暗黒物質
読み:あんこくぶっしつ
外語:dark matter

 電磁波を出さないため見ることができないが、質量から存在が予言される物質。「ダークマター」。ミッシングマス(失われた質量)ともいう。
目次

概要
 銀河は回転(自転)しているが、銀河中心部分も銀河の端部分も同じ角速度で回転している(=何万年も回転していても形が保たれている)。この事実を証明するために発案された。
 実際に、銀河の明るさから求められる推定質量よりも、銀河の運動から求められる推定質量の方が遥かに大きいことが研究で明らかとなっている。これは、目には見えない質量が大量に存在することを意味している。
 その存在は完全には証明されていないが、暗黒物質は宇宙全体のエネルギー密度の23%、宇宙全体の質量の約90%を構成していると考えられていて、存在を前提に研究が進められている。

特徴

性質
 暗黒物質がどのような形で存在するかは今なお研究中につき分かっていないが、現在は二種類の暗黒物質が考えられている。
 一つは非常に暗くて観測できない天体で、これはダークマター天体、あるいはMACHO(マッチョ)と呼ばれる。もう一つは、電磁波で検出できない粒子でできている存在で、WIMP(ウィンプ)と呼ばれる。
 更に、暗黒物質は「冷たい暗黒物質」(コールドダークマター)と「熱い暗黒物質」(ホットダークマター)とに分けられている。
 暗黒物質の正体そのものは不明であるが、それがどのようなものであるにせよ、分布が偏っていて固まりになっていると見込まれることから、何らかの相互作用が働くものであろうと見られている。

種類
 暗黒物質として、次のようなものが想定されている。いずれも予想に過ぎず、この何れかの可能性も、何れでもない可能性もある。

研究

遠方銀河団

ハッブル
 2007(平成19)年、NASAのハッブル宇宙望遠鏡50億光年彼方の銀河団ZwCl0024+1652(別名Cl 0024+17)に、暗黒物質で出来たリングを発見した
 直径は約260荳光年で、遠方の銀河の姿が、この銀河団による重力レンズで変形する様子を観測し、暗黒物質の有無を観測、これを濃淡で表わしたものを画像として公開した。

直接観測

XMASS
 神岡の地下施設に約1トンの液体キセノン(約-100℃)をタンクに満たし、暗黒物質の直接観測をおこなう施設を建造中である。
 暗黒物質のうち、特にニュートラリーノが検出対象となるが、これは相互作用が極めて弱いことから、大きな原子核を持つキセノンの液体に浸したシンチレータと光電子増倍管で検出しようとしている。
 キセノンタンクは、外部からの放射線バックグラウンドを遮蔽するために約800トンの水タンクに覆われ、この水タンク内に設置される。
 将来的には更に大型化し、多目的な約20トン級の検出器へと拡張する計画であるとしている。

CDMS2
 米ミネソタ大が運営する地下約700mの施設CDMS2が暗黒物質の粒子を検出したと報じられ、2009(平成21)年12月17日に研究チームが発表をした。
 この施設は、暗黒物質の粒子が衝突したときに発生すると予想される僅かな温度上昇を、極低温にした半導体で検出するものである。
 発表では、暗黒物質によると推定される温度上昇を2件観測したが、似た現象を誤って捉えた可能性もあるため発見したとまでは言えないとした。確実に見つかったと判断するには5件以上の現象検出が必要とされている。
 衝突はごく希にしか発生しないため長期間の観測が必要で、かつ類似現象を除外せねばならないなど、観測自体はかなり難しいものとされている。

AMS
 国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されたアルファ磁気分光器(AMS)を用い、サミュエル・ティン米マサチューセッツ工科大学教授らが陽電子の観測を実施、最初の成果が2013(平成25)年3月3日にCERNで発表された。
 発表内容の趣旨は、多くの陽電子が観測されたというものである。
 ダークマターの候補は、上述のようにMACHOとWIMPとに分けられているが、うちWIMPが対消滅する過程でγ線や電子/陽電子などを生成すると予測されている。つまり、今回陽電子が見つかったということは、ダークマターがWIMPである可能性が高まったということになる。

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