尿素
読み:にょうそ
外語:urea
陸棲の両生類や哺乳類などが、排泄物として排泄する
有機物
。
尿
として体外に
排泄
されるが、乾燥肌を防ぐ薬剤などとして広く利用される物質でもある。
目次
概要
基本情報
誘導体、関連物質の例
性質
特徴
発見
有機物
製法
動物と尿素
哺乳類
その他動物
排出に見る動物進化
応用、用途
医薬品
ディーゼルエンジン
安全性
適用法令
危険性
有害性
環境影響
概要
基本情報
組成式: CH
4
N
2
O
構造式: NH
2
CONH
2
分子量
: 60.05
密度
: 1.335g/cm
3
嵩比重: 0.74
融点
: 133℃
沸点
: 135℃(分解)
CAS番号
: 57-13-6
ICSC番号: 0595
化学名: Carbonyldiamide
外観:
白色
の粉末または粒状の
結晶
、臭いは無臭またはアンモニア臭
溶解性:
水
と混和する
誘導体、関連物質の例
アリルイソプロピルアセチル尿素 (催眠鎮静剤)
過酸化尿素 (
漂白剤
)
スルフォニル尿素 (糖尿病用剤)
チオ尿素 (62-56-6) (加硫促進剤)
テトラメチル尿素(
TMU
) (
溶剤
)
ナフチルチオ尿素 (86-88-4)
ブロムワレリル尿素 (催眠鎮静剤)
性質
強酸化剤、亜硝酸塩、無機塩化物、亜塩素酸塩、過塩素酸塩と激しく反応する。
特徴
発見
尿素は1773(安永2)年に人尿より発見された。
尿素を世界で初めて化学合成したのはドイツの科学者ウェーラーである。当時は
有機物
は生命のみが作り出せるものと信じられていたが、フラスコ内での合成も可能であることを証明し、後の有機化学や生命観に大きな影響を与えた。
有機物
有機物
と
無機物
を分類する化学的な意義はあまりないが、尿素は有機物とされている。
これは、大昔には
生物
の神秘的な力でしか作れない物質を有機物としており、生物が作る尿素もそれに該当するとして有機物とされたことに由来する。
しかし尿素(H
2
NCONH
2
)は、実際には炭酸(無機)のアミド体でしかない。歴史的な流れで現在でも尿素は有機物とされているが、このために有機物と無機物の境界はあいまいである。
製法
尿素の工業的な原料は
アンモニア
である。日本の場合、工業的には石油プラントの近傍で作られる。
アンモニアは
水素
と
窒素
からできている。石油プラントでは天然ガスや石炭、オフガス(石油の精製過程で生じる副産物)を燃やしているが、ここで石油系ガスの蒸気に含まれる水素を分離し、かつ空気中に大量に含まれる窒素と合わせてアンモニアを合成する。このアンモニアの殆どは、同じプラント内で尿素や
硫酸アンモニウム
など他の基礎原料を作る材料となる。
動物と尿素
哺乳類
動物体内で
蛋白質
をはじめとする
窒素化合物
が分解されると
アンモニア
(NH
3
)となるが、これは有毒である。そこで、
哺乳類
はアンモニアを安全な尿素に変換する。
このための生体内の代謝経路を
尿素回路
という。
そして哺乳類はこの尿素を
水
に溶かした
尿
として排泄物を作り、一旦
膀胱
に蓄え、液体として排出する方法を採用している。成人で一日に約30gの尿素が尿として排泄されている。
但し尿素はただの老廃物なだけではなく、
筋肉
などの組織内にも多く存在している。尿素は1分子内に6ヶ所の
水素結合
のサイトを持っており、水の
分子
と馴染みやすい(親水性)。哺乳類は、この機能も有益に利用している。
その他動物
魚類
や水棲の
両生類
では水が大量に利用できる環境のため、アンモニアのまま排出しても希釈され問題にならない。このためアンモニアで排泄する。
排泄物
を濃縮する能力を欠いているといえる。
対して陸棲の両生類は主として尿素に変換して排泄する。
爬虫類
や
鳥類
では
尿酸
に変換し、固体で排泄する。このため体内の水分を無駄に排泄する必要がなく、陸上生活では有利と考えられる。
排出に見る動物進化
陸上生活においては、尿素を水に溶かし液体として排出するより、水を無駄に失わない固体での尿酸排出の方が有利である。現実の動物が、どのようにアンモニアを変換して排出するかを見ると、動物進化の流れも見えて来る。
両生類と爬虫類は共通の
生物
から枝分かれしている。その後、爬虫類は尿酸排出を獲得し、陸上生活に適応した。爬虫類から進化した鳥類も、この方法を受け継いでいる。
しかし、それらより進化していると考えられる
人類
含む
哺乳類
は、尿素を液体として排出する。これは哺乳類が陸棲の両生類から進化したためであり、その後も尿酸排出を獲得出来ず、今に引きずっているためと言える。
なお、尿酸といえばヒトでは
痛風
という疾病が有名だが、実は尿酸排出をする爬虫類や鳥類も痛風になることが知られている。尿酸にも尿素にも、一長一短があるということである。
応用、用途
医薬品
親水性という特徴を利用すると、
皮膚
に尿素を塗れば、水分子を皮膚に蓄え肌の乾燥を防ぐ事ができる。
現在ではアンモニアを主原料とした化学合成品が薬品として利用されている。
ディーゼルエンジン
現在走っているバスなど
クリーンディーゼル
車では、燃料である軽油のほかに、「
尿素水
」を随時補充する。
クリーンディーゼルで使われている「尿素SCRシステム」は有害な排出ガスを浄化する機構であり、尿素水を高温の排気に噴射することでアンモニアと二酸化炭素に分解させ、発生したアンモニアによりエンジンでの燃焼で生じる有害な
窒素酸化物
を還元し、無害化させるものである。
安全性
適用法令
消防法(危険物の規制に関する政令)
: 該当しない
毒物及び劇物取締法
: 該当しない
労働安全衛生法 (労働安全衛生法施行令)
: 該当しない
船舶安全法(危険物船舶運送及び貯蔵規則)
: 該当しない
航空法
: 該当しない
海洋汚染防止法(海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律)
別表第一 Y類物質 278 尿素及び燐酸アンモニウムの混合溶液
水質汚濁防止法
: 該当しない
化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)
: 該当しない
危険物や毒劇物の適用は受けていないが、火に触れると分解し有害なアンモニアを生じるため、取り扱いには注意が必要である。
危険性
引火点: 不燃性
発火点: (該当資料なし)
爆発限界: (該当資料なし)
有害性
刺激
腐食性: (該当資料なし)
刺激性: 眼、
皮膚
、気道を刺激する
感作性
: (該当資料なし)
毒性
急性毒性
: (該当資料なし)
慢性毒性
: (該当資料なし)
がん原性:
陰性
変異原性
: 陰性
生殖毒性: (該当資料なし)
催畸形性
: (該当資料なし)
神経毒性: (該当資料なし)
標的臓器: (該当資料なし)
規制値
一日許容摂取量
(ADI): (該当資料なし)
暫定耐用一日摂取量(PTDI): (該当資料なし)
急性参照値(ARfD): (該当資料なし)
暴露許容濃度(TLV): 設定されていない
最大許容作業濃度(MAK): (該当資料なし)
環境影響
分解性: (該当資料なし)
蓄積性: (該当資料なし)
魚毒性: (該当資料なし)
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