送電
読み:そうでん
外語:transmission

 電力を、発電所や変電所から電線を通し需要地へ送ること。対するは受電
目次

概要
 電力利用が始まった当時は直流発電・直流送電だったが、実際に直流で送電しても、技術的な問題から、発電所から1kmも離れると電球もまともに光らなかった。当時の技術水準で広範囲に送電するためには多数の発電所が必要になってしまうため、事実上、直流送電というのは不可能であった。
 対し、当時は交流技術はまだ未完成であり、交流で動作する発電機やモーター、そして効果的な絶縁方法が開発されていなかった。そのため、交流が原因となる火災や感電事故も多く発生していた。
 現在では、様々な利点から交流発電・交流送電が普及し、送電線三相交流、各家庭へ配電される配電線の電力も電柱までは三相交流で、ここから家までも、やはり交流である。ただ近年では、離島間での送電などで、送電線に直流を使う直流送電も使われている。

特徴

送電
 送電というのは奥が深く、それだけで一つの学問である。
 送電に交流を使うようになったのも、技術の発展に伴う成果であり、また二相、四層、六相などではなく三相に落ち着いたのも、これがもっとも効率が良く、コスト安となることが研究から明らかになったためである。
 また近年では、送電損失を下げるため直流送電も実用化されている。

系統と電圧
 現在では交流技術も発達し、遠距離でも効率的な送電が可能となった。
 日本では、普通15〜50万V、時に100万Vもの超高電圧で送電している。一般的なスタイルでは、日本では3段階の系統に分かれており、次のようになっている。
  1. 基幹系統
  2. 二次系統
  3. 配電系統
 基幹系統は数十万V、二次系統は数万〜10数万Vである。ここまでが送電線と呼ばれる系統である。
 そして電柱の間を這っているのが配電系統の一例で、最上部に並行に配された3本の電線が6600V程度の三相交流になっていることが多い。この系統は一般に配電線という。

経路
 発電所から家庭までの経路の概略。あくまで一例であり、異なる系統をもつものもある。
 発電所→超高圧変電所→一次変電所→配電用変電所→柱上変圧器→家庭
  1. 電気事業用電気工作物(発電所) 火力発電所原子力発電所水力発電所などで発電された電気は、所内の変電所で変圧され、外に出る。
     出てくるのは一般に超高圧送電線で、27万5千ボルトや50万ボルトである。
  2. 超高圧変電所 ここで15万4千ボルトに下げられる
  3. 一次変電所 ここで6万6千ボルトに下げられる。
     大ビルディング、大工場へは、ここから送られる。
  4. 配電用変電所 ここで6,600ボルトに下げられる。これが最後の変電所であり、以降は送電線ではなく配電線という。
     ビルや中工場へは、この電圧で供給される。
  5. 柱上変圧器 電柱の上で、200ボルトや100ボルトに下げられる。
     住宅、商店、小工場へは、この電圧で供給される。

送電線
 送電線材料には抵抗重量からアルミニウムなどが使われる。
 また、送電線を固定するためには碍子が使われる。

技術

送電の課題
 送電において重要な事には、次のようなものがある。
  1. 送電線によるロスを減らすこと
  2. 異常電圧時の絶縁破壊への対策
  3. 送電事故発生時の保護
  4. 無線機妨害の抑制

送電損失

損失
 送電する時、電気エネルギーの一部は電線抵抗により損失となる。
 この損失の大きさは、電流の2乗に比例して大きくなる。つまり、電圧を一定にしたまま電流を増やせば損失は増えるが、電流が一定であれば電圧をいくら上げても理論上損失は変わらないということである。
 電力=電圧×電流なので、電力が一定なら、送電ロスは電流に比例し電圧に反比例することになる。大電力を送るとき、より少ない損失で送るためには電流は出来るだけ小さく、電圧は出来るだけ高くすれば良いことになる。超高圧送電線などで超高圧で送電するのは、この理由による。

高圧送電
 交流送電の場合、変圧器で簡単に電圧を変えることができるので、電圧を高くして送り、必要な場所で必要な電圧に下げれば、効率的な送電が実現できる。また、三相とすることで、電線一本あたりの電流は58%(1/√3倍)で済むため、ロスの原因である電流を減らすことができる。
 一方、直流送電では原理上変圧の方法がないため、利用する電圧のまま電流を大きくして送電するしか方法が無いが、電流の大きさは技術的な限度があるため、損失も幾何級数的に増大することになる。このため実用化が遅れたが、現在は長距離送電用として使われる例が増えてきている。

事故時の保護
 送電線のインダクタンスと対地間容量による共振、特に送電先が無負荷の場合などには、電圧が異常に高まることがある。三相であれば送電電圧を下げる事も可能。
 また中性点接地により、異常電圧の抑制、継電器の確実な動作、地絡電流の抑制、などが可能となる。

無線機妨害の抑制
 負荷が不均一になり電流経路が不平衡になると、磁場が発生する。このため船舶や航空機が使っている磁気コンパスに影響を与えたり、無線通信を妨害する可能性がある。
 三相交流であれば、この場合でも循環電流が3本の電線内で収束して大地電流も減るため、影響が少なくなる利点がある。

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