ニッケル水素蓄電池
読み:ニッケル-すいそ-ちくでんち
外語:Ni-MH: Nickel-Metal Hydride Battery

 充電して使用する二次電池の一種。ニッケルカドミウム蓄電池(ニカド電池)の改良型として開発され、1990(平成2)年末から生産が開始された。
目次

概要

構造
 正極にオキシ水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金、電解液に水酸化カリウム水溶液を用いている。
 この電池は、ニッケルカドミウム蓄電池の負極に使われるカドミウムの代わりに、水素原子を大量に吸収できる性質を持つ「水素吸蔵合金」と呼ばれるものを使用したのが特徴。ここに吸蔵されている水素原子が、電子を失い水素イオンになって出ていったり、逆に電子を貰い水素原子になって入ってきたりして電池として動作する。

特性
 電気的特性などはニッケルカドミウム蓄電池と同じで、公称電圧も同じ1.2Vである。この1.2Vは、ニッケル(正極)と水素吸蔵合金(陰極)との電位差である。
 多少のメモリー効果はあるものの、同じ体積では容量が大きく(初期のもの(単3形で1300mAh前後)で約2倍、現在の高容量のもの(単3形で2500mAh前後)では約3倍)、有害物質のカドミウムを含まないという長所がある。
 高容量な点が買われてノートパソコンやビデオムービー用の電池として広く普及、蓄電池の主流となった。これに伴いニカド電池は衰退した。

特徴

長所と短所

長所

短所

普及状況
 デジタルカメラ携帯電話機ノートパソコンといった携帯電子機器で広く採用されている(対抗はリチウムイオン二次電池)。
 現在は、単1形から単4形のほか、角型(006P)やガム型その他、様々なものが市販されている。

製品

主な製品
 主要な製品の一覧(順不同)
 ニッケル水素蓄電池は海外メーカー製もあるが、そういった安さ以外に特徴のない輸入品は粗悪品が多い。

eneloop
 ニッケル水素蓄電池での世界トップシェアは三洋電機(製造は現在はFDKトワイセル)で、現在の主力はeneloopである。FDKは三洋以外にもOEM供給をしている。ただし分野によってシェアは大きく違い、ラジコンカーなどの模型用電池セルはゴールドピークやインテレクトバッテリーなど海外製の安物が普及している。
 ソニーの「サイクルエナジーブルー」はeneloop相当品のOEMである。

充電式EVOLTA
 パナソニックもジーエス・ユアサ コーポレーションと共同でeneloopと同様の電池を開発し、後に充電式EVOLTAのブランド名を冠して販売したが、性能は大幅に劣っている。
 パナソニックはeneloopの三洋電機を買収しているが、結果、電池事業のみをパナソニックに吸収、他の事業(既存のパナソニック事業と競合するもの、白物家電など)は支那企業などに売っぱらうという、分かりやすい三洋の処分方法を決定した。
 パナソニックグループの電池事業部であるエナジー社の社長には三洋の伊藤正人が就任した。

対抗電池
 ニッケル水素蓄電池を超えるものとして、対抗にリチウムイオン二次電池がある。
 こちらは、ニッケル水素蓄電池よりもエネルギー密度が高く、電圧も高く(3.6V)、メモリー効果もなく、充電も速いなど良いことずくめだが、安全性を欠くという致命的問題の解決が進んでいない。
 ニッケル水素蓄電池の方が優れている点としては、安全性や、大電流時の放電特性などが挙げられる。

内部の反応
 それぞれ+の左側が正極、右側が負極である。
 【充電】NiOOH + MH ⇔ Ni(OH)2 + M【放電】
 負極の水素吸蔵合金が水素を吸蔵している状態をMH、水素を放出した状態をMと表わしている。電解液は水酸化カリウム水溶液KOHであるが、見かけ上反応には関与しない。
 放電状態から充電すると、電解液のが電気分解して負極付近で水素が発生し、そのまま水素吸蔵合金に吸蔵される。余ったOHイオンは正極で反応してNiOOHと水が発生する。放電すると吸蔵されている水素がH+となって出ていき、充電とは逆の反応が起こる。反応式上、水素が充放電で正負極間を単に移動するような機構で、ロッキングチェア型と呼ばれる。

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