PCB (物質)
読み:ピースィービー
外語:PCB: polychlorinated biphenyl

 かつて、塗料、絶縁油、熱媒体、潤滑油等として用いられていた物質。
目次

概要
 ポリ塩化ビフェニル、ポリ塩素化ビフェニル、ポリクロロビフェニル(polychlorobiphenyl)などと呼ばれる。
 不燃性・絶縁性・化学的安定性などに優れ、には溶けずとよく混ざり有機溶媒にはよく溶け、粘着性に優れるといった、産業用途に適した特性を多く持っている。
 常温常圧下では無色透明から淡黄色の粘り気のある油状液体である。
 性質は構造によって違うが、全てをまとめたCAS番号は1336-36-3である。ICSC番号は0939だが、これはAroclor 1254(アロクロール1254)だけが対象のようである。

情報

異性体
 PCBとは、基本骨格であるビフェニルの全10個の水素のうち、1〜10個が塩素に置換したものをいう。このためPCBには全部で10種類の同族体が存在する。
 
 合算して、異性体数の合計は209である。

塩素数1
 塩素数1は異性体が3つあり、次の通りである。
  (CAS番号2051-60-7) 2番炭素が置換したもの
  (CAS番号2051-61-8) 3番炭素が置換したもの
  (CAS番号2051-62-9) 4番炭素が置換したもの

塩素数10
 塩素数10は異性体が一つだけで、CAS番号2051-24-3である。
 

特徴

生分解
 化学的に安定なPCBは自然界では分解されにくいため、環境に残留してしまう環境汚染物質である。
 そしてPCBは生物にとって厄介な物質だった。
 例えば人間で考えると、摂取された物質を分解するのは肝臓の役目であるが、さすがの肝臓もPCBは分解できない。近年ではPCBを分解するバクテリアも発見されているが、それ以外の殆どの生物にとって、PCBは分解できない代物なのである。

脂溶性
 加えて問題なのは、水に溶けずに油に溶けるという特徴である。
 海洋に流れたPCBは海水で希釈されることなく、PCB油滴となって漂い、魚介類の体脂肪へと集まり、生態系によって生態濃縮が行なわれた。
 小動物の捕食によって高濃度のPCBが大型魚や、それを捕食する鳥に集まり、そしてそれらが大量に死ぬという問題が1960(昭和35)年代になって発生した。
 人間の場合でも、水に溶けないので腎臓から尿として体外に排出できず、結果体脂肪組織へと蓄積されてゆくと考えられる。但しダイオキシンと同様、PCBも無限に蓄積するのではなく、ある程度の半減期はあると考えられる。

毒性
 PCBの慢性毒性については現在も研究中であるが、経口摂取、吸入、皮膚接触で毒性を示すとされ、ヒトに対しては、変異原性発がん性免疫力や繁殖力の低下、肝臓や腎臓への毒性などが疑われているようである。
 日本では食用油である米糠油にPCBが混入した「カネミ油症事件」と呼ばれる食品公害事件が有名である。

変性
 PCBは800℃程度に加熱すると構造がよく似ているが毒性がより高いと言われているダイオキシンとなる。
 1100℃程度にすると分解される。

潤滑油
 PCBは潤滑油として使われたため、潤滑油の商品、つまり混合物としても多数CAS番号は登録された。
 次のようなものが知られている。なお、Aroclorの和名は「アロクロール」である。

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