有機物
読み:ゆうきぶつ
外語:organic matter

 無機物ではない物質のこと。
目次

語源
 かつて、自然界の物質を無機物と有機物に二分した際、生命の働きのあるものを有機物もしくは有機化合物と呼んだのが由来である。
 その当時、有機物は生物の神秘的な力でしか作れない物質と考えられていた。これを「生気説」という。

定義

生気説と説の崩壊
 ドイツの化学者Friedrich W〓hler(フリードリッヒ・ウェーラー)は、生気説に強い疑問を感じていた。
 そしてウェーラーは、動物体内で蛋白質代謝されて作られる尿の成分尿素を、無機塩であるシアン酸アンモニウム水溶液の加熱によって無生物的に合成できることを示した。
 このことにより、旧来の有機物の概念は根本から覆され、また、生命も決して神秘的な存在ではなく、一般の化学法則に従った存在であることを示したのである。

現在の定義
 簡単には、燃やして二酸化炭素が発生する物質が有機物であるが、それが全てではない。
 現在では一酸化炭素、二酸化炭素および炭酸塩や青酸塩などを除く炭素化合物を有機物と呼んでいる。
 しかし炭酸(無機)のアミド体である尿素(H2NCONH2)が有機物として扱われているなど、有機物と無機物の境界はあいまいである。有機物と無機物を分類する化学的な意義はあまりないが、教育や研究分野の分類には便利なため、現在でもこの仕分けが使われる。
 有機物はC、H、O、Nの4つの元素(暗記するときには、CHON=チョン、とする)を中心として、P、S、F、Cl、Br、Iなどで形作られている。

特徴
 地球の生物を構成するのはアミノ酸などの有機物である。有機とは言っても今では非生物的に生成しうることが知られ、さらには、太陽系隕石彗星にも含まれている。
 現在地球に有機物があり生物があるのは、これら隕石や彗星が大量に地球に降り注ぎ、地球に有機物がもたらされたため、とするのが有力である。
 では、この有機物はどこで作られたのかということになる。宇宙を観測すると、可視光では真っ暗に見える領域が確認できる。これは暗黒星雲または星間分子雲と呼ばれ、いずれ原始星を経て恒星となり輝くようになる。この分子雲に、様々な分子や塵(星間塵)が存在することが観測によって明らかとなっている。
 地球にある有機物は、太陽がまた輝く前、太陽の元になった暗黒星雲中で作られたと考えられる。

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