珪素燃焼過程
読み:けいそねんしょうかてい
外語:Silicon-burning process
末期の恒星にて行なわれる核融合反応の一つであり、最後の反応である。
概要
珪素(シリコン)同士が融合する核融合反応。反応が起こる温度とエネルギー密度から、少なくとも太陽の8倍程度の質量が必要。
酸素燃焼過程まで終了し、恒星核の温度が低下するとさらに恒星核は収縮、これに伴い温度と密度が高まり、珪素燃焼過程が始まる。この反応は諸説あり、早い説で2日程度、長い説で2週間程度とされ、いずれにしても天文学においては殆ど瞬間とも言える程度に短い。
この反応でニッケルと鉄が生成されるが、それ以上は核融合反応が進まないためここで終了、珪素が使い果たされると恒星は遂に重力崩壊を起こし、超新星爆発してII型超新星となる。
特徴
反応前
珪素燃焼過程は、核融合反応によって作られた珪素によって起こる反応である。
この珪素は、炭素燃焼過程→ネオン燃焼過程→酸素燃焼過程という過程で生み出されるほか、炭素からアルファ反応(ヘリウム原子核の捕獲反応)を繰り返して作られたものである。
この反応を簡略化すると、次のとおりである。
- 12C + 4He → 16O
- 16O + 4He → 20Ne
- 20Ne + 4He → 24Mg
- 24Mg + 4He → 28Si
反応がここまで達し、遂に珪素以外の元素がなくなると、恒星核は収縮を始め、珪素の燃焼が始まる。
反応
珪素の燃焼では、アルファ反応が繰り返され、次々と元素が作り出される。
- 28Si + 4He → 32S
- 32S + 4He → 36Ar
- 36Ar + 4He → 40Ca
- 40Ca + 4He → 44Ti
- 44Ti + 4He → 48Cr
- 48Cr + 4He → 52Fe
- 52Fe + 4He → 56Ni
しかしニッケル56の次の亜鉛60にはなることができず、ここでアルファ反応は打ち止めとなる。
ニッケル56(56Ni)は地球上での半減期は約6.077日で、β+崩壊でコバルト56(56Co)に崩壊し、またコバルト56(56Co)も地球上での半減期は77.27日でβ+崩壊し、鉄56(56Fe)へと崩壊する。但し大質量星においてはコバルト56(56Co)の半減期はわずか数分しかない。
こうして生ずる鉄はエネルギーが低いため、これ以上の核融合は起きない。こうして進化した恒星の中心には鉄の核ができることになる。
この反応のために、鉄56の存在量は全ての鉄のうち91.754%にもなり、宇宙では比較的ありふれた元素となっている。なお、鉄でも鉄52は安定核種ではなくマンガン52を経てクロム52に崩壊してしまうため、天然には殆ど存在しない。
崩壊
こうしてニッケル56まで生成し、それがβ+崩壊で鉄が生じ核融合が終了すると、恒星はわずか数分のうちに収縮を始める。
これによって恒星核の圧力が増し温度が上昇するが、しかしそれ以上の核融合がないために、熱源を失い運動エネルギーが得られなくなっていて恒星が自己重力による収縮に対抗する術が失われているために、収縮は急加速して僅か数秒のうちに重力崩壊を起こす。
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