核分裂
読み:かく-ぶんれつ
外語:nuclear fission

 一つの原子核が分裂し、二つ以上の別の核になること。
目次

概要
 一般的には重い原子(ウランプルトニウム等)に中性子を衝突させ、他の複数個の原子にすることをいう。この際、減少した質量分のエネルギーが放出される。

特徴

理論

結合エネルギー
 原子核は、中性子と陽子から構成されており、それぞれ強い相互作用(核力)と呼ばれる強い力で結びついている。
 一方、陽子と陽子の間にはクーロン力という電気的な反発力を持っているが、強い相互作用の方が遙かに強いため、原子核は一つにまとまっている。
 こうして、原子力を一つにまとめるエネルギーを、原子核の結合エネルギーと呼ぶ。

不安定な核
 結合エネルギーという面においては、ニッケルなどの中程度の重さを持った原子は安定しており、これ以上重くまたは軽くなると、一部の例外を除いて不安定となる。
 かくして、ウランやプルトニウムといった重い原子核は不安定となり、分裂して軽い安定した原子核になろうとする傾向が強まる。逆に水素などの軽い原子核は、融合して重い安定した原子核になろうとする傾向が強い。

分裂
 核が不安定とはいえ、それはあくまで比較論の話であり、ウランにしろプルトニウムにしろ、それ自体は安定した原子核を持っていて、そのままで核分裂を起こすようなことはない。
 核分裂を起こすためには原子核が不安定な状態になる必要があり、核を不安定にさせる働きを担うのが中性子である。
 例えばウランの核分裂の場合、ウラン原子核に外部より中性子を与えると、原子核は不安定となって、核は分裂し二つ以上の小さな原子核に変化する。この際に、膨大な量のエネルギーを放出する。
 このエネルギーの大半は、新しく作られた原子核の運動エネルギーとして吸収されるが、最終的には熱エネルギーとして放出される。この熱エネルギーを発電に用いるのが原子力発電ということである。

燃料の条件
 天然に存在し、熱中性子(低エネルギー中性子)で効率良く核分裂するのはウラン235(235U)のみだが、人工物にはウラン233(233U)、プルトニウム239(239Pu)、プルトニウム241(241Pu)などがある。
 このように低エネルギー中性子の衝突で核分裂を起こす物質は、原子番号が偶数で、質量数が奇数であることが必要である。

分裂
 例えばウラン235の原子核は、熱中性子を吸収すると分裂を起こし、数個の高速中性子とγ線、そして約200MeVの熱エネルギーを放出して他の複数個の原子核へと変わる。
 この時出来る核は一定ではなく、質量70〜160程度までの範囲で変化する。

問題
 1グラムのウラン235は石油1.8トン(タンクローリー1/4台分)相当のエネルギーを生み出すと言われるが、核分裂は連鎖的に進行する反応であるため、制御が難しい。
 現在の原子力発電所(の原子炉内)で行なわれている反応であるが、制御を誤ると爆発する危険があるほか、使用済み核燃料の処分など難しい問題も多い。

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