弗化水素
読み:フッかすいそ
外語:hydrofluoric acid gas

 弗素水素からなる無機化合物。非常に危険な毒物として知られる。水溶液は弗化水素酸と呼ばれる。
 なお、「弗」の字が常用漢字から漏れたため、現在は「フッ化水素」と書くのが正しいとされている。
目次

情報

基本情報

誘導体、関連物質の例

製法
 工業的には、蛍石を硫酸で溶かして作る。蛍石は弗化カルシウム(CaF2)を主成分とする鉱物で、濃硫酸と混合して加熱して作られる。
 CaF2 + H2SO4 → 2HF + Ca4
 実験室レベルであれば、水と単体の弗素を反応させても生じる。
 2H2O + 2F2 → 4HF + O2
 なお、単体の弗素も反応性が高いため自然界には基本的には存在しないため、単体は弗化水素(HF)または弗化水素カリウム(KHF2)を電解して得る。

特徴

用途
 高純度のものは半導体製造で半導体物質のエッチングなどに使われるほか、ウラン濃縮にも使われる。このため、高純度弗化水素は輸出が制限されている。


 他のハロゲン化水素と異なり水溶液(HFaq)は弱酸性を示す一方、純粋な弗化水素の液体は超酸の一種であり、特殊な反応に利用できる。
 HFaqが弱酸性なのはHFが水素結合を持つからである。
 また、弗化水素が常温で液体なのも、水素結合を持つからである。
 ガラスを溶かしてヘキサフルオロ珪酸(H2SiF6)を作るため、ポリエチレンの容器に入れる。

純度
 半導体製造に使うためには純度が必要となる。不純物が半導体に付着すれば、その周辺部分は使えなくなるからである。
 各国で製造されている純度は次の通りであるらしい。
 つまり日本のものは、金属不純物の含有量が10のマイナス12乗レベルの高純度である。
 ウラン濃縮に使う程度なら2N程度の純度でも問題はないらしい。

補足

人体に付着
 水溶液が人体に付着すると、体内に浸透して骨組織を侵す。この時、のたうち回る程の激痛に見舞われる。
 カルシウム(Ca)と反応してCaF2(蛍石)になるまで皮膚を侵蝕し組織を破壊する。また血液中のカルシウムイオンも同様に螢石にし、これらが筋肉組織や臓器を破壊、やがて心筋が機能しなくなって心不全で死亡するか、さもなくば低カルシウム血症を起こして死亡する。
 治療は殆ど不可能なので、患部の切断によって対応することになろう。しかし体表には何の影響も与えないため付着に気づきにくく、取り扱いには細心の注意を要する。実際に、ゴム手袋にピンホールが開いているなどして弗酸が手に付いたのに気づかずに大変な事になる、という事故がたまに発生する。

戦略物資
 フッ化水素酸の侵食性は非常に高く、ウランやプルトニウムも腐食させる。
 核兵器開発のウラン濃縮(全ウランからウラン235の濃度を高める)において、イエローケーキから転換と呼ばれる行程で六弗化ウランが精製されるが、この時に弗化水素が使われる。
 ウラン単体では沸点が4172℃もあるが、六弗化ウランにすると沸点は僅か56℃となり簡単な加熱で気化するため遠心分離しやすく、核分裂を起こすウラン235をより分けるのに大変便利である。
 このような事情があるため、弗化水素は戦略物資となっており輸出の規制対象である。

処分方法など
 大学の研究室にあったりするが、恐いので誰にも使われず放置されている例が多いらしい。一般人には扱えず、知識がある人は使おうとしない物質である。
 処分方法は幾つか考えられるが、消石灰(水酸化カルシウム)で中和して蛍石にするのが一般的である。

安全性

適用法令

危険性

有害性
 低カルシウム血を引き起こす。
 許容濃度を超えると致死的である。

環境影響

再検索