DNA
読み:でぃーえぬえー
外語:DNA: deoxyribonucleic acid

 デオキシリボ核酸。デオキシリボヌクレオチドのポリマー(重合体)のこと。原核生物真核生物を問わず、あらゆる生物細胞の遺伝子を記述するのに使われている。
目次

概要

構造
 DNAは、塩基燐酸で形成される。
 糖はデオキシリボースである。
 
 塩基が暗号文字となり、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類の塩基からなる。
 糖であるデオキシリボースの3'位と5'位の炭素を燐酸を介してエステル結合で結び長い直鎖上分子を作る。こうしてA-T、G-Cの相補的な関係に基づき二本鎖で構成される。
 このように、常に塩基がペアであることからこれを塩基対といい、英語ではbase pair、略してbpという。DNAやRNAの分子量を表現する単位として、bpはよく登場する。

人間のDNA
 人間のDNA構造は、1ゲノムで約30億塩基対(細胞は1ゲノム2セットの2倍体なので、染色体合計46本で約60億塩基対)の超高分子である。
 46本の染色体のDNA総延長は約2mである。
 この分子により約2万7千個の遺伝情報を担っている。

特徴

設計図
 一般人向けの解説でよく、「DNAは生物の設計図」などと説明されるが、これは正確ではない。
 DNAが完全に同一の一卵性双生児が全く同一では無いことを見れば分かるが、DNAは生物の図面などではなく、言うなれば「物語のシナリオ」に近い。
 DNAの情報がどう振る舞うかは環境などの外来因子などの影響もあって非常に複雑である。生物は遺伝子が全てでは無いのである。

塩基の種類
 なぜDNAを構成する塩基が4種類で、しかもA、T、G、Cなのか、という点については、今なお分かっていない生物の謎の一つである。
 理論上はこれ以外の塩基を使うことも可能なはずで、実際に2002(平成14)年に理研が人工的な塩基としてSとYを合成し、これに従来の塩基を繋げて人工的な遺伝暗号を作成、通常の生物の遺伝暗号に存在せず使用しない3-クロロチロシンというアミノ酸を持った蛋白質の合成に成功している。

安定性
 DNAは遺伝情報を記録するものであるため、そうたやすく変化しては困る。従ってDNAは安定でなくてはならない。
 このため、RNAと比べて糖と塩基の違いが存在する。
 糖はRNAがリボースであるのに対し、DNAは2'位の水酸基が水素基に置換されたデオキシリボースである。RNAの2'位は水酸基であるため加水分解を受けやすく反応性も高く不安定だが、DNAでは水素基となり安定となっている。
 また塩基も、RNAがAUGCなのに対し、DNAはATGCを用い、A-TおよびG-Cは互いに水素結合を形成し二本鎖を作る。このため、塩基が何らかの理由で変化してしまっても、もう片方から判断して修復することが可能で、これにより変化しにくい安定した情報維持を可能としている。

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