プルトニウム238
読み:プルトニウム-にひゃくさんじゅうはち
外語:238 Pu
プルトニウムの同位体の一つ。
情報
- 記号: 238Pu
- 原子番号: 94
- 質量数: 238 (陽子94、中性子144)
- 天然存在比: ごく微量
- 半減期: 87.74年
- 比放射能: 6.32×1011 (6321億Bq/g)
- 比放射能の逆数: 1.58×10−12
- 崩壊の種類:崩壊後生成物
- α崩壊 → 234U (ほぼ全量)
- 自発核分裂(SF)
- 32Si核放射 → 206Hg
- 28Mg+30Mg核放射 → 180Yb
- 主な由来
- 238U (2β−崩壊) 半減期44億6800万年(確率2.2×10−10%)
- 242Cm (α崩壊) 半減期162.79日
- 238Np (β−崩壊) 半減期2.117日
概要
人為的に合成されたプルトニウムの中で、最初の同位体である。
この同位体は、核分裂は殆どせず、ほぼ100%の確率でα崩壊によりウラン234(234U)となる。それ以外には、ごくごく稀に、自発核分裂、あるいは二種類のクラスター崩壊のモードが存在する。
現在では、軽水炉から得られる237Npに中性子線を照射して238Npにし、このβ崩壊で238Puを得る方法が主流である。
特徴
原子力電池
放射性同位体のα崩壊を熱源とする発電機が、原子力電池である。
多くのものは、プルトニウム238の酸化物を用いる。これは、プルトニウム238の崩壊エネルギーが比較的大きく効率的に発電できること、その崩壊は殆どがα崩壊であり、γ線や中性子線などが殆ど放出されないため遮蔽がしやすく、放射線による機器への損傷が少ないため利便が良いことによる。
宇宙探査機のように、太陽電池による発電が困難または不可能な場合、原子力電池を搭載することが多い。
- パイオニア10号 ‐ 原子力電池SNAP-19を4基 (最大出力155W)
- パイオニア11号 ‐ 原子力電池SNAP-19を2基 (木星到着時出力144W)
- ボイジャー1号 ‐ 原子力電池RTGを3基 (発射時点で約470Wの直流30V)
- ボイジャー2号 ‐ 原子力電池RTGを3基 (発射時点で約470Wの直流30V)
生体への影響
科学技術庁告示第五号 平成十二年科学技術庁告示第五号(放射線を放出する同位元素の数量等)における、プルトニウム238の実効線量係数(ミリシーベルト/ベクレル)は、次のとおりである。
- 吸入摂取した場合 (不溶性の酸化物以外の化合物) 3.0×10−2
- 吸入摂取した場合 (不溶性の酸化物) 1.1×10−2
- 経口摂取した場合 (硝酸塩及び不溶性の酸化物以外の化合物) 2.3×10−4
- 経口摂取した場合 (硝酸塩) 4.9×10−5
- 経口摂取した場合 (不溶性の酸化物) 8.8×10−6
つまり、硝酸塩及び不溶性の酸化物以外の化合物10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は2.3ミリシーベルト、同量を吸入摂取した場合は300ミリシーベルトである。
プルトニウムはかなり放射能が強いが、経口の場合、消化吸収されないため便として出てしまえばそれで終わりという特徴もある。
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