宇宙背景放射
読み:うちゅうはいけいほうしゃ
外語:CMB: Cosmic Microwave Background

 1965(昭和40)年に発見され、ビッグバンの有力な証拠とされるのこと。宇宙背景輻射、宇宙マイクロ波背景放射、宇宙マイクロ波背景輻射ともいう。
目次

理論の起源と発見
 1948(昭和23)年にロシア生まれの米国の理論物理学者George Gamow(ジョージ・ガモフ)によって存在が予言された。
 1965(昭和40)年にベル研究所のアルノ・アレン・ペンジアス(Arno Allan Penzias)とロバート・ウッドルー・ウィルソン(Robert Woodrow Wilson)たちが発見した。
 元々は、この二人が悩まされていた電波雑音が宇宙のあらゆる方向から来ることを発見し、宇宙背景放射の存在を確認したものである。
 これによって、ビッグバン宇宙論は信じられるようになった。
 ガモフはノーベル賞を受賞しないまま1968(昭和43)年に他界してしまったが、ペンジアスとウィルソンは、1978(昭和53)年のノーベル物理学賞を受賞した。

特徴

起源
 宇宙誕生初期に、光子ニュートリノが作られた。これが現在も宇宙全体に一様に広がり、残っている。
 宇宙の晴れ上がりの頃、宇宙の温度は3000K程度だったと考えられている。しかし宇宙の膨張に伴い輻射温度は下がった。
 現在観測される宇宙背景放射の波長は11mmであり、2.74K(-270℃)の黒体輻射に相当し、約1/1100となる。この波長から、宇宙の晴れ上がりから現在まで宇宙は約1,100倍膨張し、光の波長は赤方偏移で大きく引き伸ばされていることがわかる。

性質や揺らぎ
 なお、この波長は電磁波ではマイクロ波に相当する。マイクロ波は水に吸収されてしまうため地上からの観測は難しく、標高の高い場所や、衛星によって観測されている。
 NASAの衛星COBEの観測によると、背景放射は満遍なく存在するわけではなく濃淡がある(非等方)ことが分かった。
 これはつまり、宇宙は生まれた時点で既に不均質だった証拠であり、この「ゆらぎ」が後に物質の濃淡を作り出し、もって宇宙の大規模構造、銀河、恒星や惑星、そして我々人類ら生物を作り出したのである。
 もしこの「ゆらぎ」が存在しなかったと仮定すると、物質は満遍なく宇宙に充満し濃度が高まらないため、銀河や恒星なども作られず、生物も生まれなかったと考えられる。
 スウェーデン王立科学アカデミーは、COBEプロジェクトの中心的人物だったNASAの天体物理学者John Cromwell Mather(ジョン・クロムウェル・マザー)と、米カリフォルニア大学George Fitzgerald Smoot(ジョージ・フィッツジェラルド・スムート)教授の2名に、2006(平成18)年のノーベル物理学賞を与えた。

方向性
 宇宙背景放射は方向によらず、ほぼ一様に見えるが、実際には僅かに方向性を持っている。
 地球からの観測では、しし座の方向がわずかに強く、反対にみずがめ座の方向がわずかに弱い。宇宙背景放射自体が一様と考えると、観測される方向性は、地球が宇宙に対して移動しているために起こると考えることができる。
 実際には地球や太陽系という規模だけではなく、銀河系自体が移動しているのであり、うみへび座・ケンタウルス座超銀河団の方向にある「グレート・アトラクター」の方向へと向かっている。

考え方
 このニュートリノは人体を毎秒千兆個以上も貫通しているとされるが、他の物質と反応しないため、人体には殆ど影響はない。
 また、背景放射が約3K(-270℃)であることをもって、宇宙の温度は約3K(-270℃)だ、とするのは大きな誤りである。正確には「宇宙は温度換算で3K(-270℃)の背景輻射に満たされている」というだけに過ぎず、「3K(-270℃)の温度である」とは違うということである。

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