VOCALOID
読み:ボーカロイド
外語:VOCALOID

 ヤマハの開発した音声合成エンジンの名。
目次

概要
 人間の声の録音をデータベースとし、このデータを加工することで合成音声で歌声を実現させるシステムである。
 楽器メーカーのヤマハらしく、「喋らせる」のではなく「歌わせる」ことを前提に開発されたシステムであるため、VOCALOIDは自然な歌声を実現させている。
 現在は、自然な歌声を実現させたVOCALOID2を経て、更に改良されたVOCALOID3が現行製品となっている。

特徴

商標
 VOCALOIDはヤマハの登録商標である。この商標は、二回に分けて登録されている。
 衝撃的事実は、その「称呼」にある。
 最初(第4722616号)の登録では称呼は当初「ボカロイド」「ボキャロイド」とされ、次(第4813643号)の登録では称呼は「ボカロイド」とされていた。後に、最初(第4722616号)の登録は「ボーカロイド」「ボキャロイド」に変更された。
 ここから、当初案は「ボカロイド」だったが、普及した際に一般に「ボーカロイド」と呼ばれるようになったことから現状に合わせた、と見ることができる。

製品

ライセンス提供
 ヤマハ自身は、これを単独の製品として市販せず、音声合成エンジンをソフトウェアメーカー等にライセンス提供するという方針で製品展開をした。
 このエンジンを用いた製品が世界各国で販売中である。
 ヤマハ自身による初の製品は、VOCALOID2を使ったVY1である。

VOCALOID(1)
 イギリスのZERO-G製品は、日本では他のVOCALOIDシリーズと同様にクリプトン・フューチャー・メディアが扱っている。
 VOCALOID(1)の製品は以上のみで、以降はVOCALOID2である。

VOCALOID2
 初音ミクの爆発的ヒットにより、遂に日の目を見ることになったのがVOCALOID2である。
 製品の簡易な説明はVOCALOID2を参照のこと。
 VOCALOID2製品は、初音ミクの成功にならい、ビープラッツのVY1/VY2以外は全てイメージキャラが設定されている。
 様々な製品が雨後の筍のように登場するも、全てが初音ミクの前にはかすんで見えるほど、初音ミクはその影響力が大きくまた完成度が高かった。

VOCALOID3
 VOCALOID3の各製品が2011(平成23)年10月21日発売。
 同時発売のタイトルは、日本語版だけで3製品。その他に、多数、発売予定のライブラリが存在する。

VOCALOID4
 VOCALOID4の各製品は2014(平成26)年12月下旬発売予定。

商利用
 各種商媒体へも進出している。

カラオケ
 膨大な量の「VOCALOIDオリジナル曲」が登場したことから、現在はこれら曲のカラオケ登録が真っ盛りである。
 JOYSOUNDが熱心に登録したことからカラオケ人気がDAMからJOYへと移った。DAMも慌てて登録を始めたが、全てが後の祭りの印象である。2011(平成23)年現在、カラオケ店で、まず埋まるのがJOYSOUNDの部屋となっている。

テレビ放送
 テレビ番組等の主題歌等として初めて利用されたのは、次の番組である。

沿革

世界初のVOCALOID
 VOCALOIDはヤマハによって開発された。
 そして、世界初のVOCALOID製品はイギリスのZERO-Gが発売した「LEON」(男声)と「LOLA」(女声)だった。
 しかし、これは全く売れなかった。

日本初のVOCALOID
 日本初のVOCALOIDは、北海道のクリプトン・フューチャー・メディア(以下クリプトン)が開発したMEIKOである。こちらは当時3000本を売り上げ、1000本売れればヒットとされるバーチャル楽器カテゴリーとしては異例の売上本数を達成した。
 しかし、これに続いたKAITOは当時500本しか売れず、大失敗だった。
 ここから、メガヒットを達成する次、初音ミクに向けてのアイディアが練られ始めるのである。

アニメキャラで
 英国で作られたLEON/LOLAは、パッケージがリアルな唇の写真だった。これが売れない原因だろうと、クリプトンは分析した。
 そして、そこはアニメ大国日本である。MEIKOでは、アニメキャラ風のイラストを採用したところ、実際にヒットした。が、同様にしたKAITOは売れなかった。DTM市場はその8割が男性であると言われており、男ではだめだ、という結論に至る。
 男性ミュージシャンは繊細な人が多く、女性に声を掛けるのが苦手な人が多い。従って、折角曲を書いても、それを女の子に歌わせることは極めて困難なのがこれまでだった。ここに登場したのがMEIKOで、これがヒットした理由だった。

ミクは可愛いキャラで
 VOCALOIDは歌が上手いが、それだけでは物足りない。どうせなら、面白い、可愛い、格好いいなどの特徴的な波形があれば、新しいキャラクターが作れるに違いないと考えたと、クリプトンの伊藤社長は語っている。
 かくして、紆余曲折の末「キャラクター・ボーカル・シリーズ」となることが決定。魅力的な「アニメ声」を求め、全く異世界だった声優事務所への問い合わせを開始、唯一アーツビジョンがそれに興味を示し、同社所属の声優を使うことになった。
 所属500人全員分のサンプルボイスを聴き、その中から藤田咲を選び出した。理由は「分かりやすく、可愛らしかった」から、とされる。
 「初音ミク」のコンセプトは、16歳、初恋の年齢で、かわいらしい、未来のアイドルの声、であった。

メガヒット
 雑誌の紹介も断わられ、社内にも反対者はいたが、伊藤社長は絶対の自信があった。そして、実際に初音ミクはメガヒットを遂げることになる。
 「楽器」としてだけではなく、「バーチャルアイドル」としても急成長、同様にバーチャルアイドルの人気獲得を目論んでいた他社から猛烈な攻撃を受けたりと、世間を騒がせる一作となった。
 ミクはシリーズ一作目であったが、ここで失敗したら次があったかどうか疑わしい。ブームを起こせた最大の理由は、やはり「可愛い」というコンセプトの選定が正しかったからだと言える。
 ミクの、癖のない可愛らしい声は用途が広く、もって色々な曲のボーカルとなったのである。そして藤田咲の声が、奇跡的にVOCALOID2のエンジンとよく適合したことも大きかった。

鏡音リン・レン
 ミクのヒットを受け、次いで登場したのが鏡音リン・レンである。
 今回のコンセプトは、ミクの「かわいい声」に対し、「張りのある声」「力強い声」とされた。ミクと共に使えて、更に楽器としての多様性を持たせる。これに合致したのが、下田麻美であった。
 ミクの人気が高まった時点で、男の子の声も欲しい、という意見はあったが、KAITOで失敗している手前、難しい判断を迫られた。しかしミクのヒットで資金的に余裕があったことも手伝い、初期の予定にはなかった男の子レンが追加され、一人二役で演じて貰うことになった。まさに声優ならでは、といったところである。
 そして、こちらも同様にヒットを遂げた。

再評価
 初音ミクのヒットを受け、実際殆ど知名度の無かったMEIKO/KAITOという存在に改めて注目が集まった。
 MEIKOはハードな曲に向いていることが徐々に判明、KAITOは童謡などの柔らかい曲向きであった。かくして、こちらも徐々に売れてゆくようになる。こうして、ここまでで個性豊かな和製VOCALOIDファミリー5人が揃った。
 これ以降、様々な和製VOCALOID2製品が登場することになる。

今後の展開

Project if...
 クリプトンは「Project if...」として、新しいシリーズ展開をするとしている。
 第一弾は「無垢で子供らしい声」として、ミュージカルで訓練を受けている子供の声を使った製品が計画されているらしく、この声で「崖の上のポニョ」を歌わせたものが公開された。ミクの後、全て失敗のクリプトンにしては完成度の高い歌声に注目が集まった。誰の声かは公表されていない。

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