Crusoe
読み:クルーソー
外語:Crusoe
かつて、Transmetaが開発したx86互換プロセッサー。
概要
低価格・小型・低消費電力(と低発熱)を特徴とする128ビット(最大4命令同時実行)VLIWアーキテクチャープロセッサーで、CMS(Code Morphing Software)と呼ばれるx86コードのエミュレーターを使用する事でx86互換プロセッサーとして機能する。
Crusoeの3つの有意な特徴のうち、最大の特徴は低消費電力と、それに伴う低発熱である。半導体の消費電力は静電容量×クロック×電圧の2乗に比例し、また静電容量はトランジスタ数に比例する。CrusoeはVLIW方式にしてトランジスタ数を減らしているため元々消費電力は有利だが、更にクロックと電圧を最適レベルに下げる仕組み「LongRun」を使用し、消費電力をより減らす努力をしていた。
Crusoeのターゲットはノートパソコンおよびハンドヘルド、パームトップサイズのデバイスで、Transmetaは安価・小型である上に低消費電力のおかげでx86系プロセッサーであるにも関わらず8時間以上のバッテリー駆動を容易に実現できた。
特徴
コンセプト
x86コードの実行は、前述のCMSによりソフトウェアによる動的なVLIW命令へのコード変換により実現されるため、Crusoeはソフトウェアベースのプロセッサーと呼ばれる。
Intel Pentium II以降とAMD K5以降も内部はx86とは非互換のRISCプロセッサーで、x86命令を変換しながら実行するが、これらのプロセッサーはコード変換をハードウェアで実現している点が大きく異なる。コード変換機構には多くのトランジスタが必要だが、Crusoeはこれをソフトウェアで実現することで必要トランジスタ数を大幅に減らし低消費電力を実現した。
CMS
CMSは、並列実行可能な命令のグループ化と一度変換した命令のバッファリングを行なうことで、実行速度の向上を図っている。
CMSはマイクロプロセッサーのブート時にマイクロプロセッサーの専用インターフェイスで接続された1Miバイトのフラッシュメモリーからロードされる。
CMSを入れ替えることで、MMXやストリーミングSIMD拡張命令(SSE)などの新命令や、x86以外のプロセッサーにも対応することが可能で、CMSに隠蔽させることでプロセッサーのハードウェアの差も吸収できる。実際、Transmetaは命令コードの違う複数のCrusoeをノートパソコン用とハンドヘルド用にそれぞれ用意している。
製造
ダイサイズはPentium IIIの106mm2に対し、256Kiバイト2次キャッシュとノースブリッジを統合しながら73mm2を実現、消費電力はDVD再生時でも1〜2W(Mobile Pentium IIIの数分の1)と非常に小さい。価格も下は65ドルからと非常に安い。
構造がシンプルなため、工場を持たない(ファブレス)メーカーであっても高い性能のプロセッサーを比較的短期間で開発できるという利点もある。実際には初期製品TM5400とTM5600ではIBMの銅配線0.18μmプロセス技術を利用し、IBMの工場で製造されていた。
製品
既知の製品ラインナップは次の通り。
製品名 | 発売年 | キャッシュ | ルール | 電圧 | クロック(MHz) |
L1 |
TM5400 | 2000 | 128 | 256 | 0.18μ | 1.1v | 500-700 |
TM5600 | 2000 | 128 | 512 | 0.18μ | | 600-800 |
TM5800 | 2000 | 128 | 512 | 0.13μ | | 600-1000 |
TM3120(TM3200) | | | | | | |
TM3200 | 2000 | 96 | 0 | 0.22μ | 1.5v | 400 |
TM3300 | 2000 | 128 | 0 | 0.18μ | | 400 |
TN3400 | 2000 | 128 | 256 | 0.18μ | | 400-500 |
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