アセチルサリチル酸
読み:アセチルサリチルさん
外語:acetylsalicylic acid
アスピリン
の名で知られる非ステロイド系
解熱鎮痛消炎剤
、非ステロイド性抗炎症剤(
NSAIDs
)、抗血小板製剤。アセチル化された
サリチル酸
。アスピリンと呼ばれるが、
ピリン系
ではなく
非ピリン系
である。
風邪薬
の代表的成分で、ドイツのバイエル(Bayer)社のFelix Hoffmann(フェリックス・ホフマン)博士(当時29歳)により
リウマチ
の薬として1897(明治30)年8月10日に開発された。アスピリン(ASPIRIN)はバイエル社の
登録商標
である。
目次
物質の情報
薬効薬理
抗炎症作用
作用機序の解明
抗血小板凝固作用
副作用など
アナフィラキシーショック
解熱鎮痛消炎剤の製品例
物質の情報
分子式C
9
H
8
O
4
。
分子量
180.2。CAS番号50-78-2、ICSC番号0822。化学名2-Acetoxybenzoic Acid。
現在では
風邪薬
や頭痛薬などの大衆薬として頻用されているが、
副作用
が強い。
薬効薬理
抗炎症作用
アセチルサリチル酸をはじめ非ステロイド性抗炎症剤(
NSAIDs
)は、炎症を起こす酵素シクロオキシゲナーゼ2(通称COX-2)と、胃を保護する酵素シクロオキシゲナーゼ1(通称COX-1)の双方を阻害する。
このため炎症を抑える代わり、胃腸障害の副作用が起きる。空腹時の服用は避けるのが望ましい。なお、このCOX-1は他に血小板凝固にも関与している(後述)。
最近はacetaminophenなど、COX-2のみ阻害する薬が主流になってきているようである(日本でも売られている商品としてTylenolなどがある)。
作用機序の解明
ちなみにアセチルサリチル酸は発明後70年以上、作用機序が不明だった。理由は分からないが効くので使われ続けたわけである。
1971(昭和46)年になりイギリスのジョン・ヴェインにより、プロスタグランジン(PG)合成抑制作用が確認され、もって身体の痛みの伝達の阻害に作用することが判明した。ジョン・ヴェインは1982(昭和57)年にノーベル医学賞を受賞している。
抗血小板凝固作用
アセチルサリチル酸はCOX-1酵素を阻害するため、小用量では抗血小板凝固作用がある。これにより
心筋梗塞
や
脳梗塞
の予防効果が期待される。
日本でも2000(平成12)年9月になりようやく抗血小板作用が認められ、アセチルサリチル酸の抗血小板剤が薬価収載された。
副作用など
胃腸障害のほか、スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)や、ライエル症候群(中毒性表皮壊死症候群)などの原因となること判明している。
致死量
(
LD50
)は500mg/kg体重。
幼児
では死亡する例もあり、危険だということから、日本では「5歳以下の幼児に飲ませない」という注意書きが加わることになった。
その他、胃痛・下血・
吐血
など胃腸障害による症状、脳・肺・消化管・眼底などでの重い出血、
血尿
など抗血小板作用による悪影響などがありうる。
アナフィラキシーショック
アスピリン系薬剤を飲んだ後、手が赤くなったり、むくんできたりし、皮が剥けたり等の重い皮膚障害を起こすことがある。これは副作用(
アレルギー
)の症例の一つであり、中でも特に重い副作用である。
もし万一このような症状が出たら、もう二度とアスピリン系の薬剤を飲んではならない。二度目は免疫が早く反応するので症状が重くなり、死に致る危険性が極めて高い。
掛かりつけの医師にも相談が必要である。
解熱鎮痛消炎剤
は様々な種類があり選択の幅が広いので、アスピリンが使えなくても通常は困ることはない。
解熱鎮痛消炎剤の製品例
日本では
バファリン
(ライオン)などがある。
ちなみにアメリカでは食べるように飲まれており、価格も日本とは比較にならないほど安い。本家Bayer製でも100錠でUS$6.5程度($1=\110とすると715円)、無名メーカー製なら100錠でUS$3(330円)以下で購入できる。
COX-2のみ阻害するTylenolは高級で、24錠(1回2錠1日3回)で$4〜8程度(有効成分の含量などで価格は変わる)。
参考としてバファリンA 40錠は定価が1,160円(税別)である。半分が優しさだとしても、割高感は否めない。
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