LD
読み:エルディー
外語:LD: LASER DISC: LASERVISION DISC

 レーザーディスク。オランダのPhillips社とアメリカのMCA社が開発した光学式ビデオディスクの一つ。
 レーザーディスクはパイオニアの商標で、このためLDやLV(レーザービジョン)などと呼ばれたが、1989(平成元)年に商標公開されている。
目次

概要
 直径30cmの光ディスクに、画像情報と音声情報を記録する。
 当時としては、高画質で、高音質を特徴とした。
 また、媒体には20cm径の小型版もあり、LDシングルと呼ばれた。

技術

記録原理
 LDは、CDやDVDと同様に記録層の凹凸のピットによって情報を記録する。但し、映像信号はDVDなどと異なりアナログである。
 ピットの有無で記録というと、一見ディジタルであるCD/DVDと同様に思われるが、その方式は全く異なる。LDではFM変調された映像信号が、ピットの「長さ」というアナログ値で記録されている。
 この理由で、後述するCAVでは外周の方が高画質となった。

性能
 性能としては、水平解像度が430本。
 信号は、アナログテレビ放送の放送方式そのままである。つまり日本ならNTSC、欧米ならPALの信号がそのままで記録される。
 そしてVHSのようなビデオデッキとは異なり、Y/C信号は混合状態で格納されているのが特徴である。

記録方式
 記録方式にはCAVCLVの二種類があり、CLVのほうが長時間記録することが可能である。
 CAVでは片面30分、両面で60分まで録画が可能である。
 CLVでは片面60分、両面で120分まで録画が可能である。
 ただし、CLVではその機構上特殊再生を行なう場合は画像をメモリーに保存しておかねばならず、安価なプレイヤーではCLVでは静止やスロー等の特殊再生が出来なかった。

高画質

当時の問題
 ビデオデッキ等と比較して画質が良いのは、Y/C信号に関わる問題で、Y/C合成、Y/C分離という処理が不要だからである。
 まず、アナログの放送電波では、Y/Cは混合状態である。
 テレビに映す場合や、VHSなど通常のビデオデッキに記録する際には、Y/C信号を分離する必要がある。
 また、当時はS端子やケーブルなどが存在せず、使われていた通常のビデオ端子(コンポジット映像端子)とケーブルでは、Y/Cは混合状態で送信される。

Y/C分離の問題
 さて、普通に電波を受信して表示させるためには、次の手順である。
  1. アンテナで受信
  2. テレビに入力
  3. テレビがY/C分離
  4. テレビが表示
 VHSなど通常のビデオデッキであれば、Y/Cを分離してテープに保存する。しかし当時は上述のようにS端子などが存在しなかったので、次のようになってしまう。
 この時、ケーブルで送るためだけに、Y/C分離された情報を合成し、また分離するという無駄なステップを踏んでいる。これがVHSはじめビデオデッキの画質劣化の原因であった。

LDの特徴
 そこでLDでは、ビデオと異なり最初からY/C混合状態で記録することにした。
 こうすると、次の手順となる。
  1. LDを再生
  2. コンポジット映像としてテレビのビデオ端子に送る
  3. テレビに入力
  4. テレビがY/C分離
  5. テレビが表示
 言い替えれば、LDはビデオ端子からの入力に特化した仕様である。
 後にS端子のようなものが普及しだしてからは、Y/C混合ではそれ以上の画質向上が望めないため、かえって仇ともなった。

音質
 音質面は、基本的にはビデオと同様にステレオFMアナログ音声である。また、リニアPCM(16ビット44.1kHz)音声での記録も可能で、PCMに関してはCDと同じである。
 後に、ドルビーデジタルRF信号対応(アナログ音声右チャンネル)、dtsビットストリーム対応(リニアPCM領域)などもされた。

媒体の経年劣化
 LD媒体は経年劣化する。
 LDも、CDなどと同様に記録面はアルミ蒸着層であるが、これを保護するために使われているのがメタクリル樹脂(PMMA)、つまりアクリルである。
 当時のレーザー技術、ピックアップ技術などを勘案し、光透過性などからアクリルが選ばれた。しかしアクリルは吸湿性が高いため、水分を通す。このため、結露などにより、LDのアルミ蒸着層は簡単に酸化したり腐食したりする。湿気の多い場所に保存すると、が生えることもある。
 片面のLDシングルや、CD/DVDなどはポリカーボネート樹脂が使われている。この樹脂は、アクリルよりは吸湿性は低い。但し全く通さないわけではないので、やはり経年劣化する。

時代の変遷

登場時
 LDが登場した当時、ビデオディスクとしてはVHDがあった。
 VHDは当時、日本ビクターを筆頭に、VHS陣営を引き連れて来たこともあり、松下、ソニーなど13社が参入していた。対するLDは当初パイオニアが一社だけでやっていて、勢力は比較にならなかった。
 その後、(パイオニアがOEMでソニーのVTRを販売していたこともあり)ソニーが加勢してコンパチブルプレイヤーが登場した頃からは、CDとの一環性もあり、またディジタル音声という魅力もあって音響メーカーの参入が相次いだ。その頃からVHDの旗色が悪くなったといえる。

オタクとLD
 DVDが登場する前は、逸般人の標準アイテムであるアニメはLDで提供されていた。
 その多くはCLV方式を利用し、1枚両面で4話収録100分などが標準的であった。
 こういったディスクを全話ないしクールごとにまとめて箱に入れたものはLD-BOXと呼ばれた。

繁栄と衰退
 LDはカラオケ装置、いわゆる「LDカラオケ」にも使われた。対するVHDが一般市場で忘れられた後も、業務用カラオケ分野では比較的長く続いていた。
 カラオケがブームとなる1990(平成2)年頃の最盛期には年間3000万枚のレーザーディスクが生産されたが、再生専用であったこと、レンタルは原則として禁止されていたことなどから価格は高止まりし、一般家庭へはなかなか普及しなかった。
 その後、通信カラオケの普及によりLDカラオケも徐々に減少した。
 こうして1990年代後半にDVDが登場し、これが民間にも広く普及すると、LD市場は急速に縮小し、メーカー各社は次々と撤退していった。

最後のLDソフト
 LD媒体製造メーカーとして世界で最後まで残ったのが、茨城県筑西市(旧 真壁郡明野町)のメモリーテック(MTC)だった。ここでも20cmのLDのみで、30cmのLDは既に生産していなかった。
 しかしこの会社も遂に製造ラインを停止することになり、2007(平成19)年3月27日、テイチクエンタテインメントの西山社長や音楽業界関係者を招き、MTCつくば工場にて「レーザーディスク生産停止式」が催された。
 この日、世界最後のプレスとなったLDシングルのタイトルは、テイチクLDカラオケの音多ステーション用ソフトで、川中美幸の「金沢の雨」(22DK-995)であった。
 この最後のメモリアルプレス盤はMTCにより記念プレート化され、後日西山社長より川中美幸本人へ手渡されたとされている。

最後のLDプレイヤー
 LDプレイヤーは、長くパイオニアが責任持って製造を続けたが、部品調達が困難になったことから2009(平成21)年1月14日、やむなく生産を終了する旨、発表した。
 最後の機種は、DVL-919、CLD-R5、DVK-900、DVL-K88の4機種で、今後合計約3,000台の製造をもってレーザーディスクプレイヤーの生産を終了するとした。
 修理対応については、最低保有期間(機種ごとに生産終了時を起点として8年間)の継続が表明されている。また期間が過ぎた後も、修理に必要な部品在庫がある場合は修理対応可能としている。

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