無脳症
読み:むのうしょう
外語:anencephaly

 胎児の中枢神経系疾患の一つ。先天的な頭頚部畸形の一つで、殆どの組織が欠如する症状。神経管欠損の中では最も多い。言うまでもなく致死性である。
目次

概要
 体は赤ん坊らしく成長しているにも関わらず、頭部は殆ど形成されない。
 額から上の頭蓋骨が存在せず、さらに眼球の突出や欠落、口蓋裂なども見られることが多い。露出した神経組織は薄い膜で覆われ、周囲の頭髪皮膚に繋がっている。

特徴

脳の量
 無脳症という字面だけを見ると全く脳が無いようにも見られるが、その病態は様々である。
 大脳はもちろん脳幹も欠損し死産する患児から、部分的に大脳と大脳皮質が形成され脳波も観測できる患児まである。
 後者では、大脳の大部分と小脳の一部を欠くのがその病態である。尤も、分娩しても長くは生きられないのは、どの程度の症例でも該当する。
 呼び分ける時には、大脳のほぼ全てを欠くものを(狭義の)無脳症、ある程度の脳の残存が見られるものを無頭蓋症という。

病因と脳の変化
 近年は晩婚化と高齢出産が進んでいることもあり、無脳症など子供の先天性疾患は増加傾向である。
 研究により、妊娠4週間程度までの神経管前部の閉塞などが病因であることが明らかとなっている。
 これに伴い、一旦形成された大脳が退化することも観測されている。
 概ね4ヶ月程度までは大脳のある程度の発育が見られ、5ヶ月頃より大脳、小脳部分が退化していく。

病態
 延髄の下半分が存在すれば、嚥下や啼泣が見られる。
 大脳皮質が痕跡程度でも残存する無頭蓋症では、音刺激や痛覚にも反応する。痛みを感じたり、意識のある可能性も指摘されている。
 モロー反射などの原始反射も見られるとされる。

寿命
 その多くは死産だが、脳幹に機能を有する脳組織が残存すれば、胎児期には生命機能を保つことができる。
 その後は、残存する脳機能の程度により、出生して数分の短い生涯を終える患児から、1〜2週間程度生き延びる患児まである。

診断
 超音波検査(エコー検査)で出生前診断が可能である。
 母体の血清、または羊水から血清蛋白の一種α-フェトプロテイン(AFP)が検出される。

治療
 治療法は存在しない。

対応
 日本では現在、超音波検査や内診で生まれる前から診断可能で、無脳症と診断された時点で、人工妊娠中絶手術などが行なわれることになる。
 なぜなら、分娩しても生きられない、生まれても必ずすぐに死亡すると分かっている胎児を10ヶ月間も胎内で発育させ、母体を危険に晒す意味は無いと考えられているためである。

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