鉛蓄電池
読み:なまり-ちくでんち

 充電して使用できる電池(充電池二次電池)の一種。正極に二酸化鉛、負極に、電解液には硫酸を用いている。
目次

概要
 二次電池として現在使われているものの中では長い歴史を持つ
 比較的安価(それでも最近は鉛価格の上昇により値上がり傾向)であり、かつ大電流が得られることから、乗用車のセルモーターを回すためや、電気自動車の動力源、またUPSでも広く使われている。
 鉛蓄電池はセルあたり直流約2Vと比較的高電圧が得られ、通常の製品は6セル構造でDC12Vが出力される。そこで、この12Vあるいはその逓倍が標準として広く使われるようになった。
 欠点は、鉛を使うため重いことと、廃棄する際に有毒な金属なので注意が必要なことである。

特徴

原理
 正極も負極も鉛というのが鉛蓄電池の特徴だが、このうち正極の鉛が二酸化鉛(PbO2)になっているのが更なる特徴である。
 (Pb)は酸化数+2が最も安定するが、ただの鉛はもちろん酸化数+0、一方の二酸化鉛(PbO2)は酸化数が+4である。この両者が酸化数+2のPb2+になろうとする性質を利用した電池が、鉛蓄電池なのだということができる。
 電解液に硫酸を使っているが、これも反応に寄与しており、次の式で書くことができる(→方向が放電反応、←方向が充電反応、以下同)。
 【充電】Pb+PbO2+2H2SO4 ⇔ 2PbSO4+2H2O【放電】
 放電と充電の、各極での実際の反応は、次のようになる。
負極
【充電】Pb + SO42− ⇔ PbSO4 + 2e【放電】
正極
【充電】PbO2 + 4H+ + SO42− + 2e ⇔ PbSO4 + 2H2O【放電】
 鉛電池12V品を満充電するためには、電圧は17V程度必要である。

乗用車
 最も日常的な用途が、乗用車用の蓄電池である。
 二輪車と四輪の乗用車とトラックではそれぞれ仕様が異なるが、乗用車用は、白い半透明の容器で上に黒い電極付きの蓋の付いた充電池が一般的。あれが鉛蓄電池なのである。
 中に液体があり、これが蒸発するため時々「バッテリー液」と称して補充するが、この液は希硫酸で、つまり電解液を補充しているわけである。

劣化
 充放電を繰り返すと、正極と負極が共に劣化する。劣化が一定を超えた時に充分な能力を満たせなくなり、もってその鉛蓄電池は寿命を迎えたことになる。
 正極の二酸化鉛は、使用の度に徐々に剥がれ落ち、その量を減らす。これを脱落といい、電池容量を減らしたり、負極に付着したりし、結果として電池としての反応性が悪くなる。
 負極の鉛は、放電すると結晶化しやすくなり、これが性能の劣化をもたらす。特に深放電には非常に弱く、深放電を続ければ数回の利用でも再利用不能なほどに劣化する。
 鉛蓄電池は、古くなると使用時に水素が発生し、火災や爆発の恐れがある。日本では一定量以上の鉛蓄電池を置く場合には消防署に届出が必要である。但し、殆どの二次電池は火災、爆発の恐れがあり、鉛蓄電池に限ったことでは無い。

メモリー効果はない
 ニッケルを使う電池によくあるメモリー効果は、鉛蓄電池には存在しない。
 従って、過剰な放電を避けるために、使ったら随時充電をすることが望ましい。

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