MRSA |
辞書:科学用語の基礎知識 生物名・細菌/古細菌編 (BBNM) |
読み:エムアーエスエイ |
外語:MRSA: Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus |
品詞:名詞 |
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌。日本ではなぜか「マーサ」とも呼ばれる。
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概要 |
抗生物質のメチシリンで代表されるペニシリン系、セフェム系などのβ-ラクタム剤のほぼ全てに耐性を示す黄色ブドウ球菌である。
メチシリンが世に出て僅か一年、1961(昭和36)年にイギリスで臨床分離された。
特徴 |
変異 |
β-ラクタム剤に耐性をもって生まれた細菌である。
そもそもβ-ラクタム剤は細菌のPBP(ペニシリン結合蛋白質)を標的にし、細菌の細胞壁の合成を阻害する事で死に至らしめる働きがある。
しかしMRSAは、他の菌からβ-ラクタム剤が結合しにくいPBP2'と呼ばれる細胞壁合成酵素を作る遺伝子mecAを導入してPBPと置き換えた、一風変わった黄色ブドウ球菌である。
毒性 |
MRSAであれなかれ、黄色ブドウ球菌は既にヒトの常在菌であり、健康であっても検出される。これが時々皮膚に炎症を起こしたり、あるいは入院中の患者に発症したりする。
毒性については通常の黄色ブドウ球菌と変わらない。増殖時に作られ、ヒトの腸管に作用する「エンテロトキシン」という蛋白質毒素などが主たる毒性となる。
また、院内感染菌ではなく、市中に蔓延する「市中型」の強毒性MRSAは白血球を破壊する毒素を作り、感染した乳幼児が死亡する例もあるなど毒性が強い。
SCCmec |
院内感染の原因となるMRSAと、強毒性の市中型MRSAでは遺伝子に差がある。
このうち院内感染のMRSAには、自身の病原性を抑える遺伝子「SCCmec」があることを関水和久東京大教授らが発見、2011(平成23)年1月11日に発表された。病原菌は、宿主を殺すだけだと自身も繁殖できないので、宿主を攻撃するばかりではなく、「生かさず殺さず」の戦略を取っているのではないかと見られている。この成果は、治療や薬の開発に役立つとされる。
なお、SCCmecは病院外で感染し病原性が高い市中型MRSAには存在しない。
蔓延 |
抗生物質が殆ど効かないため、病院などを中心に蔓延することとなった。
菌は1961(昭和36)年にイギリスで臨床分離された前後より世界中に広がり、現在ではMRSAの検出されない国はない。
日本では1980(昭和55)年初期から全国に蔓延し、院内感染菌の代表となった。現在、MRSA感染の治療にはバンコマイシンが主に使われる。
種類 |
MRSAは単一ではなく、複数のクローンが存在し、国により異なる。
また日本国内に限定しても、1980年代のMRSAと1990年代のMRSAとでは遺伝型が異なっている。これは、国や時代による抗菌剤の使われ方の違いによって、より強い菌が選択されるためと考えられている。
リンク |
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