初音ミク
読み:はつね-みく
外語:HATSUNE MIKU

 クリプトン・フューチャー・メディア(以下クリプトン)より発売された、音声合成ソフトウェアの商品名。
目次

概要
 このソフトウェアは、ヤマハの開発した音声合成エンジン「VOCALOID2」を採用し、実際に人間から録音された音声データを音声ライブラリとして追加した製品の一つである。
 計画では、キャラクター・ボーカル・シリーズ(CVシリーズ)として3作が予定されており、そのうちの第一弾「01」として2007(平成19)年8月31日にリリースされたものが初音ミクである。そしてパッケージには、青緑色の長い髪に、インカム(ヘッドセット)を付け、近未来的な服装をしたアンドロイド、バーチャル・シンガーとして、キャラクター「初音ミク」が描かれている。
 
 拡張音源パックの「初音ミク・アペンド」も2010(平成22)年4月30日に発売された。
 
 なお、第二弾「02」の鏡音リン・レンは2007(平成19)年12月27日発売、第三弾の巡音ルカは2009(平成21)年1月30日にリリースされた。

特徴

DTM界激震
 このソフトウェアの登場により、壊滅状態だった日本のDTM界には激震が走った。
 自作曲に初音ミクのボーカルを付けて公開する、ということが徐々に始まり、新しい形での表現として注目されるようになった。
 かくして、日本のDTMは再び復活の兆しを見せ始めた。

声優やキャラデザイン
 初音ミクは、キャラクターデザインはKEI、音声は声優・アニメソング歌手の藤田咲が担当した。
 初音ミクの名前の由来は、「まだ見ぬ未来から、初めての音がやって来る」。
 初音ミクを上手く用いると、あたかも人間が歌っているかのようなリアルな歌声を作ることができる。なお、キャラクターはパッケージに描かれるのみであり、実際のソフトウェアには登場しない。

使用条件

許諾条件
 初音ミクは、次の二つの許諾条件を承認しないと利用できない。
 使用許諾条件上、VOCALOID 2で生成された自作曲は、作成者名義の作品として公開・販売することが基本的には許されている。初音ミクは「楽器」という扱いだからである。
 つまり、自作曲にミクのボーカルを乗せた作品は、特別な料金なく販売できる。逐一の許諾も必要ない。
 但し、当然のことながら、これには一定の条件が付けられている。

使用許諾契約の要約
 やって良いこと、悪いこと。
  1. 公序良俗に反するものは不可
  2. 歌手に歌わせたかのような演出をした映像作品は不可
  3. 商用カラオケ、商用着メロは不可
  4. 商用でも、自分名義で発表する作品に使用する場合は可
  5. VOCALOIDや初音ミク名義では商用不可
  6. 非商用なら、1と2以外はすべて可

公序良俗
 「公序良俗に反する歌詞」の作品は、公開が禁止されている。
 卑猥な歌詞を歌わせたり、あえぎ声を出させたり、他人を誹謗中傷したりしたものを、公開してはいけない。
 また、犯罪に用いてもいけない。

名義を前面に出さない
 「VOCALOID」や「初音ミク」という名を、前面に出してはいけない。VOCALOIDはYAMAHAの、初音ミクはクリプトンの商標であり、商標の利用は別の契約が必要である。
 つまり、利用者が作詞、作曲し、ミクのボーカルを付けたものを公開することは可能だが、その際に「歌手 初音ミク」あるいは「VOCALOID」などと記載することが、許されていない。
 言い換えれば、商標さえ出さなければ、使用は比較的自由度が高い。楽器として常識の範囲内で用いる分には、商用利用であっても制限は殆どないと言える。実際に、NHKでも初音ミクのボーカル曲を流した実績がある。

動画サイトでの公開
 ミクの画像などの無断使用は、本来は著作権侵害である。しかし、著作権侵害は「親告罪」であるので、クリプトンが黙認する範囲であれば大きな問題にはならない。
 「音楽だけ」で盛り上がらないことはクリプトン側も理解しているようで、例えば、ニコニコ動画やYouTubeへのアップロードなどでの公開について、公式画像をそのまま利用したものであっても、現在のところクリプトン側は黙認している。
 公序良俗に反する歌詞の曲も少なからずある。殆どについては黙認されているが、一部についてはクレームが入り、ニコニコ動画から削除されている。

二次利用の条件
 クリプトンは、初音ミクのイメージ画像(以下、原素材)を公開している。これをモチーフとした制作物(以下、二次創作物)については、次の範囲で許可している。
  1. 個人または同人サークル等が作成し
  2. 自らの創作によるもので
  3. 営利目的ではない趣味の範囲で制作し頒布する場合
  4. 但し、立体物、衣装を除く
 次のものは、頒布の制限が行なわれることがある。
 次のものは、頒布が許諾されない。
 いわゆるエロ同人誌が今後続々と登場することになるが、これは頒布が許諾されない『公序良俗に反する「二次創作物」』に該当することは自明である。
 但し、今のところクリプトン側は、これについては黙認姿勢のようである。なお、「立体物」の公序良俗に反する「二次創作物」である「同人エロ抱き枕」は、クリプトンにより規制された。
 ピアプロに、コンテンツに関するガイドラインとして、簡単なガイドラインに加え、「キャラクター・ボーカル・シリーズ製品の使用許諾契約」の全文PDFと、「利用規約//ガイドラインに関するQ&A」が掲載されている。

それ以外の条件
 趣味の範囲を超える利用は、念のためクリプトン側に相談した方が安全である。
 基本的な許諾条件は「無料で利用可能な範囲」を規定したものであるので、「本格的に売る」場合は必要な「契約」をし、ライセンス料を支払う必要があるわけである。
 これだけの性能があって、価格が1万5000円程度にすぎないのだから、この程度の条件が附されるのは当然といえば当然である。

商利用
 各種商媒体へも進出している。

カラオケ
 カラオケではJOYSOUNDが積極的に登録している。ニコニコ動画利用者を想定していると見られる。しかし、JOYSOUNDは音が悪い。まともに唄える音質ではない。
 対するDAMは音質が良いが、登録が出遅れた。カラオケの利用者がJOYSOUNDに偏るようになると、DAMもようやく登録に奔走し始めたが、JOYの水準に到達するのは当分困難と思われる。
 登録されている曲名については「VOCALOIDオリジナル曲」を参照。

テレビ放送
 幾つかのテレビ番組のオープニングやエンディングに使われるような状況になっている。テレビ番組等の主題歌等として利用された最初の実績は、次の通りだった。

一般流通
 流通の違いにより、CD等は「メジャーレーベル」と「インディペンデントレーベル」(インディーズ)とに大別される。
 メジャーレーベルとして一般流通に乗せられた初の作品は、dorikoの1st Single「歌に形はないけれど」(GNDR-0002)で、2008(平成20)年6月11日発売だった。
 メジャーレーベルとしても様々なCDが登場してきており、近年は複数の作家の楽曲を一枚に集めた「コンピレーションアルバム」なども数多く登場しており、音楽分野においては一定の地位を占めたものと思われる。
 「オリコン1位」も達成し、次は日本レコード大賞と紅白歌合戦出演が課題であろう。

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