ボンベイ型
読み:ボンベイがた
外語:Bombay

 ABO式血液型の表現型のうち、O型のバリエーションの一つ。
 100万人に1人の割合で存在するとされる稀血の一つ。Oh型とも書く。インド西部のボンベイ地方に多いことから、この名がある。
目次

概要
 糖鎖構造の特徴により赤血球からA抗原・B抗原・H抗原を検出できず、血清中に抗A抗体、抗B抗体、抗H抗体を持つのが特徴。
 ボンベイ型は通常のO型と同様に抗A抗体と抗B抗体を持つため、通常の血液型判定ではO型と判定される。しかし同時に、通常のO型が持たない抗H抗体も持っているのが異なる。
 この血液型は糖鎖構造によるものなので、実際にはABO式血液型などと同列に扱われるべきものとは違う。

糖鎖構造

通常
 通常、赤血球の細胞膜には糖鎖が存在する。血球膜‐(糖鎖)‐[H抗原]までの構造は通常なら誰でも同じで、H抗原に更にA抗原やB抗原が付くかどうかによりABO式血液型が決まる。
 A型ならH抗原の糖鎖の先頭にアセチルガラクトサミンが、B型ならガラクトースが結合する。AB型は両方を持っている。

ボンベイ型
 ボンベイ型は、[H抗原]が遺伝的要因により、存在しない。
 ボンベイ型では、H抗原の転位酵素が不活性のため、一般の赤血球には必ず含まれるH抗原が存在せず、血清中に抗H抗体が存在する特殊な血液型となる。なお、造血系のみ不活性となり、唾液中にはH抗原が分泌される場合はpara-Bombay型と呼ばれる。

糖鎖の形成
 H抗原はH遺伝子がコードする「フコシル基転移酵素」によって糖鎖に付加される。しかしH遺伝子が変異したh遺伝子をホモに持つ人にはH抗原がない。
 A型の酵素α-N-アセチルガラクトサミニル転移酵素や、B型の酵素α-ガラクトース転移酵素はH抗原にA抗原やB抗原を付加する酵素なので、H抗原がなければ機能しない。従って、遺伝子型がhhAA、hhAO、hhBB、hhBO、hhABは、いずれも表現型がO型になってしまう。
 しかし、こういった明らかに通常のO型ではない特殊なO型を、ボンベイ型という。

輸血
 ボンベイ型の血清中の抗H抗体は、非ボンベイ型の赤血球のH抗原と反応し、赤血球を破壊してしまう(溶血)。
 このため基本的に、ボンベイ型の人に輸血できるのはボンベイ型の血液だけである。

子供の血液型
 また、この血液型の人が結婚し子供を作った場合、例えばhhAB×HHOOとすると、一見O型同士なのに子供にA型(HhAO)やB型(HhBO)が生まれることになる。
 日本でも、不倫相手の子なのではないかと訴訟にまで発展した事件があったらしい。

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