重力崩壊
読み:じゅうりょくほうかい
外語:gravitational collapse

 天体の中心核が潰れる現象。末期の恒星で起こると、超新星爆発の引き金になる。
目次

概要

核融合
 太陽の8倍以上の質量を持って生まれた恒星は、核融合反応を繰り返す事で重い元素からなる中心核を持つようになる。
 太陽の10倍以上の質量の星では、安定な元素であるの中心核ができる。しかし、鉄は核エネルギーが低く核融合の反応を示さないため、できてしまったが最後、消滅することはない。

収縮
 中心核に鉄が増えてくると恒星はエネルギーを生み出せなくなり、中心部の核エネルギー源が減り輻射圧も減る。こうなると中心核は重力収縮に抗しきれなくなり、星は中心に向かって収縮を始める。
 収縮すると温度が上がるが、もし中心核が鉄でなければ核融合反応が強まり収縮する力に対抗するエネルギーを発生できるものの、あいにく中心部は鉄。核融合が起こらない。

光分解
 こうして温度が6×109K程度になると、その中に存在する黒体放射の光子のエネルギーが数MeVに達するが、これは核子原子核に結合させているエネルギーの程度である。原子核に数MeVの光子が当たると、核子やα粒子が原子核からはじき出されてしまう。これを原子核の光分解という。
 鉄の光分解は56Fe→13 4He+4n-124MeVであり、124MeVのエネルギーを吸収する。これは恒星がヘリウム燃焼段階から鉄合成までに解放したエネルギーと同程度である。
 この吸熱反応によって中心核の温度は下がろうとするが、同時に圧力も下がるので中心核は自分自身の重力を支えきれなくなって収縮し、その圧力効果でかえって温度が上がることになる。温度が上がれば黒体放射エネルギーも光子数も増えるので、ますます光分解が促進される。こうなると、もう誰にも星の崩壊を止めることはできない。このような急激な収縮が重力崩壊である。

特徴

中性子星
 重力崩壊が進んで密度が高まると、電子の密度が上がって、波長が短くなる(ミクロの世界では、素粒子は粒子と波の両方の性質を持っている)。
 それに伴いエネルギーが増大、電子は原子核中の陽子に吸収され、ニュートリノを放出して中性子に変わる。
 こうして次第に星の中心は中性子化されてゆき、中性子星となる。
 しかし、この残される中心核の質量が3太陽質量を超える場合、中性子星で留まらずに更に重力崩壊を起こし、中心核はブラックホールにならざるを得なくなる。

超新星爆発
 重力崩壊中、外側の物質が中心部へ次々と落下してゆき、中性子の核に衝突する。
 この時衝撃波が発生し、この衝撃波によって星の外層が爆発的に吹き飛ぶ。これが超新星爆発である。
 爆発後、星の中心核は中性子星やブラックホールとして残ることになる。

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