塩酸
読み:えんさん
外語:hydrochloric acid

 強酸性を示す無機酸の一つ。塩化水素の水溶液胃液胃酸の主成分である。
目次

概要

基本情報
 

誘導体、関連物質の例

性質

溶解性
 塩酸は還元性なので、イオン化傾向でH(水素)よりイオン化しにくい物質を溶かせない。
 酸化性の強い濃硝酸と濃塩酸を1:3で混合した液体は王水と呼ばれ、イオン化傾向が低い金や白金も溶かす。

製法
 工業的には食塩水の電気分解で得られた水素と塩素を直接化合させて作られ(H2 + Cl2 → 2HCl↑)、得られた気体をに溶かす。
 実験室では食塩を希硫酸に溶かして加熱し、得られた気体を水に溶かす。NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl↑。

特徴

用途
 工業的には金属の精製から医薬品の製造まで、極めて多目的に利用される。
 また、実験器具の洗浄など、様々な目的で利用される。

危険物質
 に入ればめちゃくちゃ痛く、高濃度のものが目に入れば失明する可能性がある。
 万一目に入ったときはまず、多量の水で目を洗い、その後速やかに病院へ。これは殆どの化学薬品に共通の処理であり、化学実験をするときの心構えである。それでも濃硫酸や濃アルカリならまず確実に失明するので、それと比べれば幾らかマシではあるらしい。
 吸引すれば気道や肺を冒す。濃度の高い塩酸が皮膚につくと火傷の症状を呈する。

食品添加物
 食品添加物のうち加工助剤としても指定されている。
 加工助剤とは、食品の加工に使って良いが、最終食品には残留してはならない、というものである。その目的で使うなら、食品用のグレードのものを使わなければならない。

缶詰
 缶詰用の果物(蜜柑など)の皮むきも塩酸に浸して行なわれる。
 蜜柑は、外の皮を剥くと中に実があるが、この実にも皮が付いている。この実の皮を内果皮といい、これを塩酸で溶かしている。
 塩酸などの薬品で処理をしているというと多くの人が不快感を露わにするが、案ずることはない。塩酸は胃酸の成分であり、酔っぱらったときにいつも吐いている筈だからである。もっとも、塩酸はあくまで加工助剤なので、最終の食品には残留していない。
 具体的な手法としては、蜜柑の外皮は機械で剥き、水中で実を分割した後、0.5%の希塩酸溶液に20分〜40分程度浸けて内果皮を溶かした後、0.3%前後の希水酸化ナトリウム溶液に同じくらいの時間浸けて中和し、最後に水洗いして残留しないようにしている。
 この時、酸やアルカリは食品添加物にも使用できる高純度のものを使用し、水洗して残留しないことが食品衛生法において定められている。

実験室的な利用範囲
 石灰岩(石灰石)を入れたフラスコ希塩酸を注ぐと二酸化炭素が発生。
 亜鉛などの金属を入れたフラスコに希塩酸を注ぐと水素が発生。
 アルコールカルボン酸の混合液に希塩酸を入れると触媒として働き、エステル生成。
 微生物や細胞の培養で使う培地などのpHの調整にも良く使われる。

安全性

適用法令
 運送上の制限もある。

危険性

有害性

環境影響

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