モバキャス
読み:モバキャス

 携帯端末向けマルチメディア放送サービスの総称。
目次

概要
 地上デジタルテレビジョン放送への完全移行に伴い未使用となったV-High帯(VHF帯の後半)の一部、207.5MHz〜222MHz帯を利用し、ISDB-Tmm方式を用いる放送サービスである。
 デジタルに完全移行する2012(平成24)年4月1日からサービスを開始した。

特徴

沿革
 今後の予定

構成
 インフラを整備するハード事業者(基幹放送局提供事業者)と、具体的な放送サービスを提供するソフト事業者(認定基幹放送事業者)がある。ハード事業者は一社だが、ソフト事業者は複数が参入可能。
 モバキャス全体では33のセグメントが存在するが、地デジの1チャンネルに相当する13セグメントを用いる大規模事業者はmmbiである。
 33セグメント中、mmbiのみの頃は20セグメントは余っていた。ここに新たなソフト事業者が追加された。

試験放送
 放送開始当初は、東名阪および主要都市から展開し、その後、早期に全国へエリア拡大を図る計画である。
 試験電波は、まだアナログ放送が続いている東北を避けて、以下の関東地域で配信された。いずれも対応製品発売前である。

対応機器
 最初の対応製品は、2012(平成24)年3月23日発売のNTTドコモ用シャープ製Androidスマートフォン「SH-06D」だった。
 放送開始前に発売されたのは、次の2機種である。
 これ以降に発売されたNTTドコモのスマートフォンでも、対応は全機種ではないが、2015(平成27)年までに発売された機種では対応している機種が多い。

存在意義

総務省
 テレビ放送は利権と化した現在、局の偏向や番組のつまらなさから、テレビ受像機が売れない時代となってしまった。
 そこで総務省は、ハード事業者(基幹放送局提供事業者)とソフト事業者(認定基幹放送事業者)の分離をもくろんだ。既存の放送局は地デジとして温存しながら、あいた電波の枠で新たな事業者の参入に期待した。
 しかしこのモバキャスの場合、ハード事業者であるジャパン・モバイルキャスティングはソフト事業者mmbiの子会社であり、実体としては両者は同じとなり、分離は実現しなかった。

mmbi
 mmbiの株主は、次の通りである。
 日テレ/TBS/フジ/テレ朝/テレ東という民放キー局が全て含まれている。

情勢
 mmbiの株主構成が何を意味するかというと、総務省に、一度は取り上げられた電波帯域の一部を既得権益が再び押さえることに成功したということである。
 「NOTTV」の契約者が全く伸びず赤字であったとしても、既得権益にとっては成功なのである。
 むしろ「NOTTV」に面白い番組があると地デジの視聴率が落ちると考えている既得権益は、「NOTTV」に面白い番組を提供する意思はない。

追加の申請受け付け
 もちろん天下の総務省が、そのまま黙っているわけはない。ハード事業者は致し方なしとしても、せめてソフト事業者は新たな流れを呼び込みたい。
 そこで総務省は2013(平成25)年12月19日〜2014(平成26)年1月28日に新たな申請受け付を実施した。そして、5社から6番組、合計12セグメントの申請があったとされている。
 総務省は2015(平成27)年4月より、新たなソフト事業者(認定基幹放送事業者)による放送を開始させた。

終焉
 全く面白い番組のない「NOTTV」は順調に低迷し、2015(平成27)年3月末現在の契約者数は175万3851件、2015(平成27)年6月末が163万7804件、2015(平成27)年9月末が154万4142件と、3ヶ月ごとに10万件ずつ契約者数は減少した。
 既得利権が帯域を押さえることができなくなったことや、NOTTVは全くふるわず契約者数も増えていないことなどから、NOTTVは終了することとなった。
 結果としては、総務省のもくろみは外れテレビのチャンネル数(番組の総数)を増やすことに失敗し、既得利権は利権を維持することに成功した、ということになる。

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