AACS
読み:エイエイスィーエス
外語:AACS: Advanced Access Content System

 Blu-ray DiscHD DVDなどで採用された、光ディスクのパッケージソフト向けコピー防止技術(著作権保護規格)のこと。
目次

概要
 AACS License Administrator(AACS LA)が策定した。
 2005(平成17)年4月14日(現地時間)に技術仕様ドラフトVer.0.9が公開された。

特徴

暗号鍵
 コンテンツ鍵・デバイス鍵などの複数の鍵を使い、暗号化には128ビットAESを用いる。

暗号突破
 しかしこの技術も、2007(平成19)年1月頃に破られるケースが表われ始め、2007(平成19)年2月には遂に突破された。

暗号は突破された
 Doom9という海外のフォーラム(掲示板のようなもの)に常駐していたハッカー「arnezami」により、AACS DRMの復号過程で使用されるキーが発見された。
 その方法は、ハックしたわけでもクラックしたわけでもなく、ソフトウェアをリバースエンジニアリングしたわけでもない。コンテンツが再生されている時の、メモリー上のデータの動きを追い、もって復号に必要なキーを見つけ出した、とされている。

暗号の崩壊後
 DVDの場合、CSSが破られた後に普及が始まった。
 Blu-ray DiscHD DVDも、2007(平成19)年時点ではお世辞にも普及している状態とは言い難く、簡潔に言って革新的採用者つまりイノベーター以外は手を出していない状態である。
 普及の前段階となる、次に手を出す層であるアーリーアダプター(初期に購入し、もって普及率を上げる人たち)が待っていたのは、AACSが破られる日であった。なぜなら、バックアップできないような「変なもの」を、彼らは金を出してまで買おうとは思わないからである。基本的に一般の人は、レンタルショップで借りてきてダビングしようとするので、それが出来なければ売れることはない。
 従って、今後は、アーリーアダプターも「安心して」Blu-ray Discに手を出す可能性があり、もって普及する可能性がある。

Blu-ray DiscとHD DVD
 しかし突破が早すぎたため、これを理解しないコンテンツ業者側の動きも注目されるところである。
 HD DVDはAACSだけで他に選択肢がなかったが、自然消滅した。
 Blu-ray DiscはAACS以外にも、ROM Mark、BD+といったAACSが破られた後の対応策がある。

運用基準の問題

運用規定
 2005(平成17)年12月、AACSを採用するコンテンツ事業者や機器メーカーが遵守するCompliance Rules(運用規定)が定まった。
 この運用規定制定の最大の焦点はアナログ出力に関するもので、利用者を無視した制限規定が今後波紋を呼ぶと見られている。

争点と結論
 ここで言うアナログ端子とは、D端子コンポジット映像端子(AV端子)、S端子などである。
 ハリウッド大手、米Warner Bros. Studios社は、コピー防止技術を持たないアナログへの出力について強行に反対した。そして、解像度制限ビット「Image_Constraint_Token(ICT)」の値に応じ、アナログ端子へ出力する映像の解像度を制限する機能(ICT機能)の搭載を機器に義務づけるべきと主張した。
 しかし、日本ではD端子のみを持つテレビが多い。この規制が義務化されると、既存の大型ハイビジョンテレビで次世代光ディスクが観られなくなってしまうため、議論が紛糾した。
 結果として、双方「妥協」により、次のような絵結論に至っている。
  1. AACS準拠の全機器は、ICT機能に対応する。
  2. 各国の放送運用状況により、パッケージメディアでは、コンテンツ提供者は2010(平成22)年までICT機能を有効にしない。
  3. 2011(平成23)年以降に製造される機器は、アナログ端子にはSDTV映像のみしか出力できないようにする。
  4. 2014(平成26)年以降に製造される機器は、SDTV映像/HDTV映像問わず、アナログ端子に映像を出力してはならない。

ICT
 「Image_Constraint_Token(ICT)」は、DTCPで規定されたフラグの一つである。
 ICT=0に設定されたコンテンツは、アナログ端子へHDTV映像の出力が禁止され、SDTV映像にダウンコンバートされたもののみが出力できる。ICTの値を0にするか1にするかは、原則としてコンテンツ提供者の自由裁量である。
 尤も、この機能を使うコンテンツ提供者がどれほど多く現われるかは不明である。米映画会社でも、The Walt Disney Company、Twentieth Century Fox、Sony Pictures Entertainmentといった大手は、使用しない旨を明言している。
 またICT=0とすれば、客から返品される恐れが高まり、そのような「危険な」ソフトウェアを量販店は扱わない可能性も指摘されていることから、どのみちICTの運用は不可能だろうという見方がされている。

アナログ端子廃止
 それでもハリウッド大手は、アナログ端子がある限り不正コピーはなくならない、という主張を取り下げていない。彼らはアナログ端子をこの世からなくすことを目標としている。
 そこで、第一段階として2011(平成23)年1月1日以降の製造機器については、ICTの値に関わらずHDTV映像をアナログ端子に出力できないことにし、実際に以降の新製品では、標準画質(D1:480i)に画質が落とされるようになった。
 更に、2014(平成26)年1月1日以降の製造機器については、SDTV映像を含め、アナログ端子への映像出力の一切を認めないことにした。かくして、将来的には光ディスク媒体の出力は、全てHDMIなどのディジタル端子となることになった。

アナログ廃止問題
 しかし、HDMIなどを持たないテレビが広く普及している日本では、アナログ廃止の影響は計り知れないものがあると予想される。アメリカではHDMIが普及しているが、日本ではD端子までしか持たないテレビも少なくない。
 それ以前の問題として、テレビ全体数で見れば、コンポジット映像端子S端子しか持たないテレビの方が圧倒的に多いのである。
 ICT機能さえも導入が懐疑的であるのに、アナログ廃止が本当に実現されるのかどうかは不明である。どう見てもICT機能以上にハードルは高く、消費者や大手小売店がそのようなものを許すとは思えないからである。

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