比放射能
読み:ひ-ほうしゃのう

 放射性物質の、質量あたりの放射能の強さの指標。
目次

概要
 比放射能は、特定の放射性同位体について放射能の強さを語る時に用いられる。
 放射能の強さはベクレル(Bq)、質量はグラム(g)やキログラム(kg)などであるので、質量あたりの放射能の強さは、例えばベクレル毎グラム(Bq/g)のように表現することになる。
 なお、複数の放射性同位体が混在するような場合は、別の指標が使われることが多い。

特徴

換算
 各放射性同位体ごとに、質量、含まれる原子の数、放射能の強さは全て比例関係にある。従って、係数を用意するだけで、容易に換算することが可能である。
 つまり係数を用いて、グラム→ベクレル、ベクレル→グラムの換算などが可能となる。
 係数は、放射性同位体の半減期と原子の質量数から求められる。



崩壊定数
 まず、崩壊定数をλとすると、半減期は、次のように書くことができる。
 T1/2 = ln(2)/λ
 移項すると、崩壊定数λは次のように定義できる。
 λ = ln(2)/T1/2
 半減期との単純な比例関係となり、半減期が短いほど分母が小さくなるので崩壊定数が大きくなることが分かる。

計算式
 原子数をN、崩壊定数をλとすると、次のように定義される。
 -(N/dt) = λN
 NAアボガドロ定数とすると、放射性同位体の質量は次の式となる。
 N/NA[mol] × m[g/mol]
 さて、この二つの式を用いると比放射能Sは、次式で、放射性同位体の単位質量当たりの放射能として定義される。
 S[Bq/g] = λN/mN/Na = λNa/m
 崩壊定数λは既に上で定義されているため、これを代入すると、式は次のようになる。
 S = ln(2)×Na/T1/2×m
 定数を代入すると、式は次のようになる。
 S[Bq/g] ≒ 4.17×1023/T1/2秒×m
 1年は365×24×60×60秒であるので、これで割ると、年あたりの式は次のようになる。
 S[Bq/g] ≒ 1.32×1016/T1/2年×m
 これによって、半減期(秒または年)と質量数から、グラム毎ベクレルがすぐに求められるようになった。

計算の例
 例えば、半減期30.07年のセシウム137の場合、この式から次のように求められる。
 S[Bq/g] ≒ 1.32×1016/30.07年×137 ≒ 3.2×1012[Bq/g]
 つまりセシウム137は1グラムあたり約3兆2000億ベクレルということになる。言い換えれば、例えばセシウム137が100万ベクレルあったとしても質量はたかだか0.0000003グラムということが分かる。

一覧
 主要な同位体の比放射能は以下の通りである。
 計算しやすいように、アボガドロ定数は6.02×1023とした。
同位体半減期Bq/gg/Bq
三重水素12.33年3.67×1014367兆2.79×10−15
炭素145730年1.65×10111650億6.07×10−12
カリウム4012.7億年2.60×10526万3.85×10−6
コバルト605.271年4.18×101341兆8000億2.39×10−14
ニッケル63100.1年2.09×10122兆900億4.78×10−13
ストロンチウム8950.53日1.10×10151100兆9.09×10−16
ストロンチウム9028.78年5.10×10125兆1000億1.96×10−13
ニオブ9534.975日1.45×10151450兆6.90×10−16
沃素1318.0207日4.59×10154590兆2.18×10−16
沃素13453分9.77×101797京7000兆1.02×10−18
セシウム1342.0648年4.77×101347兆7000億2.10×10−14
セシウム13730.07年3.20×10123兆2000億3.12×10−13
ラジウム2261600年3.65×1010365億2.74×10−11
ウラン23315.92万年3.56×1083億5600万2.81×10−9
ウラン2357億年8.02×1048万1.25×10−5
ウラン23844億6800万年1.24×1041兆24008.06×10−5
プルトニウム2392万4110年2.29×10922億9000万4.37×10−10

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