TCA回路
読み:ティースィーエイかいろ
外語:TCA: tricarboxylic acid cycle

 トリカルボン酸回路。生物の体内に備わる、糖質代謝の経路の第二段階。クレブス回路(Kreb's回路)または枸櫞酸回路・クエン酸回路(Citric Acid Cycle)とも呼ばれる。
目次

概要
 これは、ミトコンドリアで行なわれる9段階からなる環状の代謝経路である。
 具体的には三つの重要な働きがある。
  1. 解糖系で作られたピルビン酸をアセチルCoAに変えてから回路に入り、アセチルCoAを酸化して2分子のCO2に変換する
  2. 水素を還元型の補酵素(3NADH2+とFADH2)の形で捕捉する
  3. アミノ酸代謝、尿素回路、糖新生など、他の経路の仲立ちをする(代謝の交差点)
 これがTCA回路の目的である。

特徴

回路
 まず、アセチル基のC-C結合を直接切断するのは困難である。そこでTCA回路では、最初の回路でアセチルCoAをオキサロ酢酸と縮合させてC6化合物(枸櫞酸)に変え、その後2回、1分子ずつCO2を切り離してC4化合物にする。その結果として、アセチル基を分解したことになる。
 
 回路は、枸櫞酸→イソ枸櫞酸→α-ケトグルタル酸→スクシニルCoA→琥珀酸フマル酸→L-林檎酸→オキサロ酢酸、の順である。
 途中、9ヶ所の大きな変化のうち、8ヶ所において酵素による反応を経、もって環状の反応処理を構成している。
  1. 枸櫞酸シンターゼ (オキサロ酢酸→枸櫞酸)
  2. アコニターゼ (枸櫞酸→cis-アコニット酸→イソ枸櫞酸)
  3. イソ枸櫞酸デヒドロゲナーゼ (オキサロ琥珀酸→α-ケトグルタル酸)
  4. 2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ (α-ケトグルタル酸→スクシニルCoA)
  5. 琥珀酸チオキナーゼ(スクシニルCoAシンテターゼ) (スクシニルCoA→琥珀酸)
  6. 琥珀酸デヒドロゲナーゼ (琥珀酸→フマル酸)
  7. フマル酸ヒドラターゼ (フマル酸→林檎酸)
  8. 林檎酸デヒドロゲナーゼ (林檎酸→オキサロ酢酸)
 もし途中の酵素の働きに遺伝的理由等による問題があれば、回路は正常に回転出来ず、様々な疾病を招くことになる。

糖新生
 解糖系から分岐する経路により、糖以外から糖を作り直す経路である。
 解糖系の逆反応と、TCA回路を包み込む経路である。
 解糖系は、グルコースからホスホエノールピルビン酸を経てピルビン酸を作り、これをオキサロ酢酸に変えてTCA回路に渡しTCA回路を回転させている。
 糖新生では、ホスホエノールピルビン酸からグルコースまでの逆経路があるほか、オキサロ酢酸からホスホエノールピルビン酸に戻す回路を持っており、ここから再び糖に戻すことができる。

補充経路
 アセチルCoAと結合すべきオキサロ酢酸が不足している場合、ピルビン酸はアセチルCoAにならず、直接、またはホスホエノールピルビン酸を経由してオキサロ酢酸になる補充経路が存在する。この補充回路は、上に述べた糖新生の一部分でもある。
 一方、酢酸脂肪酸のようにピルビン酸を経由せず直接アセチルCoAになるような物質の場合には、前述の補充回路を利用できないのでオキサロ酢酸不足が起こる。それに備えるため、TCA回路のメンバーであるイソ枸櫞酸がグリオキシル酸になり、アセチルCoAと結合して林檎酸を作り、再びTCA回路に戻るバイパス経路(グリオキシル酸回路)も存在する。

尿素回路
 アンモニアを分解し尿素に変換する反応を尿素回路という。これもTCA回路と同様に回路になっている。
 尿素回路はTCA回路とも連動しており、途中生成されるフマル酸ミトコンドリアに取り込まれて林檎酸となり、これがTCA回路に投入される。TCA回路のオキサロ酢酸の一部はアスパラギン酸となり、これが再び尿素回路に戻される。

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