ボイジャー1号 |
辞書:科学用語の基礎知識 天文学人工衛星編 (USATE) |
読み:ボイジャーいちごう |
外語:Voyager 1 |
品詞:固有名詞 |
アメリカの宇宙探査機で、外惑星探査機の一つ。1977(昭和52)年9月5日にNASAが打ち上げた。
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情報 |
基本情報 |
外惑星探査機であり、かつ太陽系末端および太陽系外の探査機である。
システム不備の対策のため、ボイジャー2号よりも後に打ち上げられたが、こちらの方が飛行速度が速かったため小惑星帯で2号を追い抜いた。
沿革 |
特徴 |
主目的 |
本探査機の主目的は外惑星探査であり、主として次の2惑星の探査であった。
最遠の人工物 |
ボイジャー1号は現在、人工の探査機としては地球から最遠の位置にある。
電源と観測装置 |
観測装置を動かすためには電源が必要である。ボイジャー1号には3基の原子力電池が搭載されており直流30Vの電源を供給している。
打ち上げ当初は470Wの電力を供給したが、2008(平成20)年時点で285Wまで落ちたとしている。
そこで、通信を維持することを最優先とし、徐々に観測装置の電源を落とすことで節電をしている。NASAの発表では、次のようにして観測装置の電源は切られた。
現在稼働中の観測装置は次の通りである。2020(令和2)年までは稼働させ、以降は順次電源を落とす計画である。
2025(令和7)年〜2030(令和12)年頃には、通信を維持する電力もまかなえなくなり通信が途絶えるものと予想されている。
観測 |
木星 |
ボイジャー2号を追うように打ち上げられたボイジャー1号は、1979(昭和54)年3月5日に木星から約35荳kmまで接近して写真撮影をし、史上初の木星近接撮影を実現した。
ここで、木星にもリングがあることが確認された。
さらに衛星エウロパを撮影し、氷の存在や謎のしま模様の存在を確認した他、衛星イオを撮影し、活火山の存在を確認した。
土星 |
1980(昭和55)年11月12日に土星に約12荳4000kmまで接近して写真撮影を行ない、やはり史上初の土星近接撮影を実現した。
またボイジャー1号の主目的の一つだった衛星ティタンの観測を行ない、ティタンに大気があることを確認した。
記念撮影 |
目的の観測を終えたボイジャー1号は、カメラだけは故障しても今後困ることはないということから、9年ぶりにカメラを稼働、1990(平成2)年2月14日に太陽から64億km上の距離から太陽系を撮影した。
太陽から離れたところから次々と撮影を行ない、そして最後に太陽を撮影したところでカメラは故障したとされる。
星間空間探査 |
1980(昭和55)年の土星観測後、土星の重力で太陽系の公転面から外れた軌道に入り、太陽系の外へと進路を変更した。
1992(平成4)年にはヘリオスフィア(太陽圏)の境界面ヘリオポーズの証拠と言われる電波を観測している。
現在、黄道面の北方向へと進行中で、太陽から3.5au/年の速度で太陽から遠ざかっている。
打ち上げから25年経過した2002(平成14)年時点で、太陽からの距離約85auの距離にあり、2010(平成22)年5月6日現在は、地球から約169億km(10.5億マイル)の距離にいる。
米ジョンズホプキンス大などの研究チームが2003(平成15)年11月6日付の英科学誌ネイチャーに掲載した論文によると、その時点でヘリオスフィアの端、約85.227auの距離におり、5〜10年後に太陽系を脱出するとした。
対しNASAで記者会見したカリフォルニア工科大学によると同日時点で約90auの距離におり、2002(平成14)年8月1日頃には既に太陽系外に出ていた、としている。だが、実際にはまだ太陽系の中にいることが後に判明している。
NASAは、2006(平成18)年8月16日06:13(15日@925)に100auの距離でヘリオシースに達したと発表した。
ボイジャー1号は1日に約160荳kmの速度で飛行を続けており、今後10年以内にヘリオシースを抜けてヘリオポーズに達し、遂に未知の星間空間に達するとした。
NASAは2010(平成22)年6月以降、観測している太陽風の速度が遂にゼロとなったと発表した。
これは、太陽風と恒星間風の圧力が拮抗したということである。ボイジャー1号は太陽から約174億km離れた所を秒速約17kmの速度で飛行を続けており、太陽圏(ヘリオスフィア)の端へと到達したボイジャー1号は今後4年以内に太陽圏を脱出する見通しだと発表された。
予想よりも早く、いつ太陽系を出てもおかしくない状態となった。
太陽風の風速ほぼゼロを観測しており、今後、太陽風の影響と星間物質の影響が見分けられない状態になったときに太陽系を出たと判断される。
2011(平成23)年12月、NASAは、ボイジャー1号が119auの距離にあり、太陽系の外れを無事に航行中と発表した。そして、この星間空間一歩手前の領域を「cosmic purgatory(宇宙の煉獄)」と表現した。
この場所は、凪の海のように穏やかで、かき乱すものは何も無いとする。太陽風の速度は依然として0のままで、もはや四方のいずれからも吹いてはいない。
太陽からの荷電粒子の風も凪ぎ、太陽系の磁場が積み重なり、太陽系内部の高エネルギー粒子が星間空間に漏れている状態で、ボイジャー1号はもう間もなく、「宇宙の煉獄」を抜けて恒星間空間に至る。
2012(平成24)年6月22日、NASAは、120auの距離にあるボイジャー1号は太陽系の端に到達したと発表した。
NASAによると、ボイジャー1号から送られてくるデータに太陽系外からの宇宙線の急増が認められ、直接的観測により、太陽系の端に到達したと確認された、としている。これはヘリオポーズ到達を意味するものと思われる。
今後、宇宙線の急増が観測され次第、恒星間空間に出たものと判断され、もってボイジャー1号は、人類が作り出した人工物として初めて太陽系外に達したと判断される。
なお、ヘリオポーズを抜けたあとは、恒星間空間にある衝撃波面バウショックを通過すると見込まれている。
2012(平成24)年12月3日、NASAは、121auの距離にあるボイジャー1号は「太陽系の果てに近い新たな領域」に到達したと発表した。
当初は、まもなく太陽系の果てに到達するはずだったが、磁力線の方向が変わっていないことから、まだ太陽系内にいるものと判断された。NASAは、星間空間に到達すると磁力線の方向が変わると予想している。
予測では、今回到着した領域は、太陽系の磁気粒子と、太陽系外の星間空間の磁気粒子が合流する地点と考えられている。
NASAは、あと数ヶ月から数年で、太陽系の果てに到達するとの見通しを示した。
2013(平成25)年6月27日、NASAは、123.9auの距離にあるボイジャー1号は「太陽系の最も端の領域」に到達したと米科学誌サイエンスで発表した。
太陽風が減る一方、太陽系外からの宇宙線が増えているとされる。今後磁場の向きが急激に変わることが予想されており、それが太陽系を出た証拠になるとしている。
NASAは、あと数ヶ月から数年で、太陽系を出て恒星間領域に到達するとの見通しを示した。
NASAは、ボイジャー1号は太陽系外に出たとしている。このボイジャー1号とは2025(令和7)年頃まで通信が可能と考えられている。
2013(平成25)年9月12日、NASAは、2012(平成24)年8月25日頃には既に太陽系外の恒星間空間に出ていたと発表した。
恒星間空間を1年以上飛行したが「現在も太陽の影響をなお一定程度受けている」とし、NASAの研究者らは「太陽の影響を全く受けない宇宙空間にボイジャーが入る時期は不明」とした。
やがて恒星間空間にある衝撃波面バウショックを通過すると見込まれている。
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