酸素
読み:さんそ
外語:O: Oxygenium

 16族(古い族名で6B族)の酸素族に属する典型非金属元素
目次

情報

基本情報

一般情報

原子情報

物理特性

同位体
 質量数は、12から28までが確認されている。安定同位体は三つある。
 酸素は殆どが質量数16だが、安定同位体として17、18のものも知られている。
同位体核種天然存在比半減期崩壊崩壊後生成物
12O 2陽子放射10C
陽子放射11N
13O β+崩壊13N
14O1.177分β+崩壊14N
15O2.037分β+崩壊15N
EC崩壊15N
16O99.757%安定核種(中性子数8)
17O0.038%安定核種(中性子数9)
18O0.205%安定核種(中性子数10)
19O26.91秒β崩壊19F
20O13.51秒β崩壊20F
21O β崩壊21F
22O β崩壊22F
23O β崩壊23F
24O β崩壊24F
25O   
26O 中性子放射25O
27O 中性子放射26O
28O 中性子放射27O
 安定核種に対し、質量数が大きすぎるまたは小さすぎる場合は複雑な崩壊となり、質量数が小さいと陽子放射、大きいと中性子放射が同時に起こることがある。

性質

反応性
 酸素は、空気中に酸素分子(O2)として約19%含まれる他、海洋などに水(H2O)として、また地殻中に珪素などの酸化物の形で大量に存在する。地球上では最も多い元素である。
 酸素分子は、多くの生命にとって、生命維持に不可欠となっているが、地球の初期の生物や、現在でも嫌気性細菌には、酸素分子は毒である。
 酸素は多くの物質化合物を生成するが、これらは酸化物と呼ばれる。酸素は強力な酸化剤であり、可燃性物質や還元性物質と反応することで火災や爆発を起こす危険がある。

地球上の酸素
 太古の昔の生物にとっては、酸素は基本的に毒であり危険なものだった。しかし植物が酸素分子を大量生産しだしてから、酸素に耐性のない生物(嫌気性菌)は減り、酸素に耐性のある生物(好気性菌)が生き残るようになって現在に至る。
 そしてまた、酸素を用いない化学反応より酸素を用いた化学反応のほうがより多くのエネルギーが得られるので、生物は巨大化でき、そして様々な環境に適応できる機能を備えられるように進化した。
 人間を始め現在の多くの生物が酸素を必要とするのはそのためだが、しかし現在の生物でも、酸素の吸いすぎは相変わらず毒であり、濃度の高い酸素を長時間吸えば死に致る。

宇宙の酸素
 宇宙にも大量の酸素原子は存在するが、酸素には酸化力があるため酸素分子(O2)としてはあまり存在せず、(H2O)、二酸化炭素(CO2)、SiO2系の化合物、FeO系の化合物などとして存在することが多い。
 地球型の生物が光合成をするとO2が大量に発生する。また、H2OやCO2に紫外線が照射される環境でも光分解でO2が生成されうるが、これは生じてもごく微量である。
 このため現在の科学においては、大気中にO2が数%以上存在する場合は光合成生物の存在を想定しており、系外惑星探査などでは、O2大気やオゾン層などがないか調査するようになっている。
 現時点では有力な天体は見つかっていないようだが、かなり熱心に探査が続いているため、早ければ21世紀の中頃までには幾つかの候補天体が見つかる可能性があるともされている。

製法
 工業的には、空気から分離して作られる。空気中には窒素が約4/5、酸素が約1/5含まれているため、ここから酸素を分離することになる。
 代表的な製法は二種類ある。
 深冷空気分離法では、一旦空気を冷却して液化させ、次に徐々に温度を上げる。窒素の方が沸点が低い(窒素は竏195.8℃、酸素は竏183.8℃)ため、窒素が先に沸騰して蒸発する。そして残った液体が液体酸素ということになる。
 圧力変動吸着法(PSA法)では、空気に圧力を掛け、吸着剤に窒素を吸着させて分離する。

電子状態
 酸素は常温では無色の気体だが、冷却すると青い色を呈した液体の液体酸素となる。
 酸素原子の場合、最も低い励起状態に遷移するためのエネルギーは赤外線の領域にあるが、この遷移は、酸素の特殊な電子状態が原因で起こらない。その次に不安定な励起状態への遷移は、紫外線の吸収によって起こる。つまり、可視光線の領域の光を吸収する反応がないため、酸素分子は無色となる。
 しかし、液化すると分子間距離が縮まるため、二分子が相互作用することで最も低い励起状態となりうる。この時、最も低い励起状態で吸収する赤外線の二倍の光のエネルギー吸収が起こり、それはオレンジ色の光(可視光線)に対応する。結果として、白色光からオレンジ色の光が欠落した色となるため、オレンジ色の補色である青い色として目に見えるようになる。
 更に、酸素は磁石に引き付けられる性質がある。これも電子状態が特殊なことに由来している。
 他の分子では、こういった特徴を持たないため、気体では無色だが液化すると色が着くといった現象は発生しない。酸素の特殊性の一つである。

安全性

危険性

有害性
 中枢神経系、肺、眼に影響を与えることがあり、また高濃度の酸素を吸引すると肺を冒すことがある。

環境影響

発見
 1774(安永3)年にイギリスのジョゼフ・プリーストリー(Joseph Priestley)が発見したとされている。
 一説によるとスウェーデンのカール・ヴィルヘルム・シェーレ(Carl Wilhelm Scheele)の方が発見が早かった(1771(明和8)年)とされるが、発表が遅れたので、現在の化学史に於いては発見者はプリーストリーとなっている。
 化学名Oxygeniumは、ギリシャ語で「酸を作るもの」を意味する語、ο'ξυ'σ(oxy's、酸)をγει'νομαι(gei'nomai、作る)から付けられた。

主な化合物

化合物
 酸素は、弗素に次ぐ電気陰性度を持ち、その電気陰性度の高さより、様々な酸化物を作る。
 酸素は多くの元素と化合物を作り、希ガス、一部の貴金属(白金)を除くすべての元素との化合物が知られている。

無機物

有機物

補足
 酸素ボンベは黒である。他に水素は赤、二酸化炭素は緑、ヘリウム窒素などはグレーとなっている。
 また、ボンベのバルブが左ネジ(メタンなどの可燃性ガスは全て同様)。

前後の元素
 
 7 窒素 ‐ 8 酸素 ‐ 9 弗素

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