こうのとり
読み:こうのとり
外語:KOUNOTORI
日本の宇宙ステーション補給機の愛称。
国際宇宙ステーション
(ISS)に物資を輸送するため、
H-IIBロケット
の先端部に搭載される無人輸送船。正式名称はHTV(H-II Transfer Vehicle)。
目次
概要
仕様
一覧
特徴
構造
補給キャリア
技術
ランデブードッキング方式
他に応用された技術
商品価値
需要
対抗
補足
初打ち上げ
愛称選定
概要
ロケットで上空300kmまで打ち上げられた後、こうのとり自身の小型エンジンで自力運行し、国際宇宙ステーション(ISS)まで物資を運搬する。
大きさは、
直径
4.4メートル、全長約10メートルの、巨大な円筒形をした宇宙船である。
「こうのとり」は国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ無人補給機で、運搬後は国際宇宙ステーション内のゴミを詰め込んで大気圏に突入、燃え尽きる運命である。これ自体は非常に需要があるが、今後は、帰還カプセルで物資を回収できる「HTV-R」の開発を目標としており、更に、将来の有人宇宙船につながる重要な一歩に位置づけられている。
仕様
全長: 9.8m (メインスラスタ含む)
直径: 約4.4m
質量
補給品を除いた機体質量: 約10.5トン
総質量: 最大16.5トン
推進剤
燃料 MMH(モノメチルヒドラジン)
酸化剤 MON-3(一酸化窒素添加四酸化二窒素)
補給能力: 合計 最大約6.0トン
与圧部(船内物資) 最大約5.2トン
非与圧部(船外物資): 最大約1.5トン
廃棄品搭載能力: 最大約6トン
一覧
全9機が計画されている。
こうのとり1号機
(2009(平成21)年9月11日)
こうのとり2号機
(2010(平成22)年1月22日)
こうのとり3号機
(2012(平成24)年7月21日)
こうのとり4号機
(2013(平成25)年8月4日)
こうのとり5号機
(2015(平成27)年8月19日)
こうのとり6号機
(2016(平成28)年12月9日)
こうのとり7号機
(2018(平成30)年9月27日)
こうのとり8号機
(2019(令和元)年9月25日)
こうのとり9号機
(2020(令和2)年5月21日)
9号機までが計画されており、その次は次世代機HTV-Xが計画されている。
特徴
構造
機体は三つの部分に分かれている。
先端 ‐ 補給キャリア
中央 ‐ 電力モジュール
後部 ‐ 推進モジュール
積載される貨物は先端の補給キャリアに詰まれる。
中央には制御や通信などを行なう電子機器や電力供給系が搭載される電力モジュールがある。
最後部は軌道変換用のメインエンジン、姿勢制御用RCSスラスタとそれに推進剤を供給する燃料・酸化剤タンク、高圧気蓄器等が搭載される推進モジュールである。
より詳細には、次のような構造となっている。
補給キャリア
与圧キャリア(Pressurized Carrier)
ハッチ(Hatch)
前方RCSスラスタ(Foward RCS Thruster)
航法灯(Navigation Light)
非与圧キャリア(Un-pressurized Carrier)
太陽電池
(Solar Cells)
暴露ペイロード(EP Payload)
暴露パレット(Exposed Pallet)
電力モジュール(Avionics Module)
電装品(Avionics)
Li-ion 一次バッテリ(Li-ion Non-rechargeable Battely)
地球センサ(Earth Sensor)
推進モジュール(Propulsion Module)
推進薬タンク(Propellant Tank)
メインエンジン(Main Thruster)
補給キャリア
こうのとりには、1気圧に保たれている先端の「与圧キャリア」(Pressurized Carrier)と、真空に晒される「非与圧キャリア」(Un-pressurized Carrier)がある。
ISSとの出入口は与圧キャリアに設置されるが、1.2m四方と広く確保されているのが特徴で、大型の装置も与圧しながら積載、運搬が可能となっている。
いずれも自動操縦で飛行して宇宙ステーションとドッキングでき、将来的に宇宙ステーションへの物資運搬で中心的な役割を果たすものとして期待されている。
こうのとりは一回使い切りで、再利用はされない。国際宇宙ステーションに荷物を運んだ後は、国際宇宙ステーション内のゴミを詰め込んで
大気圏
に投入され、
大気
摩擦で焼却される。これにより、
スペースデブリ
対策にも活躍できる。
技術
ランデブードッキング方式
こうのとりは、人や物資を乗せ、国際宇宙ステーション(ISS)の共通結合機構(CBM)に結合することができる。
CBMは自動ドッキングに対応していないため、ISS近傍で安全に相対静止し、それをISSのロボットアームを使用して把握し、ISSに手動で結合する。日本が開発した安全性の高いこの連結方式を「ランデブードッキング方式」という。
この方式は、他の方式(スペースシャトルのドッキング方式、ヨーロッパの宇宙ステーション補給機ATV、ロシアのプログレス補給船のドッキング方式)と比較して、次のような利点がある。
貨物区画の開口部が広く、大きな荷物の出し入れができるようになる
入手性が良い
ISSから約10mまで近付いて停止するなどは、かなり高度な技術が必要となる。
この方式は国際間で標準的な方式となり、アメリカの米国の民間宇宙機ドラゴン宇宙船やシグナス宇宙船にも採用された。
他に応用された技術
こうのとり用に開発された、電池セル、メインスラスタ、ISSへの近傍接近システムなどが、米国の民間宇宙機シグナス宇宙船で採用された。
応用範囲が広がれば、日本国内の民間企業の機器受注にも繋がるなどメリットが大きい。
商品価値
需要
国内需要のみならず、アメリカの複数企業からの活用打診が存在する。
アメリカでは2010(平成22)年にスペースシャトル退役が決定しているが、その後継は開発中であり、代用品がない。ISSまでの物資運搬用として、日本が開発中のこうのとりに注目が集った。無事に成功したことで、採用されるかどうかが今後検討されてゆくと思われる。
こうのとりはH-IIBロケットで打ち上げることが想定されてはいるが、その仕様から、米のアトラスロケットやデルタロケットでも利用可能である。
そもそも米国が日本の宇宙船を使うなどということ自体かつては考えられなかったことだが、これは日本の航空産業の未来が関わるほどの大きな出来事である。
対抗
上でも少し述べたが、国際宇宙ステーションに荷物を運搬する補給機には、現状では次のようなものがある/あった。
ロシア・
プログレス
ロシア・
ソユーズ
アメリカ・
スペースシャトル
欧州・ATV
JAXA HTV(こうのとり)
この中で、大型の機材を運べるものは、スペースシャトルと「こうのとり」しかないが、スペースシャトルは遂に退役し、結果として日本の「こうのとり」に大きな期待が寄せられることになった。
「こうのとり」は無人輸送機として大きな需要があり、今後、ビジネスとしても成功することが期待されている。
また、有人宇宙船もソユーズとスペースシャトルしかなくスペースシャトルは退役するため、これはソユーズのみとなってしまう。今後は、HTV-Rとして有人宇宙船へと進化させる計画があり、このためにロケットも、
H3ロケット
が計画されている。
補足
初打ち上げ
最初のこうのとりは、まだ名前がなく「HTV技術実証機」と呼ばれていた。
当初は2005(平成17)年頃に「H-IIAロケット増強型」で「HTV技術実証機」が打ち上げられる予定だったが、遅延。
その後、「H-IIAロケット増強型」は「
H-IIBロケット
」に名称が変更され、
H-IIBロケット試験機
で2009(平成21)年9月11日に打ち上げられた。
実験をしながら徐々にISSへと接近、2009(平成21)年9月18日にISSから10mの位置まで接近し、ISS滞在中の宇宙飛行士がロボットアームを使って把握、その後ロボットアームで移動させISSに結合された。もって実験は大成功となった。
積荷を降ろした後は予定通りゴミ捨て場となりISS内の廃棄物を積載、2009(平成21)年10月31日にISSから離脱、11月2日に大気圏に突入され大部分が燃え尽きた。
愛称選定
2010(平成22)年8月27日〜2010(平成22)年9月30日まで、HTVの愛称を募集、2010(平成22)年11月11日に「こうのとり」に決定した旨、発表された。
「こうのとり」は大切なもの(赤ん坊、幸せ)を運ぶ鳥であり、国際宇宙ステーション(ISS)に重要な物資を運ぶHTVのミッション内容を的確に表わしている、として選定された。
これにより、HTVは「こうのとり」の愛称で呼ばれることになり、さかのぼって最初のHTV技術実証機は「
こうのとり1号機
」と呼ばれるようになった。「こうのとり」の名前での最初の打ち上げは「こうのとり2号機」(HTV2)である。
なお、応募総数17,236件(Web 13,528件、FAXハガキ等1,077件、応募用紙2,631件)で、うち有効応募総数17,026件、「こうのとり」提案者数は217名だったとされ、「こうのとり」提案者全員に認定書と記念品が送付された。副賞は、抽選で「種子島宇宙センターでの打ち上げ見学ご招待」であった。
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