トランス型不飽和脂肪酸
読み:トランスがた-ふほうわしぼうさん
外語:TFA: trans-unsaturated fatty acids

 不飽和脂肪酸のうち、二重結合に付いている水素が互いに反対側にあるもの。業界人は略してトランス酸、またはTFAと言う。以下はトランス酸と記述する。
目次

排斥運動
 現在、健康に有害であるとして世界中で排斥運動が行なわれている。
 しかし、どのような影響があるのか、どの程度摂取したら良く無いのか等の、疫学的データは、今のところ何一つ存在しない。
 喧伝される情報は、決してうのみにはせず、信憑性をよく見極めて判断するべきである。
 なお、天然には殆ど存在しない人工的に作られる脂肪酸だと言われることがあるが、これは誤りである。

特徴

発生源

加工食品
 マーガリンやショートニングにもトランス酸は含まれている。
 元々は液体である油脂を固めるため「水素添加」工程を施すが、この時に油脂中に発生する。これらはシス型不飽和脂肪酸の一部がトランス型に異性化している。

食肉
 牛、羊、山羊などの反芻動物では、第一胃の中にいる微生物によって作られている。
 牛乳チーズバター、アイスクリーム等の乳製品の脂肪中には平均して5%前後、牛肉や羊肉の脂肪中には平均して5〜10%前後、トランス酸が含まれている。
 こうしてトランス酸は、古くから多くの人々に摂取されてきた。

健康への害

発がん性の疑い
 トランス型不飽和脂肪酸は、長い食経験があり安全性は高いと考えられる。
 天然に無いため体内で代謝されにくく飽和脂肪酸と同様に血中コレステロールを上げるものがあるため健康に悪い、などと事実とは異なる喧伝がなされている。
 また、発がん性の疑いがあるとする者もいるが、これは現時点においては全く証拠がない。

心疾患との関連の疑い
 トランス酸と心疾患との間には、ある程度の相関があるとされている。
 コレステロールを増加させ動脈硬化を招き、これが心臓疾患のリスクを高めると言われている。このため、特に欧米圏では大きな騒動となっている。
 但し、日本のマーガリン等はトランス酸の含有量が比較的少ないため、即座に何らかの対応が必要ということはない。

実際の毒性
 トランス脂肪酸を長期にわたって多量に摂り続けると、飽和脂肪酸と同様、虚血性心疾患になりやすくなると言われている。
 他に2型糖尿病などとの関連も示唆されているが、十分な科学的証拠はない。
 完結に述べれば、トランス脂肪酸であっても飽和脂肪酸であっても、その有害性については有意な差は発見されていないということである。更に言えば、どんなものであれ、脂肪分は摂り過ぎないよう注意するほうが良い、ということになる。

近年の状況

欧米での規制状況
 デンマーク王国では、2004(平成16)年1月1日より、国内の全食品における、油脂中のトランス酸含有量が2%までに制限された。
 米国では、2006(平成18)年1月1日以降、栄養成分表示欄にトランス酸含有量を明記することが義務づけられた。

WHO
 WHOでは、トランス酸は摂取エネルギーの1%未満、約2g程度未満とする旨の勧告を出した。

日本
 日本マーガリン工業会の発表によると、日本人のトランス酸摂取量は、一般的な食生活において、国民一人あたり一日に1.56gで、摂取エネルギーの0.7%程度だとしている。
 内閣府食品安全委員会によると、日本のマーガリンやショートニングは米国のものと異なり、トランス酸の含有量が少なくなる加工をしていると発表している。
 参考までに、アメリカ人では5.8g、EU14ヶ国では男性が1.2g〜6.7g、女性が1.7g〜4.1gとされており、これらと比較しても日本人のトランス酸摂取量は少ない。
 そして摂取量も0.7%程度とWHOの勧告値1%未満であることから、日本人の食生活の現状においては、トランス酸による健康への影響は少ない、又は何らの問題もない、との見解が発表されている。

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