制御棒
読み:せいぎょぼう
外語:control rod

 原子炉の出力を調整するために炉心に入れられる、中性子を吸収するような物質(硼素カドミウムハフニウム、ガドリニウムなど、またはその化合物)で作られた棒。
目次

概要
 核分裂は、中性子がウランなどの燃料に衝突して起こるので、制御棒の出し入れによって炉内の中性子数を変え、核分裂の速度を調節する。
 制御棒は燃料集合体の間に入れられ、原子炉を起動させるときは燃料集合体に挿入されている制御棒を抜く。緊急時には制御棒を速やかに燃料集合体に挿入し、原子炉の運転を停止させる。
 制御棒には、出力制御に使う粗調整棒や微調整棒、原子炉を緊急停止するときに使う安全棒などがある。

特徴

本数
 原子炉には、数百本の燃料棒が挿入され、ここに、百本程度の制御棒が挿入される。
 本数は炉によって様々だが、例えば柏崎刈羽原子力発電所7号機は、784本の燃料棒に185本の制御棒が挿入される仕組みになっている。
 原子炉は、燃料を燃やすのに適した規則正しい配列で燃料棒が並べられるようになっていて、かつ燃料棒の間には隙間がある。この隙間に、必要に応じて制御棒が射し込まれるようになっているのである。

挿入

挿入方法
 制御棒の挿入方法はいろいろあるが、稼働時には上に持ち上げておき挿入時は下に下げる方法と、稼働時は下に下げておき挿入時は上に持ち上げる方法とが、主に考えられる。
 一般には、重力に逆らう下から挿入するタイプより、重力に従う上から挿入するタイプの方が安全だと言われており、世界的にも上から挿入するタイプが一般的と言われている。
 万が一の事態に陥り制御棒の動きを制御出来なくなった場合、重力で抜け落ちてしまうよりも、重力で炉心に落とした方が安全だと考えられる。従って、フェイルセーフの観点からも、上から挿入する方式がよいと言われている。
 ただ、何らかのトラブルで制御棒が変形するような事態になれば、どちらであっても制御が効かなくなる点は大差がない。

上から挿入する方式
 上から挿入する方式では、原子炉稼働時は制御棒は上に持ち上げられ、電磁石で保持される。
 緊急時は電磁石の電源を手動または自動で切ることで、制御棒は重力で自由落下し、原子炉内に挿入される。もって核分裂は抑制され、原子炉は動作を停止する。

下から挿入する方式
 日本にも、下から挿入するタイプの原子炉は多数存在する。
 例えば北陸電力の志賀原子力発電所や、東京電力の福島第一原子力発電所などで採用されているのが有名だが、いずれも検査中などに制御棒が抜ける事故が発生している。
 両者共に、軽水炉のうち沸騰水型原子炉(BWR)と呼ばれるタイプである。原子炉内で冷却水を沸騰させ、そのままタービンに送られるが、水蒸気は上に上がるため水分を除去する湿分分離器は炉心上部に設置せざるを得ない。従って、物理的な制限から制御棒は下から挿入することになる。

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