羊水
読み:ようすい
外語:amniotic fluid

 妊娠中の子宮内、胎児を包む羊膜の中を満たす液体。
目次

概要
 胎児は、この中に浮かび、一本の臍帯によって母親の胎盤と繋がっている。
 こうすることで外界からの衝撃を避け、更に母体などと癒着することによる畸形を防止できる。また液体中にいるため胎児は自由に運動できると同時に、運動の衝撃が直接子宮壁に及ばないようにし、母体を保護することができる。
 そして羊水の温度はほぼ一定に保たれているため、胎児を保温する効果がある。さらに、胎児は羊水を嚥下しており、栄養的な側面もある。

特徴

成分
 ヒトの場合、液色は淡黄色、液性は弱アルカリ性。98%以上が水分で、残り2%未満が胎児由来の成分である。
 胎児成分は、胎児の尿や皮膚細胞、皮脂などである。
 羊水は胎齢8日目頃から産生されはじめ、成長に応じて増加する。

分泌
 羊水の水分は、母体血液からの滲出や羊膜上皮からの分泌がによるが、妊娠後期には胎児尿や呼吸様運動の際に分泌される肺胞液など胎児由来成分が増えてくる。
 この羊水が内に流出することを破水という。

羊水検査

方法
 羊水検査は出生前診断の一つで、針を刺し子宮内の羊水を20ml程度採取し、ここから胎内の赤ん坊の遺伝子検査をするものである。
 羊水検査は15週より可能だが、多くは16週から17週に実施する。これは、羊水の量が充分に増えること、それにともない針が赤ん坊に当たる危険を減らすことが理由にある。
 この検査によって、染色体が3本あるトリソミーや染色体が1本しかないモノソミーなどの染色体異常を出生間に確認することができる。
 この検査のリスクとしては、流産の可能性が0.2%前後(1000人中2人前後)あること、検査後に出血または破水などで入院する例が1%程度あること、また針を刺すためここからの感染症などが生じることもある。
 また、検査精度は99%以上あり、ほぼ確実にダウン症などを確認することができるが、100%ではない。染色体の異常が微小な場合、検出できないことがある。またこの検査は「染色体異常」と「開放性神経管奇形」のみに特化しており、それ以外の病気や奇形については確認できない。
 費用は、健康保険が適用できないため自費となる。病院により価格は異なるが、10万円から16万円程度が相場である。

判明する主な先天性疾患
 染色体異常は、重度の発達の遅れ、内臓の奇形などが生じる。13/18トリソミーは胎児期や新生児期に死亡することが多いが、ダウン症は比較的長命である。このような並の人間にはとても育てきれない重病の場合は人工妊娠中絶手術が勧められる。
 染色体数異常のうち、ターナー症候群はほぼ流産するが、まれに産まれた場合も、低身長や不妊症などを生じる。クラインフェルター症候群は、流産は少ないが、高身長や不妊症を生じる。
 開放性神経管奇形とは、妊娠初期に胎児の神経管が形成されず、胎児の脳や脊髄に障害が生じている状態をいう。無脳症

検査期間と中絶
 簡易的なFISH法は約1週間、G-band法は胎児の細胞を2週間培養してから実施するため3〜4週間必要である。
 もしダウン症などが判明し、中絶をすると決めた場合、中絶が可能な期間は、母体保護法により妊娠21週6日までである。
 羊水検査を17週に受けた場合、3週間後の20週に陽性と結果が出され、1週間以内に結論を出すことになる。
 中絶の入院期間は3〜5日である。中絶も健康保険が適用できないため自費となり、必要な費用は30〜50万円である。手術後には、死亡診断書の提出と、胎児の火葬が必要となる。
 なお、妊娠4ヶ月(85日=12週目)以降の中期中絶で、かつ経済的理由による人工妊娠中絶ではない場合には、健康保険より出産育児一時金(42万円または39万円)が支給される。健康保険における出産とは、85日以降の出産、死産、流産、人工妊娠中絶すべてを含んでいる。支給されるかどうかは事情次第であるが、無事に支給されれば、実質的な費用は火葬費やお骨の埋葬費などのみとなる。

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