとは無関係と判明している。
なぜなら、一般家庭ゴミにも充分量の塩素が含まれるため、ダイオキシン生成量はほぼ全て炉の燃焼条件のみで決まるのである。加えて焼却炉周辺と遠方とで摂取量・体内量を調査しても、有意な差は存在しなかった。
対策のありかた
現在も焼却炉に特化して対策が進められてはいるが、元々問題の無いレベルを、さらに問題の無いレベルに下げるために莫大なコストを掛けようということになり、資産配分から考えても問題といえる。
つまり、塩ビを規制したところでダイオキシンは減らない。ダイオキシンの摂取量や体内量が最も多かったのは1970年代だが、その諸元は牧草地に多く撒かれた有機塩素系農薬であると考えられている。
実際の毒性
慢性毒性
危惧される
慢性毒性
を考える。
まず
発がん性
だが、これは通常の生活ではあり得ないほどの大量暴露を受けた集団に、
煙草
一本分程度の発がん性が見られた、という
疫学
調査に由来する。
このような水準の話であるので、発がん性は殆ど危惧に値しないといえる。
内分泌撹乱作用
次に内分泌撹乱作用(環境ホルモン作用)である。
精子数減少や胎児畸形問題が増加したのはここ30年程度の話であるが、一方、ダイオキシン摂取量や体内量はここ30年で順調に減少してきている。
つまり両者に相関は見られず、ダイオキシンが直接の原因であるという根拠は存在しない。
排斥運動
例えば有機水銀や
鉛
などには、きちんとした有害の証拠が存在するが、一方でダイオキシンには
疫学
的にすら、人体に有害だという証拠が全くないのである。
環境から減らすに越したことはないが、過剰な排斥運動も問題である。これは、医薬品も飲み方を誤れば毒なので絶対に飲んではならないと言ってるのと同じくらいナンセンスなことだからである。
結論
結論を述べれば、日常摂取量で急性毒性を発揮する事はありえず、今の水準なら慢性毒性に陥る可能性も低い、ということになる。
草木を焼べて焚き火をする程度でもダイオキシン類は発生する。つまり
原始地球
の頃からこれは存在し、それこそ
人類
が生まれた時には既に触れ始めている物質である。よって測定限界ギリギリ程度の微量のダイオキシン類の検出結果に目くじらを立てて、まるで明日にでもガンで死ぬかのような恐怖心を煽るのは、無知な者を扇動するような何らかの意図があるのだと思われる。
しかし全く無害というわけでもない。そもそもこの世に、全く無害の物質など存在はしないのである。
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