硫化水素
読み:りゅうかすいそ
外語:Hydrogen sulfide

 火山ガスや鉱泉などに含有する成分。毒性が強い。
目次

概要

基本情報

誘導体、関連物質の例

性質

発生
 火山などの他には、屎尿処理場、下水処理施設、廃棄物最終処分場などで発生する。
 実験室では硫化鉄(FeS)に塩酸(HCl)を加えて発生させる(FeS+2HCl→FeCl2+H2S↑)。
 この物質は空気より重い気体なので、低いところに溜まりやすい。
 火山に近い温泉に見られる硫黄泉などでは温泉水中に硫化水素が見られ、これが乳白色の温泉の原因となる。このように自然でも簡単に発生してしまう単純な構造の物質であるが、毒性が強いことから注意が必要である。

反応
 可燃性で、空気中では青色の炎を上げて燃え、二酸化硫黄になる。
 液体の硫化水素は有機化合物の溶媒として使われ、有機合成では還元剤として頻用される。
 硫黄を含む有機物が腐敗・分解された時に発生する。実験室での製法は硫化鉄に硫酸を加える(弱酸の遊離反応)。
 特定悪臭物質に認定されており、「腐った卵臭」があるとしている。
 日本では、2008(平成20)年3月頃から硫化水素による自殺が毎日のように発生し、社会問題となった。テレビや新聞などのマスコミが連日報道するため、この自殺方法を知った者が次々と後に続いているようである。自殺幇助の罪と考えられるため、日本のマスコミは一度裁かれる必要があるだろう。

特徴

中毒作用
 有毒。吸入すると、肺水腫を起こすことがある。
 中枢神経系に影響を与える。高濃度では、中枢抑制、呼吸抑制を起こし、窒息、意識喪失、最悪の場合で死に至る。
 ヘモグロビンに影響が及ぶと全身に酸素を送ることができなくなり、結果として窒息と同様の症状を示す。
 低濃度では臭気があるが、高濃度では嗅覚が麻痺し臭いを感じなくなるので注意が必要である。

濃度ごとの特徴
 濃度ごとの特徴は次の通り(薄→濃、1000ppm=0.1%)。
濃度特徴資料
0.00041ppm嗅覚閾値嗅覚測定法安全管理マニュアル
0.02〜0.2大気中濃度の規制基準悪臭防止法施行規則 別表第一
10立入禁止濃度労働安全衛生規則 第五百八十五条
1000〜即死MSDSでは800ppm(LC50、5分)
 1000ppm以上では、一呼吸、長くても1分以内に意識を喪失するとされる。
 実際に、温泉の駐車場脇の窪地で高濃度の硫化水素が発生し、一家全員が死亡するという、痛ましい事件も発生している。
 なお、「即死」とはされているが、実際にすぐに死ぬわけではない。硫化水素の死因は実際的には窒息死であるので、ここから実際に死ぬまでには数分かかると思われる。

箱根大涌谷
 かつて、箱根の大涌谷には「硫化水素感知判別表」なる看板が立てられていたとされている。
 その内容から、「不謹慎だ」などの苦情を受ける等し、今では撤去されてしまったそうである。
 
 注意
 この附近は、火山ガス(有害ガス)の噴出地域
 です。危険ですから 立ち止まったり、食事など
 をしないよう充分注意してください。
 硫化水素感知判別表
硫化水素濃度感知度避難基準
(ガスのこさ)からだにかんずるていどどうしたらよいか
15〜8PPM気持のわるいにおいがしますなるべく立ちどまったりしないでください
280〜120〃においを強く感じますここからとおざかってください
3200〜300〃においは強くないが 、はな、のど、に強いいたみを感じますここから「ただちに」とおざかってください
4500〜700〃中毒をおこします覚悟してください
51000〜1500〃死亡しますあきらめてください
 神奈川県箱根 公園管理事務所
 神奈川県小田原保健所
 この最後があまりにも画期的だったためVOWで紹介され、その影響で抗議が殺到。最後は撤去されることになったようだ。
 実際、硫化水素は危険で、火山で発生した硫化水素で死亡した例には枚挙にいとまがない。中毒を起こす危険性があるが故に立てられた看板であり、「不謹慎」とされた表の下の方は客観的・科学的に正しい。とはいえ、「死ぬ」と書いてなければ死人は出ない、「絶対安全」と言えば手抜きでも事故は起こらないという言霊を信仰し科学を解さない人達が多い我が国ではこのような看板は許されないのであった。なお、硫化水素は火山の近くなど、自然界に多く存在し、人工的に作られた硫化水素と毒性は変わらない。

安全性

適用法令

危険性

有害性

環境影響

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