UNIX
読み:ユニックス
外語:UNIX: UNiplexed Information and Computing System
かつて、AT&Tベル研究所の
ケン・トンプソン
博士と
デニス・リッチー
が開発した
オペレーティングシステム
(OS)の名であり、ここから派生した一連のOSの総称である。
目次
概要
由来
CUI OS
特徴
系統
差異
技術
ファイル
補足
権利
アメリカ
日本
定義
一覧表
フリーソフトウェア
製品であるもの
その他
概要
由来
AT&Tベル研究所が
Multics
プロジェクトから撤退したあとの1969(昭和44)年、同研究所にいた二人は、ベル研究所の隅に捨てられていたがらくた同然のコンピューター
PDP-7
でゲームをするためにこのOSを開発した。その後このOSはPDP-11へと移植された。
UNIXという名称はMulticsをもじったもの(Multiの反語でUni)である。
当初は
アセンブリ言語
で書かれていたが、1972(昭和47)年〜1974(昭和49)年に掛け、デニス・リッチー自身が開発した
プログラミング言語
である
C
で書き直された。かくして、ソースレベルで移植性のある世界初のOSになった。
後にケン・トンプソンはカリフォルニア大学バークレイ校に赴任し、ここでビル・ジョイ(Bill Joy)らと共に新しいUNIXのバージョンが生まれた。これが
BSD
である。
CUI OS
UNIXは基本的にコマンドラインであり、標準ではWindowシステムを持っていない。
そこで現在標準となっているのが
X Window System
と呼ばれるソフトウェアである。これは
マサチューセッツ工科大学
(MIT)で開発されて以降変遷を遂げつつも、今なおフリーで公開されている。今なおコマンドラインから実行して起動する形態を取り、ちょうど
MS-DOS
から
Windows 3.1
を起動するのに似ている。
特徴
系統
現在、UNIXには大きく次の系統が存在する。
System V
BSD
POSIX
準拠の互換OS(
Linux
など)
差異
System Vは
AT&T
で開発された本家UNIXの後継で、当初はBSDに比べ機能が劣っていたが、BSDの機能を取り込み、現在では商用UNIXの大部分がSystem Vとなった。
BSDはカリフォルニア大学バークレイ校にて開発されたUNIXで、TCP/IPプロトコルの内蔵など、現在のUNIXの原形を作った。
FreeBSD
、
NetBSD
、
OpenBSD
等が該当する。各種BSDは
BSDライセンス
で公開されている。
その他のものとしてはLinuxなどがあり、System VとBSDのよい点を取り入れて最初から書き上げられたUNIX互換のOSで、そのカーネルはSystem Vに近い。コマンド関係の殆どは
GNU
のものを使っているため、雰囲気的にはBSDに近い。Linuxは
GPL
で公開されている。
技術
ファイル
データの入出力先の全てをファイルとして扱うのが、UNIXの基本思想である。
デバイスの制御も含め、データの入出力処理はファイルに対する読み書き(read、write、ioctl)として行なわれることを基本とする。
また、OSは読み書きされるデータの構造に関知せず、全ての情報はフラットなバイト列として扱われる。データの内容を解析するのは、アプリケーション側に任されている。このため汎用性が高く、新しいデバイスに対応するための機能追加なども容易である。
一例として、デバイスファイル(またはスペシャルファイル)がある。
/dev
以下は、仮想ファイルシステムによって各種のデバイスを扱うためのデバイスファイルが配置されており、さらにLinuxであれば
/sys
以下に階層化しておのおのへのシンボリックリンクを置いている。
例えばLEDであれば、
/sys/class/leds
/red/brightness というパスでデバイスファイルへのシンボリックリンクを用意したとすると、
$ echo 0 > /sys/class/leds/red/brightness
で消したり、
$ echo 1 > /sys/class/leds/red/brightness
で点けたりといった処理が可能である。またこの数字を、発光する
輝度
として受け取って処理することもできる。
補足
権利
アメリカ
UNIXの
商標
やソースリストの著作権などは、元々は
AT&T
が持っていたが転売が繰り返され、複雑な問題を発生させた。
現時点での持ち主は次の通りである。
ソースコード
‐
The SCO Group
著作権 ‐
Novell
(後述)
UNIXの商標 ‐
The Open Group
UNIXの著作権はNovellにあるとNovellが主張している。Novellは、SCOにソースリストを売却したが、著作権は譲渡していないとした。
SCOは訴訟を起こすが、2007(平成19)年8月に米連邦地裁でUNIXの著作権はNovellであるとの略式判決が下された。SCOは控訴した。控訴審では、米控訴裁判所が2009(平成21)年8月24日、地裁判決を破棄し著作権はThe SCO Groupにあるとする
判決
を下した。
日本
日本における
商標権
は、分野ごとに様々な会社が持っているが、電子計算機分野では、次のようになっている。
第9類「エックス/オープン・カンパニー・リミテッド」(X/Open Company, Ltd.)
第11類「アメリカン テレフォン アンド テレグラム カムパニー」(AT&T)
第42類「エックス/オープン・カンパニー・リミテッド」(X/Open Company, Ltd.)
定義
現在、日本国外でのUNIXと言う名称は、The Open Groupの
登録商標
となっている。従って、本来UNIXでありながら、UNIXを名乗れないという問題を生んだ。
現在では、UNIXの定義として次のようなものがあり、いずれかを満たせばそれは事実上のUNIXである。
The Open Groupが定義した仕様基準Single UNIX Specification(略称SUS)に準拠し、その認証を受けたOS
ベル研究所で作られたオリジナルのUNIX。及び、ベル研究所の認可を得たその派生物
オリジナルのUNIXを起源に持つOS
UNIXの標準規格であるPOSIXの仕様を満たす、UNIX互換のOS
さて、この定義の4は実は重要である。なぜなら、
Windows NT
、
Windows 2000
、
Windows XP
、
Windows Vista
といったNT以降のWindowsはPOSIX準拠のOSだからであり、つまり
WindowsはUNIXである
という驚愕の事実がここにあるからである。
しかし上述の商標の問題から、公にUNIXを名乗れるのは、1の条件を満たしたもののみである。ゆえに、Windowsはもちろんだが、FreeBSDやLinuxといった世界でも多くのシェアを持つUNIXは、1に準拠しないためUNIXではない。
しかし、これでは呼ぶときに困るので、次のような代替表現が使われる。
Un*x
UNIX系
UNIXライク
一覧表
UNIXおよびUNIX互換のOSは大量に存在するが、よく知られるものだけでも、次のようなものがある。
なお、Linuxは
Linuxディストリビューション
という形で配布されている。
フリーソフトウェア
フリーで配布されているUNIX系OSを、
FreeUNIX
という。当初は製品等でフリーではなかったが、後からフリーとなったものもある。
BSD系
386BSD
FreeBSD
FreeBSD(98) (後に、FreeBSD/pc98として公式化)
m0n0wall
TrustedBSD
DragonFly BSD
PC-BSD
PocketBSD
PicoBSD
NetBSD
OpenBSD
GNU Hurd
Linux
ELKS
LUnix
LUnix Next Generation
MINIX
Solaris
UZI
UZIX
製品であるもの
製品として販売されているUNIX系OSを、
商用UNIX
という。
ACIS (IBMの製品。
4.2BSD
)
AIX
(IBMの製品。System V系だが、BSDの機能の一部を導入)
AOS (IBMの製品。
4.3BSD
)
A/UX (Apple Computerの製品。System V系。Mac OSに似たGUIを提供)
BSD/OS (BSDIの製品。BSD系。BSD/386→BSD/OS)
Coherent (Mark Williams Companyの製品)
DG/UX (Data Generalの製品。System V系だが、BSDの機能の一部を導入)
Digital UNIX
(DECの製品。OSF/1→Digital UNIX→Tru64 UNIX)
DOMAIN/OS (HP-UXに統合)
Consensys (System V系)
CX/UX (Harris Computerの製品。System V系だが、BSDの機能の一部を導入)
Esix
EWS-UX/V (NECの製品。System V系)
HI-UX
(日立製作所の製品。HP-UX互換)
HP-UX
(Hewlett-Packardの製品。System V系)
INTERACTIVE UNIX (MIPSの製品。Sunに買収され、Intel版Solarisのベースに)
IRIX
(SGIの製品。System V系)
MachTen (Tenon Intersystemsの製品。BSD系で、Mac OS内で動作するアプリケーション)
OS X
(Apple Computerの製品。FreeBSD系で、後にThe Open Groupの認証を受けた)
Masscomp RTU (masscompの製品。System V系だが、BSDの機能の一部を導入)
NCR UNIX (NCRの製品。System V系)
NEWS-OS
(ソニーの製品。当初はBSD系だったが、後にSystem V系に)
OA/UX (シャープ製。初期はUNIX System III、後にSystem V系)
PANIX (エー・アイ・ソフトの製品。System V系。PC-9800シリーズ用)
PC-UX (NECの製品。System V系。PC-9800シリーズ用)
RISC OS (MIPSの製品。System V R4系と
4.3BSD
系がある)
PowerMAX OS (Concurrent Computerの製品。System V系)
SCO UNIX (SCOの製品。XENIX→SCO UNIX)
SUPER-UX (NECの製品。System V系。NEC製スパコン
地球シミュレータ
でも採用)
SX/A (富士通の製品。System V系だが、BSDの機能の一部を導入)
Tru64 UNIX (OSF/1→Digital UNIX→Tru64 UNIX)
ULTRIX (BSD系)
UNICOS (Crayの製品)
UniOS-B (オムロンの製品。
4.3BSD
)
UniOS-U (オムロンの製品。System V R2.1)
UniOS-Mach (オムロンの製品。MACH)
UniOS-Σ (オムロンの製品。シグマOS)
UnixWare (Novellの製品。System V系)
UXP/DS (富士通の製品。System V系)
UXP/M (富士通の製品。System V系)
Windows NT
(Microsoftの製品。POSIX系)
XENIX (Microsoftの製品。XENIX→SCO UNIX)
NEXTSTEP
/
OpenStep
(NeXT Computerの製品。Machカーネルの
4.3BSD
)
シグマOS (通産省主導プロジェクト、
Σ
のOS。当初はBSD、後にSystem V系に変更とされる)
その他
UNIX互換の環境を提供するものなど。
BOW
‐ BSD on Windows
Cygwin
Interix (Softway Systemsの製品。Microsoftに吸収合併)
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