サリン |
辞書:科学用語の基礎知識 化学物質名・毒物編 (NSUBNP) |
読み:サリン |
外語:GB: Sarin |
品詞:名詞 |
毒ガスとして使用される神経性ガス。毒ガスと呼ばれるが、実は常温では無色無臭の「液体」である。
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概要 |
基本情報 |
サリン
誘導体、関連物質の例 |
性質 |
起源 |
1938(昭和13)年にドイツで殺虫剤の製造過程で発見された神経中毒を引き起こす化学兵器で、ドイツの科学者ゲルハルト・シュラーダー(Gerhard Schrader)博士率いるチームが開発した。
Sarinはそのドイツにおけるコードネームで、名前は開発者の名前であるSchrader、Ambros、R.drigerの頭文字と、van der Lindeのinから取られた。
ドイツ(Germany)で開発されたことからアメリカでは「G剤」と呼ばれ、サリンはそのうちコードネームGBと呼ばれた。
毒性 |
サリンは皮膚や粘膜から吸収される。
体内に取り込まれると急速に神経伝達に関する酵素アセチルコリンエステラーゼを阻害して神経麻痺を起こし、嘔吐・痙攣(けいれん)・縮瞳などの症状を示す。
致死量(約0.5mg)を吸収すると15分以内に死に至る。また、衣服に付着しただけでも30分〜40分で浸透し、皮膚呼吸によって体内に侵入するため、早期に治療しなければならない。
サリンの害は、目が見えなくなったり悪くなる。
サリンは「非可逆的コリンエステラーゼ阻害薬」の一種で、コリンエステル類分解酵素コリンエステラーゼを阻害し、神経伝達物質アセチルコリン等の分解を阻害する。そのため刺激が止まらない状態となり、結果として痙攣、縮瞳、発汗、骨格筋の麻痺等を経て昏睡、やがて死に至る。
特徴 |
製造 |
サリンは、ホスゲンなど他の毒ガスと比較して30分の1から40分の1の重量で済む上、その即効性から非常に有効な化学兵器である。
ただし、サリンは非常に複雑な分子構造を持つため合成が難しく、合成には高度な設備を必要とする。
冷戦下では米ソ、特に旧ソ連が大量に製造していた。
反応性 |
熱分解されやすい。化学兵器のミサイル弾頭に使うためには、耐熱技術が必要である。
水によく溶け、水で徐々に加水分解される。また強酸または強アルカリ下では速やかに加水分解される。
沸点は147℃だが、気化しやすい。揮発性が高いため、撒かれた後、強風や雨天では土中では効果が持続しない。
加水分解する場合、次のようになる。
メチルホスホン酸イソプロピルも、更に分解する。
テロル等 |
これまで、サリンが使われたテロル等は次の通り。
いずれも、オウム真理教により日本国内で起こされた。
日本では、オウム真理教による「松本サリン事件」「地下鉄サリン事件」が有名である。
オウム真理教の化学プラントで作られたとされているが、実際には「北朝鮮」で作られたものが撒かれた可能性が高いと考えられている。
報道によれば、支那共産党軍の特殊部隊が2008(平成20)年11月と2009(平成21)年2月、遼寧省丹東周辺の北朝鮮国境付近で北朝鮮側から風が吹く時に空気中の化学物質を調査したところ、1m3あたり0.015〜0.03マイクログラムのサリンが偶然検出された、としている。
これ以降、共産党軍は、監視を強めているとしている。
治療 |
治療薬に、副交感神経遮断剤の硫酸アトロピンや再賦活薬の沃化プラリドキシム(PAM)があるが、劇的な効果が期待できるわけではない。主として対症療法として使われる。しかも、サリンは吸入から5時間を越えてしまうと解毒することができない。治療はスピード命である。
日本でのサリン中毒は、数えるほどしかない。中でも有名なのは、1995(平成7)年3月20日に発生した地下鉄サリン事件である。この時、西日本などにあったPAMが東海道新幹線や飛行機などを使って次々と東京まで運ばれ、迅速な措置をもって被害者の命を救うことができた。
PAMは、陸上自衛隊がサリン攻撃への対応のため保有していたことに加え、製薬会社が事務所や病院においていたものを新幹線で東京まで運ぶなど早い対応をしたことも忘れてはならない。
更に、PAMは赤字の医薬品である。日本では住友製薬が製造していたが、作るほど損をする商品である。しかしグループ会社の住友化学が有機燐系の農薬を作っていたことから、毒を製造する以上は解毒剤も作るのが企業の責務である、として赤字を押して製造した商品だった。これがサリン事件の時には東京に運ばれ、命を救ったのである。
安全性 |
適用法令 |
サリンは猛毒だが、一般的には流通していないので、毒物及び劇物取締法など一般的な化学物質の規制ではなく、他の法律によって規制されている。
危険性 |
有害性 |
環境影響 |
リンク |
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