尿意
読み:にょうい
外語:desire to urinate

 小便がしたい、という生理的な感覚。―をもよおす。
目次

概要
 尿意を感じるのは大脳である。
 膀胱尿が溜まると、膀胱や尿道を制御する末梢神経が刺激され、それが中枢神経に伝えられて脊髄を通り、最終的にへと刺激が伝わる。
 距離の長い伝達経路であるため、途中とこかで障害が生じて伝達が寸断されてしまうと、尿意は脳へと伝えられなくなってしまう。

特徴

伝達経路

上下
 排尿を制御する中枢(排尿中枢)は、大きくは、脊髄の仙髄にある「下位排尿中枢」と、脳にある「上位排尿中枢」とに分けられる。
 膀胱内にある程度の量の尿(成人の場合で200ml〜300ml程度)が溜まり膀胱内圧が高まってくると、膀胱壁内の末梢神経が刺激を受ける。
 この刺激は、知覚神経を通り、まず下位排尿中枢に伝えられる。ここに達した情報は、脳と膀胱とに分かれて伝達される。


 下位排尿中枢から脳へは、脊髄を通り、脳幹にあるの上位排尿中枢(橋排尿中枢)へと伝達され、またこの橋を介して大脳皮質に伝えられる。
 尿意は大脳皮質で認識される。
 橋排尿中枢は、排尿を促す指令を出す部位で、尿意に従って排尿筋や膀胱括約筋を動かし排尿を促す(排尿反射)。
 尿意があっても排尿を抑制するのは、大脳皮質からの指令による。

膀胱
 下位排尿中枢から膀胱に対しては、上位排尿中枢からの排尿反射、または膀胱からの刺激により反射的に(仙髄反射)、膀胱排尿筋つまり膀胱そのものを収縮させ、同時に内尿道括約筋を弛緩つまり尿道を緩め、排尿を促す働きをする。
 大脳皮質からの指令で排尿を抑制する場合、指令は、脳から脊髄を下り、脊髄から出る仙骨神経に端を発する末梢神経の一つ陰部神経を経て外尿道括約筋に至る。こうして外尿道括約筋を収縮させることで、排尿は抑制される。

種類
 尿意は、次のように分けられている。FDVとMDV以外には、広く使われる和名はなさそうである。
 最初に感じる軽い尿意を初発尿意といい、仙髄からの反射刺激による。この状態では膀胱容量にまだ余裕があるため、排尿を意識的に抑制することが可能である。
 膀胱容量最大まで溜まった時の尿意を最大尿意(MDV)という。SDVとMDVは概ね同義で使われている。

尿量と尿意の強さ
 尿量0から初発尿意を感じるまでの間は全く尿意はなく、それ以上の尿量で膀胱内圧力に応じて尿意が強まっていく。
 なお、膀胱内の尿量と尿意の強さには直接の相関はない。尿意と相関するのは膀胱内圧である。
 就寝中は自律神経の作用で膀胱容量が昼間の1.5〜2倍に増えるため、尿意の感じ方もその分緩くなることになるほか、昼間でも寒いとき、緊張しているときなどは僅かな量でも強い尿意を感じることがある。
 また、次に述べる過活動膀胱という疾患も存在する。

過活動膀胱
 過活動膀胱とされる疾病では、尿意切迫感による急激かつ強い尿意が生じる。これは、通常の尿意ではないと解釈されている。
 この症例は、原因が不明なことも多い。

制御
 赤ん坊の場合、制御はなく、膀胱に尿が溜まると反射的に排尿する。
 排尿の抑制が始まるのは3歳頃からで、意思で制御可能になるのは4〜5歳頃からとされる。
 これ以降、排尿は二種類の筋で制御される。
 膀胱にある膀胱排尿筋と、膀胱出口の筋肉である内尿道括約筋(膀胱括約筋)は自律神経により支配される不随意筋であり、中枢からの反射によって作動している。
 一方で、陰部神経の支配を受ける随意筋として尿道を外側から輪状に覆う細い筋である外尿道括約筋があり、これは尿意が起きても自分の意思で制御することにより排尿を抑えることができる。
 尿意を催してからトイレまで我慢できるのは、外尿道括約筋が機能するためである。但し、我慢をしていても膀胱内圧が一定を越えた場合には意志の力では排尿を抑制することができず、尿道括約筋は圧に抗しきれず排尿を起こしてしまう。

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