閏秒
読み:うるうびょう
外語:leap second

 地球自転公転から得られる時刻(天文時、世界時(UT))と、原子時計に基づく協定世界時(UTC)との差異を調整するため、挿入または削除される1秒間のこと。
目次

概要

由来
 地球の自転速度は一定ではなく、常に変化している。一方、原子時計は正確に時を刻み続けるため、結果として天文時と原子時計の時刻には「ずれ」が生じる。
 なぜなら、の定義は地球の回転とは無関係に、セシウムからの遷移放射の周期を基準に定義されているからである。
 時刻は正確であるべきなので原子時計を使いたいが、地球の回転からずれても困る。そこで、1972(昭和47)年から採用された両者の調整法が閏秒である。

定義
 地球の回転観測から決定される時刻を、世界時(UT)とする。UT0、UT1、UT2があるが、ここでは、そのうちUT1を用いる。
 1958(昭和33)年より時を刻み続けている国際原子時(TAI)を、時刻の基準とする。
 TAIに対し、閏秒などで調整を加えた実際に用いる時刻を、協定世界時(UTC)とする。
 閏秒調整とは、世界時UT1に対しUTCを±0.9秒以内に保つよう、1秒単位で挿入または削除により実施される調整である。

地球の自転速度

自転速度の低下
 地球の自転速度は変化しているが、現実には徐々に遅くなっている。このため、過去、閏秒は挿入のみが行なわれており、削除は一度もなかった。
 1958(昭和33)年より時を刻み続ける国際原子時(TAI)と協定世界時(UTC)の差は、2015(平成27)年の閏秒挿入で36秒間となり、つまり57年間で自転は36秒遅くなり、一日の長さが伸びていることを意味している。
 地球の自転は今後も確実に遅くなる。従って、現在は数年に一度の閏秒挿入が、やがて毎年一回になり、年二回、年数回、と増え、いずれは毎月必要になることが予想されている。
 しかしそうなると、閏秒で調整して運用という現在の方法を続けることは社会的にも難しくなり新たな方法を導入する必要が出てくるものと思われるが、現時点では良い案はない。
 なお、閏秒の発生は、現時点では長期的には予測できないものである。

大局的変化
 1回目1972(昭和47)年7月1日から27回目2017(平成29)年1月1日までの45年間で27秒が挿入された。つまり45年で27秒間、1日が長くなっており、そのぶん地球の自転が遅くなったことを意味する。
 45年で27秒なら平均して1.66年につき1秒挿入されることになるが、実際はそうでもなく、10年ごとに次のように閏秒が生じている。
 地球の自転速度は昔から徐々に遅くなっていることが知られるが、2000(平成12)年頃を境に、遅くなるスピードが鈍化しているようである。観測からは「遅くなるのが、遅くなっている」と判断できるが、その原因は定かではない。
 2000年→2010年の10年間には、スマトラ島沖地震、チリ地震、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震などの大地震が発生し、それぞれで数μ秒ずつ自転速度が増したとされているものの、その値からして影響は僅かであろうと予測されてはいる。

自転速度の上昇
 こうして低下を続けていた地球の自転速度だが、2020(令和2)年頃から上昇に転じた。一説では、2020(令和2)年7月19日には24時間-1.49ミリ秒も速く回り、2022(令和4)年6月29日には「観測史上もっとも短い地球の1日」が観測され、24時間-1.59ミリ秒で自転が終わってしまったという。
 その原因は不明ではあるが、ラニーニャ現象が順風となっていること、極地付近の海流スピードが落ちてることが考えられており、他にマントルの動きなども関連していると予想されている。
 このまま自転速度の上昇が続けば、これまで秒の挿入だけだったところ、初の秒の削除の実施が必要になると考えられている。

特徴

挿入・削除方法
 挿入が発生する場合に、UTCでは次のように時刻が遷移し、1秒の補正が行なわれる。
 日本標準時はUTCと9時間の時差があるため、8:59:59→8:59:60→9:00:00と推移する。つまり、午前8時59分59秒と9時00分00秒の間に「8時59分60秒」が挿入される。
 削除が発生する場合には、UTCでは次のように時刻が遷移し、1秒の補正が行なわれる。
 つまり、23:59:59がなくなる。日本標準時では、午前8時59分59秒がなくなる。但し削除は過去一度も例がない。

国際原子時
 1958(昭和33)年より国際原子時(TAI)は時を刻み続けている。この時刻を基準として、調整を加えたものが、現在は用いられている。
旧協定世界時
1961(昭和36)年〜1971(昭和46)年、1秒の長さを変え、またステップ状の時刻調整でUT1に近似させる。
しかし年毎に1秒の長さが異なるなどの不都合があった。
特別調整
1972(昭和47)年1月1日の0時、国際原子時(TAI)と協定世界時(UTC)の差を10秒とする調整を実施。
閏秒
1972(昭和47)年から採用され、今に至る手法。
閏秒を挿入することでUT1に近似させる。

沿革
 2017(平成29)年までで26回が実施され、全てが挿入による調整であった。それぞれの調整は、表記の日付の1秒前に行なわれている。
回数日付閏秒協定世界時-国際原子時
 1972(昭和47)年1月1日 −10秒
11972(昭和47)年7月1日+1秒−11秒
21973(昭和48)年1月1日+1秒−12秒
31974(昭和49)年1月1日+1秒−13秒
41975(昭和50)年1月1日+1秒−14秒
51976(昭和51)年1月1日+1秒−15秒
61977(昭和52)年1月1日+1秒−16秒
71978(昭和53)年1月1日+1秒−17秒
81979(昭和54)年1月1日+1秒−18秒
91980(昭和55)年1月1日+1秒−19秒
101981(昭和56)年7月1日+1秒−20秒
111982(昭和57)年7月1日+1秒−21秒
121983(昭和58)年7月1日+1秒−22秒
131985(昭和60)年7月1日+1秒−23秒
141988(昭和63)年1月1日+1秒−24秒
151990(平成2)年1月1日+1秒−25秒
161991(平成3)年1月1日+1秒−26秒
171992(平成4)年7月1日+1秒−27秒
181993(平成5)年7月1日+1秒−28秒
191994(平成6)年7月1日+1秒−29秒
201996(平成8)年1月1日+1秒−30秒
211997(平成9)年7月1日+1秒−31秒
221999(平成11)年1月1日+1秒−32秒
232006(平成18)年1月1日+1秒−33秒
242009(平成21)年1月1日+1秒−34秒
252012(平成24)年7月1日+1秒−35秒
262015(平成27)年7月1日+1秒−36秒
272017(平成29)年1月1日+1秒−37秒

対応

117
 NTTの時報サービス「117」では、午前8時58分20秒から100分の1秒ずつ秒音の間隔を長くすることで、閏秒の調整を実施している。
 つまり、聞いただけでは閏秒があったこと自体が分からない。

JJY
 JJYでは、閏秒の挿入や削除を予告する情報が信号内に含まれる。

NTP
 NTP/SNTPでは、閏秒を全く考慮していない。
 このプロトコルでは1900(明治33)年1月1日からの経過秒数を用いるが、閏秒は含まれていない。

C/C++
 プログラミング言語C/C++は、様々な方法で日時を扱うことができる。
 標準規格ではlocaltime()関数などがあり、ここでstruct tm型の構造体が用いられる。秒は、構造体のメンバーtm_secに格納されるが、古いCの仕様では、2秒間までの閏秒に対応するべく、値は0〜61までが定義されていた。
 実際には一度に2秒の閏秒を挿入することはないため、現在の実装では0〜60の範囲で利用される。

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