プリオン
読み:プリオン
外語:PRION: PROteinaceous INfectious particle

 プリオン病の病原体である蛋白質。英名PRIONは「感染性を持つ蛋白粒子」という意味の略語である。この病原体はBSL-3(バイオセーフティーレベル3)に分類される。
目次

概要
 この蛋白質は、次のような病気の原因となると考えられている。
 上記のような病気を総称して「プリオン病」という。この疾患は人獣共通感染症であり、ヒトを含む広範囲の哺乳類種が罹患する。

特徴

正体
 「プリオン蛋白」自体は、特に病気ではなくても、人間のなどに存在する。つまり、プリオン蛋白自体は正常時にも存在する。その機能についてはまだ解明されていないが、一部の幹細胞の増殖を促す機能を持っているらしい。通常の状態であれば病原体ではなく、これを「正常プリオン蛋白」(PrPC)と呼ぶ。
 人間の場合、20番染色体にあるプリオン遺伝子(PRNP)がプリオン蛋白を産生する。
 プリオン蛋白は細菌でもウイルスでもない単なる蛋白質であり、遺伝子を持たないため自己増殖もできない、つまり生物ですらない。

異常化
 異常な形になってしまったプリオンは感染性を持った蛋白粒子と化し、周りの普通のプリオンを次々と異常プリオンに変えてしまう。これを「異常プリオン蛋白」(PrPSc)という。
 異常プリオンに感染すると、牛で5年程度、人間の場合で10〜20年程度の潜伏期間を経てから、致死性の認知症(痴呆症)を発症する。

形状の差
 正常プリオン蛋白(PrPC)は蛋白分解酵素で消化できるが、異常プリオン蛋白(PrPSc)は消化されにくい。
 どちらもアミノ酸配列は同一であるが、立体構造が違っている。正常プリオン蛋白ではαヘリックス構造を成すが、異常プリオン蛋白は螺旋が解けてしまいβシート構造の高次構造を呈している。
 βシート構造のため、異常プリオン蛋白は不溶性となり凝集しやすいというアミロイドの性質を有するようになる。
 このαヘリックスが解けてランダムコイルになりβシートを構成するまでにかかる時間はほんの数ミリ秒とされており、異常プリオンの感染はまさに瞬間である。

病原性
 病気の原因が蛋白質であるという説は、1980年代に発表された。
 プリオンが核酸(DNA)を鋳型とせずに自己複製するというセントラルドグマに反した説は当然大反発が起こったが、やがてこの説が受け入れられた。
 現在では、プリオンは細胞の遺伝子によって作られる蛋白質であるとは既に分かっており、正常なプリオンが何らかのメカニズムで不溶性の異常プリオンになって、これが神経細胞に蓄積し、やがてスポンジ状の空胞変性を引き起こすものと考えられている。

強度
 この病原体は何しろ無生物ということもあり、冷凍しても加熱しても紫外線を照射しても、びくともしない。にわかには信じがたいが、1500℃で加熱しても壊れず、感染性を失わなかった、とするイギリスの論文が存在する。
 異常プリオンを不活性にするには、根拠の出所は不明ながら次を全て順番に実施する方法があるとされている。
  1. 焼却する
  2. 136℃以上30分間加熱
  3. 1〜2規定の苛性ソーダで1時間
  4. 0.5%の次亜塩素酸ナトリウムに2時間
  5. 3% SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)で100℃煮沸を10分間
 しかし、このような事をした肉が人間の食品になるとは思えず、つまるところ、
 くらいしか、打つ手はない。

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