H-IIBロケット3号機
読み:エイチトゥービー-ロケット-さんごうき
外語:H-IIB F3: H-IIB Launch Vehicle No.3
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
により開発された
H-IIBロケット
の3号機で、本番 第2号機。
目次
概要
諸元
ロケットの仕様
ペイロード(積載物)
打ち上げ
気象
計画
沿革
情報
飛行計画
変更点等
落下試験
再開発
誘導制御計算機(GCC)
概要
H-IIBロケットの第3号機であり、日本の大型液体燃料ロケット第55号機である。
「H-IIB・F3」とも呼ばれる。
2012(平成24)年7月21日に
種子島宇宙センター大型ロケット発射場
の吉信第2射点より発射方位角108.5°で打ち上げられ、成功した。
諸元
ロケットの仕様
形式
一段目:
LE-7A
×2基(
液水液酸エンジン
)
二段目:
LE-5B-2
(液水液酸エンジン)
一段目固体ロケットブースター:
SRB-A3
×4基
フェアリング
5.1m外径 HTV専用フェアリング (5S-H型)
ペイロード(積載物)
こうのとり3号機
(HTV3)
打ち上げ
気象
ロケット打ち上げ時の天候は雨、西北西の風2.3m/s(2m/cBeat)、
気温
27.1℃であった。
計画
打ち上げ時刻は、国際宇宙ステーションの軌道により決定されており、次のように発表されていた。
打ち上げ予定日時: 2012(平成24)年7月21日11:06:18(@129)
打ち上げ予備期間: 2012(平成24)年7月22日〜2012(平成24)年8月31日
予備期間中の打ち上げ日及び時刻については、国際宇宙ステーションの運用に係る国際調整により決定する。
沿革
2012(平成24)年7月21日11:06:18(@129): リフトオフ
X+14分53秒: HTV3 分離、打ち上げ成功
情報
飛行計画
X+0秒: 発射(リフトオフ)
X+1分56秒: SRB-A 燃焼終了
X+2分6秒: SRB-A第1ペア 分離
X+2分9秒: SRB-A第2ペア 分離
X+3分38秒: 衛星
フェアリング
分離
X+5分45秒: 第1段主エンジン 燃焼停止(MECO)
X+5分52秒: 第1段・第2段 分離
X+5分59秒: 第2段エンジン始動(SEIG)
X+14分2秒: 第2段エンジン 燃焼停止(SECO)
X+14分52秒: 「こうのとり」3号機分離、打ち上げ成功
X+1時間39分1秒: 第2段エンジン第2回始動(SEIG2i)
X+1時間40分6秒: 第2段エンジン第2回燃焼停止(SECO2)
変更点等
今回から、原則として極低温点検(F-0)を削除 (H-IIAではF13から削除している)
H-IIB・F2打ち上げ時に確認されたSRB-A分離事象対策としてFLSC-IIホルダ設計変更を実施
アビオニクス機器の再開発(後述)
第2段制御落下実験は前回同様に実施され、成功した。
落下試験
衛星を分離し打ち上げに成功した後、前回のH-IIB・F2打ち上げ時と同様、第2段機体の制御落下実験を実施する。
「こうのとり」分離後、地球を一周回してほぼ同じ場所に戻ってから、第2回燃焼を実施して大気圏内に再突入させ、南太平洋に制御落下させる。この実験は、
スペースデブリ
(宇宙ゴミ)削減のための技術開発であり、安全に地球大気圏内に突入させ処理することを目的としている。
前回の結果は良好であったことから、今回は、再現性も含むデータ取得のための実験として実施される。
再開発
H-IIAロケット
で開発されH-IIBロケットでも使用しているアビオニクス機器の内部で使用している部品が枯渇したことから再開発が実施され、「H-IIB・F3」から適用された。
以下、機器名称はJAXAの広報による。
第2段
第2段誘導制御計算機(GCC)
慣性センサユニット(IMU)
第2段電動アクチュエータコントローラ
第1段
第1段誘導制御計算機(GCC)
その他
データ収集装置
テレメータ送信機
搭載カメラ
搭載ソフトウエア
アビオニクス機器の再開発に伴うリスク低減のため、原則としてシステム設計を変更しないことを前提に開発を進め、更に各種システム試験を実施してアビオニクスシステムとして問題無いことを確認するものとされた。
誘導制御計算機(GCC)
新しい誘導制御計算機(GCC)はNECの開発である。
従来のH-IIAとH-IIBで採用されていた旧GCCは、NEC製32ビットMPUであるV70の宇宙仕様品が採用されており、ここで
リアルタイムOS
のRX616が稼働していた。V70は、演算速度が2DMIPSで、パーソナルコンピューターでは
i386
と同世代のMPUだった。更に以前の、H-IやH-IIのIGCと比して約6倍以上の性能があった。
今回開発された新GCCは、JAXAが開発した64ビットMPUの
HR5000
(HIREC製)が採用された。80MHzで稼働させて演算速度は29DMIPSであり、ここでJAXAが開発した
μITRON
4.0準拠のリアルタイムOSであるTOPPERS/HRPが動作している。
ハードウェア的にも小型軽量化のほか、コンパクトPCIの3U規格を採用するなど汎用規格の導入がなされている。
今回採用され成功した新GCCは、今後のH-IIAとH-IIBだけでなく、開発中の
イプシロンロケット
ほか、他のロケットにも採用されることが想定されている。
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