第三セクター鉄道
読み:だいさんセクターてつどう
外語:third sector railway

 鉄道会社の運営形態の一つ。
目次

概要
 公企業を第一セクター(例えば日本国有鉄道)、私企業を第二セクター(例えば京浜急行電鉄)と定義した際、それ以外の運営形態を持つ鉄道会社のこと。
 当初は特定地方交通線の運営形態として有名だった。
 最近では工事が中断された路線や、新幹線の開通に伴いJRから運営が切り離された鉄道などもこの方式で運営されているほか、全く新しい路線も第三セクター方式で運営されることがある。

特徴

分類
 第三セクター鉄道を大雑把に分類すると、次のようなものがある。

特定地方交通線の転換鉄道

国鉄再建法
 日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法)の成立後は、輸送量が少ない地方路線で、特定地方交通線として定められた赤字路線を、法律の力により強制的に廃止できるようになった。
 これは、かつての赤字83線の失敗の教訓を踏まえて、国鉄再建法では強制的な路線廃止が行なえるような条項を含ませていたためである。
 しかし、いくら赤字であるとはいっても実際にはその地域の交通事情との兼ね合いもあり、無くなると困るという路線は多数存在していた。そのような路線では当然路線の廃止に対して強烈な反対運動が起こることとなる。
 現に、第1次特定地方交通線ではそのあまりの輸送量の少なさに反対運動はあまり起きなかったが、第2次特定地方交通線では一気に反対運動が激しくなって協議中断に追い込まれるところもあらわれた。

妥協策
 そこで、旧国鉄末期に定められた特定地方交通線を、何とかして鉄道のまま残すための苦肉の策として考えだされたのが、この方式である。
 線路などの施設は国鉄から無償で譲り受け、営業キロ1kmあたり約3,000万円の転換交付金を原資とし、それにさらに沿線の自治体と沿線の企業が出資して鉄道会社を設立することとなった。
 国鉄再建法によれば開業後5年間は赤字額の半分が毎年補填されることになっていた。
 この方式による第三セクター鉄道の第1号は、1984(昭和59)年開業の三陸鉄道である。この三陸鉄道が営業的に成功を収めたこともあいまって、多くの特定地方交通線は第三セクター化の道を歩むことになる。

路線の一覧

現役路線
 この中には、次に記述する工事中止路線も含んでいる。

廃止路線

私鉄からの転換路線
 諸般の事情で廃止が決まった私鉄を引き継ぐ形で、既存路線を第三セクター化したものがこれである。
 次の路線がある/あった。

工事中止路線の復活

問題
 国鉄再建法成立時点で、日本鉄道建設公団が建設中だった各路線は工事が中止されることになった。これは国鉄再建で赤字路線を廃止している最中に新規路線が開通しては混乱の元となり、また新規開設路線の採算性がどの程度であるかはっきりしなかったためである。
 とはいえ、これらの路線は沿線自治体が必要としていたために建設が行なわれていたのであって、工事の中止は沿線自治体からすれば、いきなり梯子を外されたも同然であった。

解決
 そこで、沿線自治体や企業が、国とは別に出資して建設を続行した。これが全ての工事中止路線で行なわれた。
 これら工事中止線は、2002(平成14)年の土佐くろしお鉄道阿佐線(愛称は「ごめん・なはり線」)の開通で、全てが完成した。
 これらの路線の中には北越急行愛知環状鉄道智頭急行のような重要幹線を担う鉄道会社も存在する。

新幹線平行路線

問題
 整備新幹線が開通すると、その平行路線は第三セクター化されることが多い。
 昔の新幹線の建設理由は「在来線の線路容量が不足しておりこれ以上優等列車を走らせられず、スピードアップも出来ないため、新幹線を建設して輸送容量向上とスピードアップの一挙両得を狙う」というものであった。
 しかし、今の整備新幹線の未完成区間は特別に輸送容量に困っているような状況ではなく、新幹線開通後は多くの場合、輸送力過剰に陥る。
 そのため、JRは新幹線開通後も在来線を運営し続けることに関して非常に否定的になっている。その最初の例は長野新幹線と信越本線である。横軽を抱える信越本線は、新幹線開通後はコストばかり掛かるお荷物路線になってしまうというわけである。

解決
 国鉄の時代であれば、公共の利益を優先させるため、鶴の一声で路線を残すこともできたと考えられる。しかし残念ながらJRは私企業に過ぎないため、このような要望には到底答えられない。
 そこで、このような路線も第三セクター化することでローカル輸送を残すという選択が行なわれるようになったわけである。

路線の一覧

新設路線

公共施設
 ニュータウン鉄道、空港連絡鉄道のように、公共施設として鉄道を建設するような場合に第三セクターが採用されることもある。
 これは、採算は取れそうだが、しかし私企業が出資するには金額が大きすぎたりリスクが大きすぎるなどの理由により、結果として誰も事業を行なわないような状況で採用される例が典型である。
 また、建設する路線が複数の自治体にまたがような場合は公営鉄道として建設できないため、それを解消する意味合いで第三セクターを設立する場合もある。
 このような設立理由の場合は、上下分離方式により第三種鉄道事業者として建設・保守業務のみを行ない、実際の運行は他の鉄道会社に任せるという形態をとることも多い。

一覧

新設された路線

新設された第三種鉄道事業者

その他の第三セクター鉄道
 経営破綻した私鉄を第三セクター化したものや富山ライトレールのように既存鉄道のライトレール化により登場したものなどがある。
 次のようなものがある。

再検索