劣化ウラン
読み:れっかウラン
核分裂連鎖反応を起こさないウランのこと。
概要
原子炉用核燃料や核兵器で用いられるウランは、同位体の一つウラン235(235U)である。
しかしウラン235は天然にあるウラン中、約0.7%程度しかない。
原子炉では概ね2〜4%程度の濃度、核兵器ではほぼ100%の濃度が求められるので、複数同位体が混合した天然ウランを集め、その中のウラン235の濃度を高める加工作業が行なわれる。
すると、精製加工後にはウラン238などの核分裂連鎖反応を起こさないウランが残滓として残ることになるが、これを俗に劣化ウランという。
特徴
用途
劣化ウランは核分裂連鎖反応を起こさないため、いわゆる核兵器としては利用できない。
しかし質量の大きい重金属であり、密度も高く非常に硬いため、これを砲弾の貫徹体に利用することもある。これが俗にいう劣化ウラン弾である。
この砲弾でキノコが咲くことはない。
毒性
劣化ウランの毒性であるが、これは海水中や土砂中など、環境中に自然に存在するウランより小さいと考えられている。
劣化ウランの毒性は大きく、「重金属としての毒性」と、「放射線による影響」に分けられる。
このうち重金属としての毒性は、自然環境中に元来存在するウラン(天然ウラン)の毒性と全く同じである。
放射線については、劣化ウランはγ線を放出する娘核種を殆ど含まないため、自然のウランの1/100程度と影響は少ないとされている。
このため劣化ウラン弾から劣化ウランが全て放出されたと仮定しても、その濃度ないし放射線量は、自然環境に元来ある自然のウランの濃度と比較しても極めて小さく、環境影響は無視できる範囲である。
実際に日本でも、かつて自衛隊が劣化ウラン弾を用いたことがあり、その後5年間にわたり環境調査を実施した。結果、劣化ウランによる環境影響は全く認められなかった。
排斥運動
日本には嘘か本当か分からないような(実際には嘘だが)劣化ウランの恐ろしさを聲高に主張する者がいる。
実際の毒性は前述の通りで、深刻な汚染が現実に生じたという報告はない。
劣化ウラン弾でなく鉛弾なら環境への影響が無いのかと言えば、それも違うことは自明である。
従って、ウランという言葉だけで目くじらを立てて、まるで明日にでもガンで死ぬかのような恐怖心を煽るのは、無知な者を扇動するような何らかの意図があるのだと思われる。
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