細胞壁
読み:さいぼうへき
外語:cell wall
植物や菌類(真菌)など動物を除く真核生物と、細菌など原核生物の多くが持つ、細胞膜の外側を取り巻く構造物。
概要
細胞壁は植物や微生物に特有のもので、動物細胞には存在しない。
細胞壁の主要な機能は細胞の防御と補強であるが、それ以外にも様々な機能がある。
特徴
成分
植物の細胞壁は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどを成分とする。
真菌の細胞壁はキチンやグルカンなどである。
これに対して細菌の場合、ペプチドグリカンを主成分としている。
細菌細胞壁
構造
細菌の細胞壁というのは、内側がペプチドグリカン(ムレイン、ムコペプチド、ムコポリマーともいう)、外側が外膜(燐脂質)、という構造を基本とする。
ペプチドグリカンとは、ペプチド(=アミノ酸)と、グリカン(=多糖類)から構成される高分子である。
細菌細胞はこの分子の単量体(ペプチドグリカンモノマー)を細胞膜外に分泌し、これを細胞の成長(大型化、分裂)に応じ、既存の細胞壁に補充しながら細胞壁を構築する。
大雑把には、次の手順である。
- 酵素で既存の細胞壁の一部を壊す
- ペプチドグリカンモノマーの糖鎖部分を、既存細胞壁の糖鎖に組み込む
- 酵素でペプチド鎖同士を架橋
機能
細菌の細胞壁は、細胞の補強が特に重要な機能である。
細胞内の液体には様々な物質が溶け込んでおり、常に浸透圧が働いている。このため周囲より水分が入り込み、細胞を膨らませる。この膨張を一定で抑える機能を細胞壁は持っている。
一般に細菌細胞は動物細胞と比べ浸透圧が高いため、細胞壁が損なわれると細胞外の水分が細胞内にどんどん浸入し、浸透圧に抗し切れなくなり破裂、つまり溶菌を起こしてしまう。
例えば抗生物質の代表であるペニシリンは、ペプチド鎖同士を架橋する酵素を阻害し、この作用によって細胞壁の合成を阻害し、溶菌させる。こうして細菌に対し殺菌作用を示す。
再検索