血液
読み:けつえき
外語:blood
動物
の
体液
の一種で、体内を循環し、
酸素
や
栄養
などを体中に供給し、同時に
細胞
で作られる
二酸化炭素
などの老廃物を体内の所定の場所に運搬するための液体。
目次
概要
特徴
量
成分
色
血液型
血液循環
骨髄
太古の海
概要
血液にはいくつかの機能がある。大きく、生体維持に必要な酸素や栄養を運ぶ機能と、ウイルスや菌などの病原体が侵入した場合に戦い排除する機能があり、また血管が破れ出血した場合には止血するための機能も有する。
動物は何らかの形で体液を有し体内を循環させているが、その特徴は様々で、色までも多様である。
ヒトほか脊椎動物は血液とリンパ液が別れており、リンパ液のためにリンパ管が存在するが、無脊椎動物では明確に血液などの組織液とリンパ液は区別されない。このため無脊椎動物の体液は血液とリンパ液の両方の機能を持つものとして「血リンパ」と呼ばれている。無脊椎動物の中でも、
開放血管系
を持つ軟体動物と節足動物では特に明確であるため、狭義の血リンパとして区別される。
海で暮らすクラゲのような刺胞動物などになると血液がなく心臓や血管すらもないが、代わりに水管と呼ばれる管があり、動物自体が動くことで心臓の代わりとなり体内に栄養分などを運ぶ。
また昆虫の体液も血液とリンパ液の機能が混ざっているため「血リンパ」であり、なおかつ
ヘモグロビン
も持たない。また幼虫が食べた植物の色素が中腸から入るため淡黄緑色をしていることが多い。
以下は、特に注記がない場合はヒトの血液について説明する。
特徴
量
成人で、
体重
の約8%、およそ5リットル程度の血液を体内にたたえている。
酸素や栄養、不要物の循環の他、
体温
の調節、酸塩基平衡の維持(pH7.4前後)、免疫などの機能を有している。
全血液量の20%を急激に失うと「出血性ショック」を起こし、30%以上を急激に失うと生命に危険が及ぶ。つまり、成人で1リットルを急に失うと出血性ショックとなり、1.5リットルを失うと生命が危険となる計算になる。
成分
ヒトの血液は、液体成分の血漿と有形成分の細胞が、約半々で含まれている。
血漿は50〜60%で血清とフィブリノゲンである。細胞成分は40〜50%で、そのうちの約1%が
白血球
と
血小板
、残りが
赤血球
である。
血漿
(液体成分)
血清
フィブリノゲン
細胞
赤血球
白血球
血小板
血液の細胞成分は骨髄で作られる。全ての細胞成分の元となる細胞を多能性
造血幹細胞
という。赤血球/白血球/血小板は機能が大きく異なるが元は全て一種類の幹細胞なのである。
色
ヒトの血液は赤く見える。これは血液中に赤い色素ヘモグロビンを持つ
赤血球
を含むためである。血液を採り、血液を固まらないようにする抗凝固薬を加えて放置すると
血漿
(液体成分)と細胞成分に分離するが、液体成分である血漿は
淡黄色
(薄黄色)をしている。つまりヒトの血は、淡黄色の血漿の中に無数の赤い赤血球が含まれるため、赤く見えるということである。
ヒト以外の動物では、赤色以外のものもある。
赤 (ヒトなど) ‐
ヘモグロビン
薄い青色 (エビやザリガニなどの節足動物の一部、タコやイカやカタツムリなどの軟体動物の一部) ‐ ヘモシアニン
透明(無酸素時)またはピンク〜紫色(有酸素時) (海洋無脊椎動物) ‐ ヘムエリスリン
上は大部分に当てはまるが、多様な生物があり、例外もある。
南極に住むコオリウオは脊椎動物だが、退化し赤血球を持たない。このため血液は無色透明である。赤血球を失っているため、代わりに血漿で酸素を運搬している。
昆虫も節足動物だが、ヘモシアニンを持たない種も多い。幼虫の時に食した植物の色素が含まれるため、緑色に近い色調を有することが多い。
軟体動物でも、赤貝や環形動物のゴカイはヘモシアニンではなくヘモグロビンのように鉄を含むエリスロクルオリンという色素を持っているため、血液の色は赤い。
血液型
赤血球
、
白血球
、
血小板
上の表面上の抗原性の違いを「
血液型
」という。
一般には、赤血球の表面上の抗原性の違いによる
ABO式血液型
が有名だが、血液型の種類はそれに留まらない。代表的なもので20種、発見されているものは300種とも500種とも言われる。
血液循環
体内を血液が巡ることを「
血液循環
」という。
心臓
から拍出された血液が体を巡り、再び心臓に戻る。これは、どのような動物でも概ね同じである。但し、高等動物と下等動物では血の巡り方が違う。
高等動物は
閉鎖血管系
といい、血液は
血管
のみを流れる。血管から血液が漏れる(
出血
)と大事である。
対して下等な動物は、血液は血管ではなく組織の間隙を巡っており、血管が無い。これを
開放血管系
という。
骨髄
血液中の
細胞
は
骨髄
で作られる。その細胞の元となるのが
造血幹細胞
である。
造血幹細胞が白血球、赤血球、血小板などに姿を変え、これがやがて体を巡るようになる。
太古の海
血液など体液は、動物が
海
から陸に上がった際、体の機構を大きく変えずに済むよう「体の中に海を保つ必要」から生まれたものである。このため、自ずと太古の海に近い成分組成となっている。陸上動物は体の中に太古の海を湛えている。
現在の海の
塩分
は3%程度であるが、
生物
の血中塩分は0.9%程度である。したがって、生物が陸に上がり始めた頃の海は、今よりも塩分濃度がずっと低かったことが分かる。
太古の海から、時代を経るごとに海水の塩分濃度が高まったのは、陸上にある
塩化ナトリウム
等の塩が海へと流れたためである。
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