銀河系
読み:ぎんがけい
外語:the Milky Way Galaxy

 我々の太陽系も属する、およそ2000億個の恒星が集った銀河。
目次

概要

基本情報

所在
 銀河系は周辺の銀河と共に局部銀河群と呼ばれる銀河のグループに属している。
 この銀河群は半径が約300万光年である。さらに他の幾つかの銀河群とともに局部超銀河団に属している。

構造・性質

銀河系の形状

形状概要
 形状を中から判断するのは困難であるため詳細はまだ不明だが、最近の研究結果によると渦巻銀河の一種、棒渦巻銀河であるとされ、直径は約10荳光年とするのが通説である。
 渦巻銀河は中心の膨らみ(銀河バルジ)とそこから伸びる腕のような構造(渦状腕)、それを取り巻く円盤(ディスク)が形状的な特徴である。地球から銀河面を見ると天の川として天球を取り巻くように見える。これは、ちょうどこの方向に、恒星や、ガスや塵などがあつまった星雲が多いためである。
 そして、その天の川の最も濃い(密な)部分が銀河系中心方向である。
 2002(平成14)年1月24日の国立天文台の発表によると、銀河系の質量は外側に広がる暗黒の銀河ハローを含め、太陽の約2兆倍になるとされた。

棒渦巻銀河構造
 アメリカ・ウィスコンシン大学による、NASAスピッツァー宇宙望遠鏡で観測した3000万星の結果の分析によると、銀河系の中心部には長さ2万7000光年の棒状構造があるとされた。
 この棒状構造は、太陽と銀河系中心を結ぶ方向から約45度先行しているらしい。

ガイア・エンケラドゥス
 銀河系も他の銀河と同様、太古の昔に小さな銀河が多数衝突合体して作られたと考えられている。そのうちの一つが「ガイア・エンケラドゥス」という矮小銀河である。
 ガイア宇宙望遠鏡のデータに基づいた研究で、115億年前から132億年前、初期の銀河系と矮小銀河ガイア・エンケラドゥス(Gaia-Enceladus)が合体したとし、銀河系の質量は約25%増加、星の形成が加速する期間(スターバースト)が約20億〜40億年続いたとしている。宇宙の誕生は約138億年前とされるため、ガイア・エンケラドゥスとの衝突は銀河系の歴史の中でもかなり初期の出来事であるといえる。

三つのリング
 カリフォルニア工科大学スピッツァーサイエンスセンターのCarl Grillmairがスローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)のデータを分析した結果、銀河系を取り巻く3本の巨大なリングが発見された、としている。
 最も近いもので地球から1万3千光年、最も遠いもので地球から13万光年の距離にあり、いずれも完全なリング構造をしていると考えられている。
 銀河系が周辺の矮小銀河を飲み込んで成長するさい、矮小銀河の残骸が拡散しリング状になったと考えられている。

自転と位置

銀河系の自転
 銀河系の自転は、天の北極方向から見て時計回りである。
 円盤部の大半では中心からの距離に関らず回転速度がほぼ一定(角速度は中心からの距離に反比例)である。つまり周縁部でも中心部と殆ど回転速度は変化せず、速度分布は平坦である。この性質は暗黒物質の存在の一つの根拠となっており、銀河の質量の大半は光を出さず観測できないが質量をもった暗黒物質が占めているとする仮説で説明されている。

銀河中心
 銀河の中心部には、3つの大渦をもち、太陽の400万倍の質量がある超大質量ブラックホールが発見されている。
 この銀河中心をいて座Aといい、中心にあるブラックホールをいて座A*(Sgr A*)という。

太陽系の位置
 太陽は銀河中心から約8kpc(約2万6千光年)の距離のディスク中、オリオン腕と呼ばれる渦巻の腕の中にある。
 銀河中心を中心に約220km/s(190.1km/cBeat)の速度で、約2.3億年で公転している。

特徴

系内の天体

天体数
 銀河系は、局部銀河群の中ではアンドロメダ銀河に次いで2番目に大きい銀河である。恒星だけでも2,000〜4,000億個あると見積もられているが、アンドロメダ銀河は1兆個の恒星があると見積もられている。
 概算で、銀河系は次のような天体を有するとされている。
 日本から見られる場所は皆無となったが、夜空に見られる天の川は、銀河系の星々を銀河系中から見たもの、といえる。
 星団は、散開星団が銀河面付近を中心に1000個程度、球状星団は約150個程度が発見されている。また星雲(散光星雲惑星状星雲超新星残骸)も多数発見されている。

中心領域の恒星の特徴
 銀河系中心部は、1立方光年(1光年×1光年×1光年の立方体)あたり1000〜10万程度の恒星が密集する。
 中心領域にある恒星の80%以上は、およそ135億年前から80億年前までに銀河系で起きたスターバーストで形成された非常に古い星である。この頃は、毎年合計して100太陽質量の恒星が誕生しており、その傍らで10万回以上もの超新星爆発があった、とする説もある。
 残る20%のうちの一部は、およそ10億年前から1億年前までにあった小規模なスターバーストで形成されたとみられており、結果、「80億歳以上の多数派」と「10億歳未満の少数派」に分かれている。
 二つのスターバーストの間に70億年程度のブランクが存在し、その間はあまり恒星が作られず比較的穏やかだったと考えられている。太陽が生まれたのは約46億年前だが、これはスターバースト間の穏やかな時期に誕生した、ということになる。
 これら状況証拠から、銀河中心のブラックホールいて座A*(Sgr A*)は、80億年前には既に現在と同程度の質量に成長を遂げていたことが示唆される。

代表的な天体
 銀河系内にある、代表的な天体

散開星団
名前位置 (J2000.0)銀河座標距離(ly)星数
NGC 赤経赤緯銀経°銀緯°
NGC 188 00h 44.5m+85°20′123+22505070
NGC 581M10301h 33.2m+60°42′128−02799030
NGC 752 01h 57.8m+37°41′137−23124060
NGC 869h Per02h 19.0m+57°09′135−047010300
NGC 884χ Per02h 22.5m+57°07′134−048080240
NGC 1039M3402h 42.0m+42°47′144−16139060
NGC 1245 03h 14.8m+47°14′147−09747040
 αPer03h 24m+49°147−0655480
 M4503h 47.1m+24°06′167−23408120
NGC 1528 04h 15.4m+51°14′1520280080
 ヒアデス04h 19.8m+15°37′179−24149100
NGC 1912M3805h 28.7m+35°50′172+014610100
NGC 1960M3605h 36.1m+34°08′174+01411050
NGC 2099M3705h 52.4m+32°33′178+034170200
NGC 2264S Mon06h 41.1m+09°53′203+02233060
NGC 2324 07h 04.2m+01°04′213+03740030
NGC 2362 07h 18.8m−24°57′238−06502030
NGC 2632M4408h 40.1m+19°59′206+32515100
IC 2391 08h 40.2m−53°04′270−0749915
NGC 2682M6708h 50.5m+11°49′216+32271080
IC 2602θCar10h 43.0m−64°24′290−0547325
NGC 3532 11h 06.4m−58°40′290+021350130
 かみのけ12h 25.0m+26°06′221+8426140
NGC 4755κCru12h 53.7m−60°20′303+02337030
NGC 6531M2118h 04.6m−22°30′80435040
NGC 6611M1618h 18.8m−13°47′17+01549040
NGC 6705M1118h 51.1m−06°16′27−03554080
NGC 6755 19h 07.8m+04°13′39−02505050
NGC 7092M3921h 32.2m+48°26′92−0286420
NGC 7142 21h 45.9m+65°48′105+10199035

球状星団
名前位置 (J2000.0)銀河座標距離(万ly)
NGC 赤経赤緯銀経°銀緯°
NGC 10447 Tuc00h 24.1m−72°04′306−451.52
NGC 2419 07h 38.2m+38°53′181+2630.4
 Pal 411h 29.2m+28°58′202+7230.4
NGC 4147 12h 10.1m+18°32′251+775.72
NGC 4590M6812h 39.5m−26°45′299+373.14
NGC 5024M5313h 12.9m+18°10′333+805.64
NGC 5053 13h 16.3m+17°41′335+794.96
NGC 5139ωCen13h 26.8m−47°29′309+151.70
NGC 5270M313h 42.2m+28°23′42+783.22
NGC 5466 14h 05.4m+28°32′42+734.73
 Pal 515h 16.1m−00°06′1+457.00
NGC 5904M515h 18.5m+02°05′4+472.50
NGC 6121M416h 23.7m−26°31′351+160.71
NGC 6171M10716h 32.5m−13°03′3+231.98
NGC 6205M1316h 41.7m+36°27′59+412.35
NGC 6218M1216h 47.2m−01°57′15+261.82
NGC 6254M1016h 57.1m−04°07′15+231.47
NGC 6266M6217h 01.3m−30°07′353+72.06
NGC 6341M9217h 17.1m+43°09′68+352.55
NGC 6356 17h 23.6m−17°49′7+105.74
NGC 6397 17h 40.9m−53°41′339−120.73
NGC 6402M1417h 37.6m−03°17′21+143.51
NGC 6522 18h 03.6m−30°02′1−42.19
NGC 6656M2218h 36.4m−23°55′9−81.03
NGC 6712 18h 53.0m−08°43′27−52.54
NGC 6779M5619h 16.5m−30°10′62+93.17
NGC 6838M7119h 53.7m+18°47′56−51.33
NGC 7078M1521h 30.0m+12°10′65−273.11
NGC 7089M221h 33.5m+00°50′54−363.69
NGC 7492 23h 08.3m−15°38′53−637.13

星雲
 銀河系内の星雲には、電離領域(C)、散光星雲(C)、惑星状星雲(PN)、超新星残骸(SNR)などがある。
名前分類位置 (J2000.0)銀河座標距離(ly)
NGC  赤経赤緯銀経°銀緯°
NGC 7822W1S171E00h 04m+68°37′119+65000
NGC 246  PN00h 47m−11°53′119−751300
NGC 281  E00h 52m+56°36′123−65500
IC 1795W3 E02h 26m+61°51′133+15900
IC 1805W4 E02h 33m+61°26′135+16200
IC 1848W5 E02h 51m+60°25′137+14900
NGC 1432 M45C03h 45m+24°22′167−24410
NGC 1499  E04h 00m+36°37′161−122300
NGC 1952 M1SNR05h 34m+22°01′185−67200
NGC 1976‐7W10M42E05h 35m−05°27′209−191500
IC 434W12 CE05h 41m−02°24′207−171100
NGC 2068 M78CE05h 46m+00°03′205−141600
NGC 2174‐5  E06h 09m+20°30′190+05200
NGC 2237‐38‐44‐46W16 E06h 32m+05°03′206−24600
NGC 2261  CE06h 39m+08°44′204+14900
NGC 2264  E06h 40m+09°54′203+22600
NGC 3132  PN10h 07m−40°26′272+123800
NGC 3587 M97PN11h 14m+55°01′148+571800
NGC 6514W28M20E18h 02m−23°02′7−05600
NGC 6523W29M8E18h 03m−24°23′6−13900
NGC 6611W37M16E18h 18m−13°47′17+15500
NGC 6618W87M17E18h 20m−16°11′16+24200
NGC 6720 M57PN18h 53m+33°02′63+142600
NGC 6853 M27PN19h 59m+22°43′61−4820
NGC 6690‐92‐95  SNR20h 45m+30°43′75−91600
IC 5067‐68‐70W80 CE20h 48m+44°22′85+02000
NGC 7000W80 CE20h 58m+44°20′86−12000
NGC 7009  PN21h 04m−11°22′37−344100
NGC 7027  PN21h 07m+42°14′84−34400
NGC 7293  PN22h 29m−20°48′36−57490

周辺の銀河
 銀河系の周辺には大マゼラン雲(約16万光年)や小マゼラン雲(約20万光年)などの伴銀河が存在する。
 
 最近の研究では、銀河系の周囲に、質量の小さな矮小銀河が多数確認されている。
 マゼラン雲より至近距離には「いて座矮小楕円銀河」(約7〜8万光年)の存在が知られ、球状星団M54はこの銀河にあることが分かっている。この伴銀河は、太陽系から見ると銀河中心の向こう側に位置しており、徐々に銀河系に飲み込まれつつある。
 更には、この半分以下の距離、約3万光年付近にも、星の集まりが発見されている。見かけの大きさは満月の5千倍程度とされる。
 このように、銀河系は周辺の矮小銀河を飲み込み、破壊しながらその星々を次々と吸収し、成長を続けていることが明らかとなった。

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